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2024.09.20 14:51:20

青森・弘前市が高齢者の爪にQRコード、スマホをかざすと3桁の登録番号表示…認知症による行方不明対策に

 認知症などで家に帰れなくなった高齢者らの迅速な保護につなげようと、青森県弘前市は、事前に高齢者の爪にQRコードが印字されたシールを貼ってもらう取り組みを推奨し、今月から同市民へのシールの無料配布を始めた。発見者がスマートフォンで読み取ると、身元を特定するために市が割り振った3桁の登録番号などが表示される。

 「爪Qシール」と名付けたシールは1センチ四方で、QRコードをスマートフォンで読み取ると、登録番号と、市の電話番号が表示される。登録番号を市に伝えると、市が身元を割り出せる仕組みだ。

 市はこれまで、登録番号が書かれたキーホルダーやアイロンで服などに貼り付けるシールを配布してきたが、外出時に身につけていない場合も多いなど課題があった。今回のシールは、入浴や手洗いでQRコードがしわにならないよう加工され、約2週間剥がれないという。

 公益社団法人「認知症の人と家族の会」青森県支部の石戸育子代表(78)は、認知症の義母が何度も行方不明になったことがあり、弘前市の取り組みに期待を寄せる。「手の爪だと、気になって剥がしてしまう人がいるかもしれない。足の爪の方が抵抗は少ないのではないか」と話す。

 シールの利用を希望する人は、市役所で高齢者らの氏名や住所、家族の連絡先などの登録が必要だ。既に登録している人を含め約180人への配布を見込む。1年間の使用を想定し、1人につき24枚を配る。

 県警によると、届け出があった認知症(疑い含む)の行方不明者は過去3年間で172人に上り、うち発見されたのは166人だった。警察が 徘徊はいかい している高齢者を保護しても、本人と意思疎通ができなかったり、行方不明者届が出ていなかったりする場合があり、シールは身元特定の有効な手段になりそうだ。

 市介護福祉課の担当者は「取り組みを広く知ってもらい、本人や家族の不安を取り除きたい」と話している。

2024.09.19 10:40:12

移植あっせん業務を分割、手術受ける施設を複数登録できる仕組み導入…厚労省が改革案提示

 脳死者から提供された臓器の移植を担う病院が、人員や病床の不足などで臓器の受け入れを断念している問題で、厚生労働省は18日の臓器移植委員会で、移植医療体制の改革案を示した。日本臓器移植ネットワーク(JOT)が単独で担っている臓器のあっせん業務を分割する方針や、移植を待つ患者が、移植手術を受ける施設を複数登録できる仕組みの導入が提案され、異論は出なかった。

 体制の大幅な見直しは、脳死下の臓器提供件数の増加に伴い、JOTや移植施設の業務が 逼迫ひっぱく しているためで、臓器移植法が施行された1997年以降初めてとなる。

 あっせん業務では、脳死者の家族に臓器提供の説明と同意をとり、待機患者から移植を受ける患者を選ぶ。厚労省はこの日、新設の法人が脳死者の家族への対応を担い、JOTは移植を受ける患者の選定に集中する案と、JOTと同様の組織を地域ごとに置く案を示した。委員の大半は、役割を分ける案に賛同した。

 また、臓器の受け入れの断念対策として、待機患者が事前に登録する移植施設を、原則1か所しか選べない方式から、複数登録を可能にする方式への変更も提案された。移植の順番がきた患者は、1か所の施設が断念しても、別に登録している施設での手術を受けることが可能になる。

 このほか、移植を受ける患者を選ぶ基準の見直しや、移植施設別に待機患者数や移植件数、移植後の生存率を公表することなどが盛り込まれた。

提供意思を生かす体制に

 厚生労働省が移植医療体制の改革に乗り出すのは、ようやく増えてきた臓器提供に対し、移植を待つ患者につなぐまでの過程で目詰まりを起こしているためだ。

 2023年の臓器提供は132件と過去最多となった。一方で、日本臓器移植ネットワーク(JOT)のあっせん対応が追いついていない。JOTのコーディネーターは、脳死者家族の希望を受けて病院に駆けつけ、臓器提供の説明と同意の取得にあたるが、18日の臓器移植委員会でも到着遅れの可能性が指摘された。本紙の報道などで明らかになった移植を行う病院での病床不足などを理由とした臓器の受け入れ断念も、特定の病院に移植要請が集中している背景がある。

 厚労省はあっせん業務の見直しで、家族対応と移植を受ける患者の選定を分ける案を示した。受け入れ断念の対策では移植希望者が移植施設の複数登録を可能とする方策も明らかにした。

 臓器提供者の意思を生かし、移植希望者へ着実に届けるため、速やかに改革を進めてほしい。(医療部 余門知里)

2024.09.17 15:46:00

厚労省、移植医療体制の大幅見直しへ改革案…希望者は手術病院の複数登録可能に・あっせんは複数機関で

臓器のあっせん業務は複数機関で

 脳死移植を行う病院が病床不足などで臓器の受け入れを相次ぎ断念している問題で、厚生労働省の移植医療体制の改革案の概要がわかった。移植希望者が移植手術を受ける病院を複数登録できるようにするほか、「日本臓器移植ネットワーク」(JOT)が単独で担っている臓器のあっせん業務の分散が柱だ。脳死移植の拡大が目的で、体制の大幅な見直しは、臓器移植法が施行された1997年以降で初となる。

