NEWS

2025.04.02 12:37:40

妊婦の交通費・宿泊費の補助新設…町内の県立病院で「お産対応」困難になる見通しで

 妊婦の経済的負担の軽減を図ろうと、長野県木曽町は、妊婦健診や出産にかかる交通費などを助成する制度を新設し、運用を始める。木曽郡内で唯一、お産に対応している県立木曽病院(木曽町)で2026年4月以降、お産の受け入れが困難になる見通しであることも踏まえた制度で、今月1日分から適用する。

 対象は、自宅や里帰り先から最寄りの 分娩ぶんべん 取り扱い施設までの移動におおむね30分以上かかる妊婦と、30分以内に妊婦健診ができる施設があるが、その施設が分娩を取り扱わなくなるなどして、切り替えた別の施設まで30分以上かかる妊娠後期の妊婦など。

 交通費は妊婦健診や出産の際に自家用車を使った場合、1キロあたり30円で計算した往復分を受診日数に応じて支援する。出産時はタクシー使用も認め実費分を補助する。宿泊費も出産時に限り1万1000円を上限に最大14泊分支援する。

 出産時の妊婦に対する交通費や宿泊費については、自宅や里帰り先から最寄りの分娩取り扱い施設までの所要時間がおおむね60分以上だったり、ハイリスクと判断され、そうした妊婦を受け入れる「周産期母子医療センター」まで60分以上かかったりする妊婦に対し、国が24年度から、交通費の8割と、宿泊に要した実費額から1泊あたり2000円を控除する額を補助する制度(補助率は国2分の1、県4分の1、市町村4分の1)を創設。その後、妊婦健診時にも交通費を8割補助する制度を新設した。

 一方、町では26年4月から木曽病院で出産ができなくなる見通しであることも考慮し、適用範囲を広げて幅広く支援することを決めた。

2025.04.01 02:34:48

「将来の妊娠」に備え、若い男女へのアドバイザーを国が養成へ…背景に高齢出産や過度なダイエット

 こども家庭庁は、将来の妊娠に備えた「プレコンセプションケア(プレコン)」を若い男女に普及させるため、学校や企業などで助言するアドバイザーを養成する方針を固めた。若い世代に将来の妊娠に向けて必要な知識を身につけてもらい、健康管理を促す狙いがある。近く示す今後5年間のプレコン推進計画案に盛り込む。

 政府は2021年2月に成育医療等基本方針を閣議決定し、プレコンの推進を掲げた。22年度から自治体に「性と健康の相談センター」の設置を促し、保健師らが妊娠や性感染症などの相談に乗る取り組みを支援している。

 背景には、流産の可能性が高まる高齢出産の増加や、不妊の原因になる過度なダイエットの広がりがある。厚生労働省によると、晩婚化が進み、23年に35歳以上で第1子を出産した割合は21・6%と1970年の10倍に増加。BMI(体格指数)が低い痩せ形の20~30歳代女性も5人に1人(20・2%)に上った。

 一方、同庁が昨年、高校生から30歳代の男女2万人に行った意識調査では、「妊娠や出産に関わる身体的な情報」を学んだ経験を持つのは6%にとどまった。そのため同庁は、特に若年層を対象に、プレコンに関する普及・啓発を強化する必要があると判断した。

 アドバイザーは、一定の研修を修了した教諭や保健師らを想定している。性行為や避妊といった未成年に多い疑問から、不妊症など妊娠を現実的に考える世代特有の悩みまで幅広い知識を研修で身につけさせ、学校での出前講座や企業での研修などでアドバイスしてもらう。

 同庁は現在、今年度から5年間で取り組むプレコンの推進計画をまとめており、アドバイザーの養成を盛り込む方向だ。今後、アドバイザー向けのマニュアルも整備する。

 プレコンに詳しい国立成育医療研究センターの荒田尚子医師は、「若い世代が自分の体について知ることは、人生の選択肢を増やし、将来のリスクを減らすために重要だ。次の世代の健康にもつながる」と話している。

 ◆ プレコンセプションケア =妊娠(コンセプション)の前(プレ)のケアの意味。将来の妊娠を考えて女性やカップルが自身の健康や生活に向き合うことで、世界保健機関(WHO)が2013年に重要性などを文書でまとめた。政府は成育医療等基本方針で、「男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うよう促す」と定めている。

2025.03.31 12:00:07

コロナ検査キット卸販売の医療関連会社が3・5億円所得隠し…国税指摘、架空の運送費を計上

 自治体による新型コロナウイルスの無料検査事業で検査キットの卸販売をするなどしていた東京都内の医療関連会社が、東京国税局から2022年11月期までの2年間に計約3億5000万円の所得隠しを指摘されていたことがわかった。検査キットに関して架空の経費を計上していたとして、重加算税を含めて法人税など計約1億9000万円を追徴課税されたという。

 追徴課税されたのは、中央区の医療関連会社「アイチェック」(現・日本IC)。日本でコロナ禍が本格化した後の20年12月に設立され、PCR検査や抗原検査キットを販売していたほか、東京都などの自治体が行う無料検査事業で、検体採取業者に対する検査キットの卸販売などを手がけていた。民間の信用調査会社によると、22年11月期の売上高は約56億9900万円だった。

 関係者によると、アイチェックは一連の取引の中で、検査キットの運送代金を支払ったとして経費を計上していた。しかし、同国税局が調べたところ、この代金に見合うような運送が行われた形跡がなく、同社が取引先に実態のない運送費用の請求書を作成させていたことが判明。架空の経費計上で計約3億5000万円の所得を圧縮していたと認定した。

 同国税局は仮装・ 隠蔽いんぺい を伴う悪質な所得隠しに当たると判断。架空の経費計上に伴い、本来納めるべき消費税も減らしていたとして、重加算税を含めて法人税と消費税あわせて計約1億9000万円を追徴課税したとみられる。

 読売新聞の取材に対し、同社は「監査法人による監査を実施しており、適法な会計・税務処理が行われていると認識していたが、国税当局との間で解釈の違いが生じた。指摘に従い、修正申告と分割納税を実施している」と回答した。

 同社を巡っては、都の新型コロナ無料検査事業を巡り、元営業推進課長が今年1月、警視庁に詐欺容疑で逮捕された。逮捕容疑では、元課長は共犯者と共謀し、22年10月~23年1月、都内約20か所の検査所で行ったPCR検査と抗原検査の実施件数を約11万9000件水増しして都に報告し、補助金約7億9500万円をだまし取ったとされる。同社は別の検体検査会社と共同で検査所を運営していたという。

 元課長は3月に詐欺罪で東京地裁に起訴された。事件について、アイチェックは「捜査に協力している」とコメントしている。

4

投稿はありません