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2024.07.29 14:18:10

酷暑の避難所生活、自治体職員ら体感…室温30度・湿度70%の体育館で1泊「対策に生かしたい」

 防災分野の専門家らでつくる「避難所・避難生活学会」は27~28日、酷暑での避難所生活を想定した宿泊訓練を大阪府八尾市の小学校で行った。学会によると、同様の訓練は国内初という。参加者はエアコンのない体育館で寝苦しい一夜を過ごし、熱中症や災害関連死を防ぐための課題を共有した。

 厳冬期を想定した避難所訓練はこれまで北海道の大学で実施されてきたが、近年、夏場の水害が頻発しており、同学会が真夏の訓練を初めて企画した。

 訓練には、学会の専門家や、避難所運営などを担う自治体職員ら計約60人が参加。気象庁によると、同市では両日とも最高気温が35度以上の猛暑日となった。

 参加者らは持ち込んだ冷感タオルやハンディータイプの扇風機などのグッズで暑さをしのぎ、体育館の扉を開放して大型扇風機で送風していたが、夜になっても室温は30度を超えたまま。湿度も約70%と高く、ほとんど寝られない人もいた。

 大阪府災害対策課の大井祥之さん(35)は「空気がじめじめして寝苦しく、扇風機の音も気になった。部署に持ち帰り、対策に生かしたい」と疲れた様子だった。

 28日には参加者らで課題を協議。風が全くあたらない場所に熱がたまりやすく、「風の通り道を作るように扇風機の設置場所を考えるべきだ」との意見が出た。

 熱中症に備えてエアコンを利かせた校舎の一室を用意し、校庭には応急処置ができる医療用コンテナも待機させる対応を取った。

 石巻赤十字病院(宮城県)の副院長を務める植田信策・同学会代表理事(60)は「課題を整理し、暑さ対策に関する技術を持つ民間企業とも協力して解決策を探りたい」と話した。

2024.07.25 18:04:48

近隣自治体で「若い住民の奪い合い」に…出生数増えても「自然減」加速で追いつかず

 総務省が24日発表した住民基本台帳に基づく人口で、日本人は過去最大の減少となった。各自治体は子育て施策の充実などで若い転入者を増やして出生数の増加につなげようとしているが、加速する人口減に歯止めをかけられていない。(水戸支局 成海隆行、前橋支局 乙藤秀行)

 茨城県南部の阿見町は、転入が転出を上回る「社会増」が445人で、全国の町村で最多だった。

 町内では近年、JR常磐線の駅や圏央道のインターチェンジ周辺で宅地開発が進み、首都圏への交通の便の良さなどから子育て世帯を中心に移住が進む。子ども医療費無料や病児・病後児保育など子育て支援策も充実させ、人口は昨年5万人を突破。町は市制施行の準備もしている。

 2年前に同県北茨城市から引っ越した会社員の男性(26)は「どこに行くにも便利で暮らしやすい」と語り、妻で看護師の女性(27)も「安心して子育てできる」と話す。

 ただ、茨城県全体では1341人の「社会減」で、転出者の方が多い市町が目立つ。208人の社会減だった県東部の鉾田市の横田清泰・副市長は「子育て支援や移住者の受け入れ策といった近隣間の競争が激しくなり、住民の奪い合いになっている」と指摘する。

 人口減対策を含めて政府が2014年に始めた地方創生の取り組みは今年で10年を迎えた。全国で移住者増加などに向けた施策の充実が図られ、成功事例も出ているが、死亡数が出生数を上回る「自然減」は加速度的に進み、社会増が目立ちにくくなっているのが現状だ。

 民間有識者らでつくる「人口戦略会議」が4月に公表した報告書で鉾田市は、50年には若年女性人口が50%以上減り「消滅可能性がある」と指摘された。

 社会増が進む阿見町ですら、50年の若年女性人口の減少率は20~50%に及ぶと予測される。千葉繁町長は地元出身の若者の流出に頭を痛めており「進学などで町外に出ても、いずれ町に戻って定住してくれる施策を検討したい」と語る。