 改革案は、18日に開かれる厚生科学審議会の臓器移植委員会で提示され、導入に向けた議論を始める。

 移植希望者は現在、手術を受ける病院を原則1か所選び、登録しておく。だが、病院が病床や人員の不足を理由に、脳死者から提供された臓器の移植を断念する事例が相次いでいる。この場合、臓器は別の病院に登録している、より優先度の低い希望者に移植される。移植医療の公平性の観点から問題視されていた。

 改革案では、移植希望者が手術を受ける病院について複数登録を可能にする。一つの病院が移植を断念した場合でも、希望者は別の病院で移植を受けられる。移植時に希望者をスムーズに引き継げるよう登録した病院同士が病状などのデータを共有し、連携を深める。移植希望者が登録する病院を選ぶ際の参考情報として、病院ごとに移植の待機者数や移植件数、移植後の生存率なども公表する。

 臓器のあっせん業務は、脳死者の家族に臓器提供の説明と同意取得を経て、希望者から移植患者を選定して臓器をつなぐ。現在、JOTが一貫して担っているが、臓器提供の増加に伴い、業務が 逼迫ひっぱく し、あっせん対応に遅れが生じているとの指摘が出ていた。また、提供の同意取得と移植患者の選定を一つの組織が行う現状では、移植希望者と関係のある職員がいる場合、提供の同意を脳死者家族に迫る恐れへの懸念もある。米国では、脳死者家族への説明と移植患者の選定を別々の組織が行っている。

 そこで、厚労省は新たな機関を設置し、脳死者家族への説明や同意取得を担当させる。JOTには移植患者の選定に集中させる案を盛り込む。地域ごとにあっせん機関を複数置く案も示される見通しだ。

 あっせん業務を複数の機関が行うことで負担の軽減と効率化を図り、臓器提供のさらなる増加に対応できるようにする。

2024.09.17 13:01:46

高齢ドライバー「第3の選択肢」、サポカー限定免許の申請伸び悩む…新潟県内の取得者は2年で1人

 自動ブレーキ機能などを備えた「サポカー」限定の運転免許制度が高齢ドライバーの事故防止策として導入されてから2年以上が過ぎた。だが、新潟県警によると、県内での取得者は12日現在でわずか1人にとどまる。識者は、サポカーに買い替える経済的負担の大きさや制度の周知不足などが原因だと指摘する。

 安全運転サポート車(サポカー)限定の免許制度は2022年5月に導入され、運転免許の更新か自主返納かで悩む高齢者らの「第3の選択肢」として警察などがPRしてきた。

 限定免許で運転できるのは、アクセルとブレーキを踏み間違えた際の急加速抑制装置や高性能の自動ブレーキ機能などを搭載したサポカーに限られる。

 対象車は警察庁がホームページで公表しており、普通運転免許の取得者も運転できる。だが、限定免許に切り替えた後は、対象車以外を運転すれば違反となる。

 県警運転免許センターによると、全国の限定免許申請者数は20都道府県の計46人(昨年末時点)と伸び悩む。最多は静岡県の12人で、取得者がいない県も目立つ。

 同センターは、「安全運転相談ダイヤル」(#8080)などで自主返納に関する相談を受けた際、サポカーや限定免許についての説明もしてきた。それでも、県内の限定免許取得者は1人しかいない。

 高齢者の運転にかかわる問題に詳しい立正大の所正文教授(産業・組織心理学)は、車の買い替えサイクルが長めの高齢者にとってサポカーの購入は負担が大きいと指摘。「限定免許の普及が進まない最大のネックになっている」との見方を示す。

 所教授は、サポカーの性能がドライバーに浸透していないことや限定免許に切り替えた場合の利点がわかりにくいことも、普及を妨げている要因とみる。

 県警は、限定免許は安全運転への意識向上につながるとして、今後も周知に努めていく方針だ。担当者は「運転に不安を感じる高齢者が事故防止について考え、家族らの安心感にもつながる選択肢になりうる」と強調している。

自主返納数は鈍化

 県警によると、県内で今年発生した交通事故による死者は12日現在で36人に上り、このうち15人は、65歳以上の高齢者が過失割合の大きい「第一当事者」となった事故で亡くなった。

 県警運転免許センターによると、高齢者は加齢に伴って認知、運動機能が低下するため、運転操作を誤った際は、対応が遅れて重大事故につながるケースが多い。

 県内で運転免許を自主返納した65歳以上の高齢者の数は、東京・池袋で高齢ドライバーによる死傷事故が起きた2019年に約1万人を記録した。だが、翌年以降は減少傾向に転じ、23年は約6700人にとどまる。

 自主返納数が鈍化した背景には、地域の足となる公共交通機関の便数が少ないなど、車が生活必需品として手放せない地方特有の事情もあるという。

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