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2025.04.16 21:31:53

音に反応し遺伝子の働きが変化、人やマウスの細胞で確認…京大チーム「肥満予防や治療の可能性」

 外部からの音にマウスや人の細胞が反応し、遺伝子の働きが変化することを確認したと、京都大などのチームが発表した。音で細胞の働きを変え、治療などに生かせる可能性があるという。論文が16日、国際専門誌に掲載された。

 音は振動として空中や水中を伝わる。耳で聴覚として認識される以外にも、音楽を聞かせると野菜がよく育つなどの報告が知られているが、詳しい仕組みはわかっていなかった。

 京大の 粂田くめた 昌宏助教(細胞生物学)らは、培養液の中のマウスや人の細胞に対し、低い音や高い音、ノイズ音などの5タイプの音波をそれぞれ2時間以上あてた。その後の遺伝子の働きについて解析した。

 結果、細胞の成長などに関わる延べ約190種類の遺伝子の働きが変化し、音のタイプに合わせて反応する遺伝子も異なることがわかった。細胞の形が変わったり、脂肪をたくわえる細胞の増殖が20~30%抑えられたりする効果もみられた。

 人の耳には聞こえない超音波を使って、骨の再生を促す医療機器はすでに実用化されている。粂田助教は「特定の音で肥満などの予防や治療ができる可能性がある。私たちは聴覚をコミュニケーションに使っているが、音にはさらに根源的な役割があるのかもしれない」と話す。

 同志社大の小山大介教授(超音波工学)の話「可聴域の音は超音波と比べて遠く広範囲に届きやすいが、音によっては負担になる可能性もある。利点や欠点を踏まえて活用できるか検討する必要がある」

2025.04.14 18:06:42

AIで食肉の安全検査、画像分析で異常を発見…獣医師不足に対応し厚労省が実証研究

 食肉の出荷前に都道府県などが行う安全検査について、厚生労働省は今年度、AI(人工知能)を活用した実証研究に乗り出す。AIによる画像解析で食肉の異常を見つける試みで、検査を担う獣医師の職員が不足する中、現場の負担を軽減する狙いがある。効果を確認できれば、全国的な導入を検討する。

 食肉は、自治体や民間の食肉処理施設などで安全検査を行ってから出荷されている。検査の多くは、獣医師免許を持つ自治体職員による実施が法令で義務付けられ、畜産農家が持ち込んだ生体や枝肉、内臓を目視したり触診したりしている。病気や異常が確認された場合に取り除いている。

 だが、獣医師の職員は全国的に不足している。獣医師免許を取得しても、ペットを扱う動物病院に就職を希望する人が多いためで、読売新聞が2023年度の採用状況を調べたところ、定員割れした都道府県が約9割に上った。

 政府の戦略もあって和牛を中心に食肉輸出が拡大する中、23年度は、獣医師職員計約2200人が少なくとも牛約100万頭、豚約1600万匹を、計約1100人が鳥約8億3000万羽を検査した。OBを再任用してなんとか検査をこなしている自治体も多い。人員不足がさらに進めば、公衆衛生など他の業務に獣医師を割けなくなる恐れもあり、同省はAIの活用を検討することにした。

 研究では、AIの画像解析システムを使って獣医師の目視業務を補助する。北海道や茨城県、宮崎県の3道県で今月下旬から順次始め、27年度まで3年間行う。

 研究班代表の村松康和・酪農学園大教授(獣医公衆衛生学)は「研究成果によっては、現場の獣医師の大幅な負担軽減が期待できる。食の安全に関わるので、獣医師による検査と同じレベルを目指してAIの精度を上げていきたい」と話した。

2025.04.11 12:27:45

福島県の公立小中学校、バリアフリー対応トイレの設置率全国ワースト2位…整備目標の達成は遠く

 福島県内の公立小中学校のうち、43・1%しかバリアフリー対応のトイレを校舎に整備していないことが、文部科学省の調査で分かった。整備率は全国ワースト2位だった。公立学校の多くは災害時に避難所となるため、文科省は車いすの利用者らも使いやすいトイレの設置を求めているが、実現は難しい状況だ。

