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2025.03.10 17:54:26

万博で119番、AEDを現場に運搬・発生場所をスタッフに通知…スマホアプリを導入へ

 来月13日に開幕する大阪・関西万博の安全対策を強化するため、日本国際博覧会協会(万博協会)は、情報通信技術(ICT)を活用し、AED(自動体外式除細動器)を素早く現場に届けるシステムを導入する。人が倒れた場所などをスマートフォンのアプリでスタッフに知らせ、AEDを運んでもらう仕組み。国内の大型イベントでは初の導入事例になるといい、救命処置の効率化や迅速化に役立てたい考えだ。(中村直人)

 アプリは「AED GO」で、京都大とソフトウェア開発会社「ドーン」(神戸市)が2017年に共同で開発した。119番などを受けると、発生場所や近くのAED設置場所を周辺の地図とともに専用のアプリで通知。事前に登録したボランティアらに駆け付けるように求める。愛知県尾張旭、千葉県柏、奈良の3市で運用されている。

 今回はイベント向けに仕様を変更。昨年夏頃に着手し、パビリオンの位置などが分かる万博の会場マップを取り込んだり、スタッフらが相互で情報をやり取りできるチャット機能を追加したりした。

 心停止となると、救命率は1分ごとに約10%ずつ低下するとされる。一方、総務省消防庁によると、救急車が現場に到着するまでには平均10分かかる。23年に人前で心停止状態となり、搬送された2万8354人のうち、市民がAEDで電気ショックを行ったのは5%にとどまり、使用率の向上が課題となっている。

 万博の会期は10月13日までの184日間で、来場者数は約2820万人と想定される。大阪市の人工島・ 夢洲ゆめしま に設けられる会場(約155ヘクタール)では屋内外に150台以上のAEDが設置される予定だ。05年の愛・地球博(愛知万博)では約100台が設置され、4人の救命に役立てられた。

 京都大研究員として開発チームに参加している大阪急性期・総合医療センター救急診療科の木口雄之副部長は「世界中から来場者を迎える万博は、国内だけでなく世界的な関心も高くなる。ICTを使うことで救命率の向上を図り、安心・安全な万博運営につなげたい」と話している。

 ◆ AED(自動体外式除細動器) =血液を全身に送り出す心室がけいれんする不整脈の一つ「心室細動」を起こして心停止になった場合に、心臓に電気ショックを与え、正常なリズムで収縮できるようにする医療機器。体外(裸の胸の上)に貼った電極の付いたパッドから自動的に心臓の状態を判断する。

2025.03.07 19:53:11

高額療養費制度の自己負担上限引き上げ、方針見直し異例の3回目…見送り含め政府・与党内で協議

 政府・与党は7日、医療費が高額になった場合に患者の負担を抑える「高額療養費制度」について、今年8月からの自己負担の上限額引き上げを巡り、再検討する方向で調整に入った。引き上げの見送りを含め、具体的な負担軽減策については引き続き政府・与党内で協議している。

 石破首相が近く患者団体と面会し、見直し策を伝えたい考えだ。ただ、上限引き上げを見送った場合、2025年度予算案の再修正が必要となる可能性があるため、政府・与党内で慎重論もあり、見直しに向けて最終調整している。

複数の政府・与党関係者が明らかにした。高額療養費制度を巡る政府方針の見直しは3回目で、極めて異例だ。

 首相は7日午前の参院予算委員会で、今年8月の上限額引き上げを見送るかどうかを問われ、「きちんと患者団体の話も聞いた上で、政府として判断をする」と述べた。

 政府は、3段階の引き上げのうち、今年8月は予定通りに負担額の上限を引き上げ、26年度以降の対応を今秋までに検討する方針を示していた。

 しかし、全面凍結を求める患者団体などの反発がやまず、野党に加え、夏に参院選を控える参院自民党や公明党からも方針撤回を求める声が上がっていた。5日の参院予算委員会では、自民の佐藤正久幹事長代理が「国民の理解が得られていない」と引き上げの停止を要求。公明の谷合正明参院会長も6日の同委で「国民の声を聞いて判断してもらいたい」と政府方針の再考を求めた。

2025.03.06 19:09:12

女性パラ選手特有の悩みも共有…月経痛をパラの男性強化担当者がセミナーで「体験」

 障害がある女性アスリート特有の課題への理解を深めようと、日本パラリンピック委員会(JPC)が、各競技団体で強化を担当するハイパフォーマンスディレクター(HPD)らを対象にしたセミナーを開いた。

