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2025.04.10 15:58:52

1型糖尿病患者の皮下脂肪から作ったインスリン産生細胞、自身に移植…徳島大病院で夏にも治験

  膵臓(すいぞう) の細胞が正常に働かない「1型糖尿病」の治療について、徳島大病院(徳島市)は、患者自身の脂肪からインスリンを出す細胞を作り、再生医療技術で患者に移植して根本的治療を目指す治験を今夏にも始めると発表した。安全な世界初の治療方法を目指す。(吉田誠一)

 糖尿病のうち1型の割合は約5%で、膵臓内の細胞の塊「 膵島すいとう 」が壊れ、血糖値を制御できなくなる病気。若い頃から発症し、毎日何度もインスリン注射が必要となる。病院によると、根本的な治療方法では、脳死ドナーから膵島を取り出し、患者に移植する方法があるが、日本では患者10万人あたりのドナーは0・6人しかおらず、移植は困難となっている。

 そこで消化器・移植外科の池本哲也医師(53)らは、患者からの採取や臨床への応用が安全で容易な脂肪由来の幹細胞に着目した。再生医療技術で、“膵島”(インスリン産生細胞・IPC)にして移植することにし、2018年度から研究を開始した。

 1型患者の皮下脂肪から作った膵島をマウスに移植したところ、2週間後から血糖が正常化し、1年以上持続。豚でも腸間膜内に移植すると、同様の効果を確認できた。

 池本医師らは、この「IPC自家移植」を臨床応用。局所麻酔した患者から皮下脂肪組織を1グラム採取し、分離・精製して脂肪由来幹細胞とし、4週間かけて培養しながら分化・成熟させ、IPCを作製する。体への負担が少ない 腹腔鏡ふくくうきょう 手術で患者の腸間膜内に注入して移植する方法を確立した。このうち培養技術については特許も取得した。

 徳島大で3月24日にあった記者会見で、池本医師らは「この治療方法は血糖の制御に優れるうえ、患者の自家細胞を使うため拒絶反応がなく、毒性や移植で腫瘍を作ることもない」と利点を強調。「人への初めての投与で効果と安全性を示し、治療法を世界に発信したい」と話した。

 1型の治療では、京都大病院がiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った細胞シートを移植する治験を実施する計画がある。池本医師は「患者自身の細胞を使うこちらの治療法は(遺伝子導入などがないため)DNAダメージの危険性が少なく、安全面でアドバンテージがある」と強調した。

2025.04.09 18:18:58

未来のバイオコンピューターに可能性、iPSから「脳オルガノイド」作製…万博で東大チーム展示へ

 東京大の研究チームは、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った神経細胞の塊「脳オルガノイド」を、大阪・関西万博で6月から展示する。小さな電極の上で18個の脳オルガノイドを連結させたもので、細胞に計算や情報処理をさせる未来のバイオコンピューターの先端研究を見せるのが狙いだ。

 準備を進めているのは、池内 与志穂よしほ ・東大教授(分子細胞工学)の研究室に所属するドゥンキー智也特任研究員(31)。ドゥンキーさんはスイス生まれで、脳オルガノイドは万博のスイスパビリオンで6月11日~8月12日に展示される。

 展示するのは、縦2ミリ・メートル、横4ミリ・メートルの電極チップ上に並べた脳オルガノイドだ。一つは0・3~0・4ミリ・メートルの塊で、数万個の神経細胞が含まれている。並べて培養すると自然に神経の突起を伸ばし、塊が互いに連結するという。チップには2万6400個の電極があり、細胞の活動を記録できる。

 会場では脳オルガノイドを顕微鏡で観察できるほか、互いに電気信号をやり取りした様子などを見ることができる。チップはスイスの新興企業が開発した。

 人の脳も多数の領域間で信号のやり取りをして高度な機能を実現しており、研究成果は脳の仕組みに似たバイオコンピューターの実現につながる可能性があるという。ドゥンキーさんは、「特に子どもたちに見てもらい、科学に関心を持ってほしい」と話している。

2025.04.09 08:20:00

百日せき流行が急拡大、すでに昨年1年間上回る4771人…薬効きにくい耐性菌が広がっている恐れ

 激しいせきが続く百日せきの流行が拡大している。感染症を監視する国立健康危機管理研究機構によると、今年の累計患者数は3月30日時点で4771人(速報値)に達し、2024年1年間の4054人をすでに上回った。専門家は「重症化を予防するため、子どものワクチン接種を検討してほしい」と呼びかけている。

