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2024.02.28 11:34:36

花粉症治療の副作用を大幅に軽減…原因たんぱく質を「膜」で包み服用、治療短縮も期待

 花粉症などのアレルギーの治療に伴う副作用を大幅に軽減する方法を開発したと、九州大大学院などの研究チームが発表した。アレルギーの原因たんぱく質を特殊な膜で包んで服用することで、免疫細胞の“ディフェンス”を上手にかわして副作用を防ぐ。治療にかかる期間も短縮できると期待される。(大森祐輔)

九大などチーム 手法開発

 花粉症などの治療には長年、点鼻薬などで症状を抑える対症療法が採られてきた。2010年頃には、原因たんぱく質を少量ずつ服用し、体を慣れさせる免疫療法が実用化。体内に入った異物の情報を「学習」する樹状細胞が、原因たんぱく質を繰り返し取り込むうちにアレルギーを根治するもので、14年には花粉症の薬剤が保険適用された。

 だが、原因たんぱく質はわずかな量でも免疫細胞を刺激し、舌下から服用する場合なら、喉の腫れやかゆみなどの副作用を招くことがある。そのため、副作用のつらさから治療を途中で断念するケースも多い。

 九州大大学院と同大病院、慶応義塾大でつくる研究チームは、免疫細胞を刺激せずに原因たんぱく質を服用できる方法を模索。寒天やセルロースなどと同じ多糖類の「マンナン」で原因たんぱく質を包んだ直径約100ナノ・メートル(1ナノ・メートルは10億分の1メートル)の粒子をマウスに投与したところ、副作用を起こさずに体に慣れさせることができたという。

 マンナンは樹状細胞にとりつきやすい性質をもつ一方、免疫細胞は反応が鈍い。そのため、原因たんぱく質をマンナンで包んで服用すると、副作用をほとんど起こさず、治療の負担が大きく軽減されるという。

 原因たんぱく質を効率的に服用できることで、花粉症なら3年以上かかる治療期間を短縮できることも期待される。研究チームは昨年11月、国際電子版科学誌「Biomaterials」に論文を掲載。10年以内の実用化に向け、人での臨床研究を行う方針だ。

 卵や小麦などの食物アレルギーの治療にも応用できる可能性があり、チームの中心メンバーの森健・九州大大学院工学研究院准教授は「様々なアレルギーに悩む人々に良い知らせを届けられるよう、研究や治験を急ぎたい」としている。

  ◆アレルギー =体内に入った異物を排除する免疫の仕組みが過剰に働いて起こる。花粉症、食物アレルギー、気管支ぜんそくなどがあり、命に関わるショック症状を招くこともある。

2024.02.22 15:44:51

政府が長期保存できる止血製剤を開発へ、人工血小板を利用…28年度までの実用化目指す

 政府は年内にも、長期間の保存が可能な人工血小板を用いた止血製剤の開発に乗り出す。献血への依存度を減らして人口減少が進んでも供給量を確保できるようにし、多数の負傷者が発生する大規模災害などの有事に備える。2028年度までの実用化を目指しており、海外への輸出も視野に入れる。

 血小板は、止血をつかさどる血液成分。現在の止血製剤は、献血などで人から採取した血液の血小板から作るが、保存期間が4日程度と短い。政府が開発を目指す人工血小板は、分化していない細胞から生産することを念頭に置いている。この人工血小板を活用した止血製剤は、数か月間程度の長期備蓄が可能となる見通しだ。

 また、人工の止血製剤は、輸血の際、ほぼすべての患者に拒絶反応が起きないメリットがある。通常の輸血では、抗体による拒絶反応を避けるため、患者の型と一致した血液型の血小板を投与しなければならない。一方、人工血小板はこうした拒絶反応が起きないよう開発するため、血液型にかかわらず投与できる。そのため、緊急性の高い有事の際にも事前検査などを経ず利用できると見込まれている。

 政府は、公募を行って大学や医療研究機関などに事業を委託し、年内にも研究を始める方針だ。出血した部位に血小板が効率的に集まって固まる技術や、緊急時に被災地などで止血製剤を製造する技術の開発にも取り組む考えだ。

2024.02.21 17:11:51

中2の18人に1人「ヤングケアラー」、悩み打ち明けられず…こども家庭庁が支援強化へ

 こども家庭庁は2024年度から、家族の介護や世話を日常的に担うヤングケアラーの支援拡充に乗り出す。進路・就職相談や交流事業に取り組む自治体への補助を加算する。悩みを打ち明けるのをためらうヤングケアラーが多いとされる中、悩みや不安などに耳を傾け、見過ごされがちな孤立を防ぐ狙いがある。

 政府は22年度から、ヤングケアラー経験者や当事者が支え合える体制を作った自治体への補助を行っている。公的機関は相談先として心理的なハードルが高いとされているためだ。

 補助基準額は都道府県や政令市に約500万円、中核市と特別区に約340万円、市町村に約170万円となっている。経験者らによる支援全般を対象としていたが、加算分は相談や交流事業に使い道を限定することで、多くの自治体に取り組みを促したい考えだ。

 具体的には、進学・就職と介護の両立などに関し、経験者らによる相談体制を作る場合には都道府県や政令市に約390万円、中核市や特別区には約260万円、市町村に約130万円を上乗せする。また、当事者間の交流会を開催する場合の運営費として、それぞれ約210万円、約180万円、約150万円を加算する。ヤングケアラーが介護から離れて、子どもらしく過ごせるキャンプなどのイベントを想定している。

 支援拡充の背景には、ヤングケアラーの過剰な負担に伴う孤独、孤立が深刻化していることがある。厚生労働省の20年度の調査では、介護を担う中学2年は18人に1人(5・7%)、高校2年(全日制)は24人に1人(4・1%)いた一方、ケアに追われる状況を誰にも相談したことがないと答えた生徒が6割を超えた。

 各都道府県などが行った調査でも、困った時の相談先を求める声が上がっており、介護などを一手に担うヤングケアラーに寄り添い、適切な支援と心身の負担軽減につなげたい考えだ。

 ヤングケアラーを巡っては、自治体レベルで支援の取り組みが進むものの、法的な定義はなく、支援対象としての法的根拠もなかった。同庁はこのため、子ども・若者育成支援推進法にヤングケアラーを支援の対象として明記し、今国会に改正案を提出している。

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