医療機関が被害を受けた能登半島地震の被災地で、コンテナ型の医療救護所での診察が行われている。避難所では新型コロナウイルスなどの感染症患者を隔離するスペースが少なく、プライバシーに配慮した対応も難しかった。感染症拡大を防ぐためウイルスを室外に出さない機能を備えたコンテナもあり、活用が広がっている。(広瀬航太郎、小山内裕貴)
「喉に痛みがある」
石川県 珠洲 市の市立 宝立 小中学校に設置されたコンテナ型の医療救護所で、避難者の男性(61)がせきや鼻水などの症状を訴えた。高槻病院(大阪府)から支援に来た医師(49)は抗原検査をスタッフに指示し、新型コロナの陽性と診断した。
男性は受診する2日前に喉の違和感を覚えて避難所を離れ、倒壊を免れた自宅物置で寝泊まりしていた。解熱剤を処方された男性は、「かかりつけ医はどこも被災していて困っていた。近くで診てもらえてよかった」とほっとした表情を見せた。
厚生労働省と内閣府は被災地の医療態勢を補うため、コンテナを所有する病院などに派遣を要請。先月31日時点で珠洲市や輪島市、志賀町の3市町に計21基が設置された。さらに追加する予定もある。
宝立小中学校のコンテナは幅2・4メートル、奥行き6メートルほどで、医師2人を含む7人で運用している。長引く避難の影響で高血圧や歩行障害などの訴えが多く、片付け中のけがや、やけどの患者もいるという。
このコンテナは「発熱外来」としての使用を想定し、ウイルスや細菌を紫外線で不活性化する設備を備える。地震直後に駆けつけた医療チームは避難所を巡回し、避難者が行き来する廊下についたてを設置するなどして診察していた。
石川県医師会によると、能登半島北部の4市町にある診療所など約30か所のうち、通常診療を再開できたのは2日現在で輪島市と能登町、穴水町の計11か所で、珠洲市の6診療所は再開できていない。
NPO法人が運営する「空飛ぶ捜索医療団ARROWS」の一員として医療コンテナでの活動に参加した医師(救急医)は、「診療所が再開できるまで、医療コンテナが地域の医療を支えることになるだろう。在宅避難者もいるので、活動している場所を知ってもらうことが課題だ」と語った。