 百日せきは、細菌によって引き起こされ、主にせきやくしゃみなどの 飛沫ひまつ でうつる。せきで呼吸困難になることがあり、生後6か月未満の乳児が重症になりやすく、肺炎や脳症などを引き起こすと命にかかわる。感染症法で、18年から全ての患者を把握することになった。

 今年の患者数は1月6~12日に135人が確認されて、その後も増加傾向が続く。直近1週間の3月24~30日には578人と、18年以降で最多となり、都道府県別では新潟が73人、兵庫が36人、沖縄が35人となっている。治療には抗菌薬が使われるが、薬が効きにくい耐性菌が大阪や沖縄などで見つかり、国内で広がっている恐れがある。

 百日せきを含む5種混合ワクチンは、公費による定期接種の対象で、生後2か月から2歳半頃までに4回の接種が標準的となっている。日本小児科学会は、乳児の早期接種と、小学校入学前と高学年での任意接種を促している。

 浜松医科大の宮入 いさお 教授(小児科学)は「コロナ禍では流行が抑えられ、免疫を持つ人が少なくなっている。ワクチンの効果が薄れる時期の追加接種も検討してほしい」と話している。

2025.04.08 01:54:33

iPS細胞から「心筋細胞」のシート、医療用製品の承認申請は世界初か…大阪大発の企業

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から心臓の筋肉(心筋)の細胞シートを作って心臓病の患者に移植する治療法について、大阪大発の新興企業「クオリプス」(東京)は8日、細胞シートの製造販売承認を厚生労働省に申請した。iPS細胞を使った医療用製品の承認申請は世界初とみられる。

 対象となるのは、心筋 梗塞こうそく などで心臓の動きが悪くなる「虚血性心筋症」の患者の治療。悪化すると心臓移植などが必要になるが、国内では臓器提供者が少ない現状がある。

 同社の最高技術責任者を務める阪大の澤芳樹・特任教授らは、人のiPS細胞から心筋細胞を作り、直径3・5~4センチ、厚さ0・1ミリのシートを作製。2020年1月~23年3月、阪大病院など4施設で患者計8人に対し、1人あたりシート3枚(細胞数は計約1億個)を心臓に貼り付ける治験を行った。

 澤特任教授や同社によると、移植を受けた8人全員で安全性を確認。移植後26週よりも52週の方が症状の改善がみられ、社会復帰も果たしているという。

 同社の草薙尊之社長は「ようやく第一歩を踏み出すことができた。一日も早く承認をいただき、患者さんに治療を届けたい」と話している。同社が作製したiPS細胞由来の心筋細胞のシートは、13日開幕の大阪・関西万博で展示される。

 iPS細胞を活用した医療用製品の開発は国内外で進み、製薬大手の住友ファーマなどが今年中にも、パーキンソン病の患者に移植するiPS細胞由来の神経細胞について承認申請を目指している。

 八代 嘉美よしみ ・藤田医科大教授(幹細胞生物学)の話「既存の治療では改善が見込めない患者に対し、治療の選択肢が増えれば大きな意義がある。iPS細胞の技術を新たな医療として申請できる段階に来たのは画期的なことだ」

2025.04.07 01:25:03

患者搬送ヘリ事故、機長らの回復待ち事情聞く方針…運航会社「不時着水したとみている」

 長崎県・壱岐島沖で6日、医師や患者ら6人が乗ったヘリコプターが転覆しているのが見つかった事故で、唐津海上保安部(佐賀県)は7日、心肺停止状態で救助された男性医師(34)と、女性患者(86)の家族の男性(68)の死亡が確認されたと発表した。患者はすでに亡くなっており、事故による死者は計3人となった。

 国の運輸安全委員会の航空事故調査官2人は7日午後に福岡市に入り、聞き取り調査などを始める。唐津海保も業務上過失致死の疑いなどを視野に入れ、救出された男性機長(66)らの回復を待って事情を聞く方針だ。

 患者を乗せて長崎県の対馬を離陸したヘリは6日午後に対馬沖で消息を絶ち、同日午後5時過ぎ、壱岐島の北東約30キロの沖合に浮かんでいるのが見つかった。ヘリがフロート(浮き)を展開していたことから、運航会社の「エス・ジー・シー佐賀航空」(佐賀市)は同日夜の記者会見で、「(墜落ではなく)不時着水したとみている」と説明した。

 6人のうち、男性機長と男性整備士(67)、女性看護師(28)は意識があり、医師が勤務する福岡和白病院(福岡市東区)に搬送されて治療を受けているという。

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