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2024.07.17 14:04:50

手足口病、過去最悪のペースで感染拡大…38都府県で警報基準超える

 乳幼児の夏風邪「手足口病」が過去最悪のペースで広がっている。国立感染症研究所が16日に公表した感染症発生動向調査によると、7日までの1週間に全国約3000の小児科定点医療機関から報告された患者数は1医療機関あたり11・46人(速報値)。現在の調査が始まった1999年以降、同時期で最多だった。

 流行のピークは例年、7月下旬に迎える。今年の感染状況は、これまでの調査で最多の患者数を記録した2019年7月22~28日の13・44人に迫る勢いだ。

 今回の調査結果を都道府県別にみると、三重(25・98人)、埼玉(18・80人)の順に多く、38都府県で厚生労働省研究班が示した警報基準の5人を上回った。厚労省は「感染者が急増している原因は不明」とする。

 手足口病は、ウイルスの感染症で、手足や口の粘膜に発疹ができる。 飛沫ひまつ や唾液、排せつ物の接触で感染し、流水とせっけんの手洗いでの予防が望ましい。

 例年、患者の9割が5歳以下だ。多くは軽症だが、まれに髄膜炎や脳炎など重い合併症に至る。のどの痛みで水分をとれない場合、脱水に注意が必要だ。感染症に詳しい水野泰孝・グローバルヘルスケアクリニック(東京)院長は「子どもの様子をよくみて、高熱や頭痛、吐き気など心配な症状がある時は、医療機関を受診してほしい」と話す。

2024.07.12 12:01:50

iPS細胞使いチップ内に小腸の壁再現…3層構造になった絨毛、病気の研究など視野に

 3種類の層でできた小腸の壁の組織を、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使ってチップの中で再現することに成功したと、京都大iPS細胞研究所などのチームが発表した。小腸の病気の研究などに役立つといい、論文が12日、国際科学誌に掲載される。

 小腸の内壁は粘液層、上皮層、間質層の3層構造になった 絨毛じゅうもう で覆われている。これまでも小腸の一部を模した「ミニ臓器」は作られていたが、上皮層の再現にとどまっていた。

 同研究所の高山和雄講師(幹細胞生物学)らは、血管から染み出た水分の緩やかな流れ(間質流)に注目した。幅1ミリ、高さ0・6ミリ、長さ10ミリの管の中を、微小な穴が多数あいた膜で上下2段に仕切ったシリコーン製のチップを作製。上段にiPS細胞などから作った小腸のもとになる細胞を置き、下段には培養液を流し、上段へ染み出すようにして約20日間、培養した。

 すると細胞は小腸の絨毛と似た複雑な形の組織を作り、3層構造ができている様子が観察された。培養液の流れを止めると、こうした構造はできなかった。

 高山講師は「小腸の粘膜を障害して下痢を引き起こすノロウイルスやクローン病などの研究に活用できるのではないか」と話す。

  酒井康行・東京大教授(生物工学)の話 「間質流を使って細胞が三次元的に組織化する能力を引き出しており、面白い成果だ。小腸粘膜に炎症を起こす病気の研究に使うには、免疫細胞を組み入れるなどの工夫が必要だろう」

2024.07.10 12:37:26

男性から女性への戸籍上の性別変更、手術なしでも認める高裁決定…申立人「願いがやっとかなった」

 性器の外観を変える手術をせず、戸籍の変更に必要な性同一性障害特例法の要件のうち「変更後の性別と近い性器の外観を持つ」(外観要件)とする規定を満たさないとされた当事者が、戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう求めた家事審判で、広島高裁は10日、性別の変更を認める決定をした。

 最高裁大法廷は昨年10月、性同一性障害特例法で生殖能力をなくす手術を事実上の要件とする規定について、「手術を受けるか性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫るもので、制約の程度は重大だ」とし、違憲とする決定を出した。その上で、外観要件については「2審で判断されていない」とし、審理を高裁に差し戻していた。

 代理人弁護士によると、申立人は西日本在住で50歳未満の社会人。2009年に性同一性障害の診断を受け、戸籍上は男性で、女性として社会生活を送っている。性別適合手術は受けていない。

 高裁は決定で、外観要件について「手術が必要ならば体を傷つけられない自由を放棄して手術を受けるか、性自認に従った法令上の扱いを受けることを放棄するかの二者択一を迫るような制約を課し、憲法違反の疑いがあると言わざるを得ない」と言及。「手術が行われた場合に限らず、他者の目に触れた時に特段の疑問を感じないような状態で足りると解釈するのが相当」として、手術なしでも外観要件は満たされるという考えを示した。

 その上で、ホルモン療法を継続的に受けることによって生物学的な性別がいずれであっても、外性器の形状に変化が生じることは医学的に確認されていると指摘。申立人は継続的に医師の診断に基づくホルモン療法を受けており、別の医師による診断でも、身体の各部の女性化が認められているとし、性別変更を認めた。

 申立人は決定後、代理人弁護士を通じ「物心ついた時からの願いがやっとかなった。ギャップによる生きにくさから解放されることを大変うれしく思う」とコメントを発表した。

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