 調査は昨年9月、すべての国公立小中学校と特別支援学校を対象に行われ、先月28日に公表された。

県内の公立小中学校573校のうち、バリアフリー対応のトイレを校舎に設置している学校は247校で整備率は43・1%だった。前回調査(2022年9月時点)に比べ3・3ポイント増えたものの、全国で最低だった鹿児島県(40・3%)に次いで低かった。

 校舎の昇降口や玄関から教室までの段差を解消するスロープなどを整備している学校は231校で整備率は40・3%(前回比9ポイント増)。こちらも鹿児島県に次いで全国で2番目に低かった。

 そのほか、体育館内にバリアフリー対応のトイレを設置している学校の整備率も34・4%で全国平均を大きく下回った。

 一方、校舎など学校施設のバリアフリー化に関する計画を策定している自治体は、59市町村のうち11市町村。内訳は、会津若松市など5市、川俣町など3町、檜枝岐村など3村だった。

 政府は2025年度末までに、災害時に近隣住民の避難所に指定されている全学校(総学校数の約94%)の校舎へのバリアフリー対応のトイレの整備を目指している。しかし、調査結果によると、県内では25年度末までに設置予定の学校は44・5%にあたる255校にとどまり、文科省の整備目標には届かない見込みだ。

 設置が進まない理由について、県内の教育委員会は「多くの学校で老朽化が激しく、改修工事も一緒に行うと時間がかかる」「財政が厳しく、学校施設のバリアフリー化まで取り組むのが難しい」などとしている。

 文科省は既存の校舎をバリアフリー化する費用の補助制度を設けている。県教委財務課施設財産室は、「徐々に整備されているが、全国からみると割合は低い。引き続き、市町村教委に国の補助制度を周知し、バリアフリー化の推進を呼び掛けていきたい」としている。

2025.04.11 12:21:01

国立病院機構が懲戒処分の47人を報道発表せず、ホームページのみ掲載…「公表のあり方について検討」と担当者

 全国に140病院を展開する独立行政法人国立病院機構(本部・東京)で、2024年度に公表された計47人の懲戒処分がいずれも報道機関には発表されず、ホームページ(HP)のみの掲載にとどまっていたことがわかった。うち2人は最も重い懲戒解雇で、停職も22人に上った。機構本部は重大事案は報道機関に発表するとしているが、全国の各グループは懲戒解雇でも行っていなかった。

 機構は全国を地域ごとに6グループに分けて運営している。読売新聞が各グループに問い合わせたところ、24年度にHPで公表された懲戒処分は▽北海道東北7人▽関東信越10人▽東海北陸10人▽近畿3人▽中国四国7人▽九州10人――だった。

 このうち、東海北陸は2月、先輩後輩の関係の影響力を用いて後輩職員と性的関係を繰り返し結ぶなどした東名古屋病院(名古屋市)の男性理学療法士を懲戒解雇にした。関東信越も昨年10月、通勤中に2人を死傷させる事故を起こし、有罪判決を受けた西新潟中央病院(新潟市)の看護師を懲戒解雇していた。

 患者にかかわる不祥事も相次ぎ、東海北陸は昨年12月、鈴鹿病院(三重県)で障害がある複数の入院患者を虐待したとして、看護師ら女性4人を停職などにした。

 人事院は「懲戒処分の公表指針」で、公表方法について「記者クラブ等への資料の提供その他適宜の方法によるものとする」と例示している。

 各グループは22~23年頃までは懲戒処分を報道機関に発表していたが、24年度は懲戒処分の多くは3週間程度、HPに掲載された後、消されていた。報道発表の事例がなかったことについて、東海北陸は「処分がこれ以上であれば発表するというものではなく、個々に判断している」と説明する。

 機構本部の担当者は「(読売新聞の)指摘を受けるまで、懲戒解雇でも報道発表していない事案があることは把握していなかった。隠しているように見られるのは本意ではない。公表のあり方について検討を始めている」と話した。

  ◆国立病院機構= 国の医療政策や地域医療の向上に貢献することを目的に、全国の旧国立病院と旧国立療養所を合わせ、2004年に発足した厚生労働省が所管する独立行政法人。日本最大級の医療グループで約6万4000人(昨年4月時点)が働いている。職員は「みなし公務員」に該当する。

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