 月経痛は女性アスリートのパフォーマンスに大きく影響するが、パラ競技の選手の場合、基礎疾患のために使える薬が限られるなど特有の問題がある。1月に行われたJPC女性スポーツ委員会のセミナーでは、産科医でもある能瀬さやか委員長が、月経の基礎知識について講義し、月経対策として5~6割がホルモン製剤を用いている海外のトップアスリートの事例などが紹介された。

 数人ずつの班に分かれたグループワークも行われ、それぞれの競技のHPD同士が、選手の月経への対処の仕方について、悩みや解決策などを共有。「生理痛VR(仮想現実)デバイス」と呼ばれる特殊な機器を使って、男性のHPDらが生理痛を疑似体験した。

 パラのHPDが一堂に会して学ぶ機会は初めて。日本パラ陸上競技連盟で知的障害クラスを担当する奥松美恵子HPDは、「生理は突然やってくるので、自閉的傾向がある選手だとスケジュールの変化には適応が難しい。グループワークで、あらゆるパターンを想定して、パニックへの対処法を作っておくといいとアドバイスをもらえたのも良かった」と話した。JPCでは今後もセミナーを開催する予定だ。(編集委員 川島健司)

2025.03.05 19:51:59

「結晶スポンジ法」改良、大きな分子の構造解析に成功…東大の研究チーム「創薬につなげたい」

 微小な穴が規則正しく並んだ「結晶スポンジ」と呼ばれる物質を使い、従来は難しかった大きな分子の構造解析に成功したと、東京大の藤田誠・卓越教授らのチームが発表した。次世代薬の材料を探す研究に応用が期待されるという。論文が5日、科学誌ネイチャーケミストリーに掲載された。

 医薬品の材料になる物質の分子構造は、効果などに影響するため、X線を使った正確な解析が求められている。解析には分子が規則正しく並んだ「結晶」を作る必要があるが、難易度は高く、時間もかかっていた。

 チームはこれまで、結晶化したスポンジ状の物質に、解析する試料を染みこませる「結晶スポンジ法」と呼ばれる手法を開発。一つ一つの穴に試料の分子を整然と並べることで、結晶化した時と同様の解析ができる。

 チームは今回、この手法を改良した。従来の手法は、サイズの小さい「低分子」しか解析できなかったが、分子をとらえる穴をかご状にすることで、より大きい「中分子」の解析も可能になった。

 さらに従来は難しかった水に溶けやすい試料の解析も可能になり、活用の幅が拡大。1試料あたりの解析時間も1か月から1日に短縮し、100種類超の構造を数か月で解析できたという。

中分子の化合物を使った「中分子薬」は、既存薬で治療が難しい病気にも効果のある次世代薬として研究が進む。藤田氏は「(自然界には)薬の元になる無数の宝がある。通常は検知さえ難しい物質を解析し、創薬につなげたい」と話す。

 藤田氏は、分子がひとりで組み上がる「自己組織化」という現象を利用し、様々な形状の物質を作り出す研究を進めてきた。結晶スポンジ法も、この研究の応用で開発され、藤田氏は一連の成果でノーベル化学賞の有力候補にも名が挙がる。

 河野正規・東京科学大教授(結晶化学)の話「解析例はまだ少ないが、今後様々な中分子に適用できれば、創薬の効率化などに貢献すると期待できる」

2025.03.05 14:59:00

石破首相、大船渡の山林火災「激甚災害」指定を検討…「自治体の金銭負担も少なくて済むよう対応」

高額療養費巡っては、がん患者との面会に前向き

 参院予算委員会は5日午前、石破首相(自民党総裁)と全閣僚が出席する基本的質疑を行い、2025年度予算案の修正案が実質審議入りした。首相は岩手県大船渡市の山林火災について、激甚災害の指定を検討していると明らかにした。

 首相は、同市で続く山林火災を巡り、「激甚災害(の指定)ということも視野に入っている。自治体の金銭負担も少なくて済むような迅速かつ適切な対応を政府として心がけていく」と答弁した。激甚災害に指定されると、自治体による復旧事業に対する国の補助率が引き上げられる。

 医療費が高額になった場合に患者の負担を抑える「高額療養費制度」の見直しに関しては、「この制度を持続可能なものとし、『もう受けるのやめようか』という受診抑制が起こらないこととの両立を図りたい」と理解を求めた。

 政府は8月からの負担上限額引き上げは予定通りに実施する一方、来年8月以降の対応は今年秋までに再検討する方針だ。がん患者との面会を促されると、「日程は調整したい」と前向きな姿勢を見せた。

 いずれも立憲民主党の田名部匡代・参院幹事長の質問に答えた。

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