 中央大の松浦司准教授(人口経済学)は「移住者の奪い合いは必ずしも悪いことではない」とした上で、「社会増の状況をうまく活用して自治体間連携を進めて地域全体の活性化を図り、出生数増につなげるべきだ」と指摘している。

外国人増加続く

 一方、日本人とは対照的に、国内の外国人数は増加の一途をたどっている。

 都道府県別にみると、人口に占める外国人住民の割合は、東京都をトップに、愛知県、群馬県と続く。特に、群馬県大泉町は外国人が8306人と全国の町村で最も多く、自然増も73人と最多だった。

 同町では1990年代以降、南米系外国人の移住が進み、近年は技能実習生なども増えたことで人口に占める外国人は2割と、定住化も進む。町は外国人住民への対応を充実し、来年度から県内で初めて外国人の正規職員を採用できるようにした。

 外国人の増加率では熊本県がトップとなり、前年比24・18%の増だった。台湾積体電路製造(TSMC)の工場が建設された熊本県菊陽町では、外国人の社会増が455人と目立った。

2024.07.25 15:24:33

大海原に22時間、乗員・乗客121人やっと上陸…航行不能のジェット船「常に揺れている状態」で体調不良続出

 千葉県南房総市の野島崎沖で航行不能となり、海上保安庁の巡視船などにえい航されていた東海汽船(東京)のジェット船「セブンアイランド愛」(約280総トン)は25日午前5時45分頃、出港から22時間後に伊豆大島・岡田港に到着した。同社によると、乳幼児を含む乗員・乗客計121人にけがはなかったが、複数人が体調不良を訴えた。下船した乗客らは疲れた表情を浮かべていた。

 「やっと着いた。常に揺れている状態で、気分が悪かった」。家族4人で伊豆諸島・式根島を訪れる予定だった神奈川県厚木市の団体職員の男性(50)は、そう吐露した。

 男性によると、船は大きく揺れ、 嘔吐おうと をするなど体調を崩す人が続出。乗客らは複数の席にまたがって横になったり、床に段ボールを敷いたりして過ごしていた。24日夕に食料や水を支給されたが、男性は「飲み物を口にするのがやっとだった」と話した。

 同社や第3管区海上保安本部(横浜市)によると、船は24日午前7時45分に東京・竹芝桟橋を出港。同10時5分に伊豆諸島・式根島に、同25分に新島に到着する予定だった。しかし午前9時10分頃、船から同社に「一部のタービンが回らない」と故障を知らせる連絡が入った。同社は船長と連絡を取りながら自走を試みたが、断念。同10時頃、野島崎沖の南西約17キロ地点を航行中、船長が海上保安庁に「油が漏れて油圧が低下し、かじがきかない」と118番した。

 その後、同庁の巡視船が午後0時25分頃から、停留できる40キロ超先の伊豆大島に向け、えい航作業を開始。しかし、ロープが切れ、民間のタグボートに切り替えた。その後、ロープがスクリューに巻き込まれるトラブルが発生し、再び別の巡視船に交代した。

 その間も船は少しずつ東に流され、午後6時時点で岡田港から東に約50キロ地点にいた。同8時頃からはさらに別のタグボートが引き継ぎ、岡田港に着いた時には夜が明けていた。

 男性の娘で会社員の女性(21)は「ロープが切れた時は陸が遠くなったと絶望した。大きな波がくると、またロープが切れたのではないかと思い、気が休まらなかった」と話した。

 船は全長約27メートル、幅約8・5メートルで、定員254人。1980年に建造され、2002年から同社での運航を開始した。ジェット船はジェットエンジンで海水を噴き出し、空気の代わりに海水から揚力を得て、船体を海面から浮かして航行する。

 元第3管区海上保安本部長で日本水難救済会の遠山純司理事長は「老朽化で圧力がかかりやすい油圧系統の部品に亀裂などが生じた可能性がある」と指摘。「ジェット船の船体は軽く、しけの海にお わん が浮いているような状態だった。波と風の抵抗を受けやすく、ロープに瞬間的な力が加わって切れてしまったのだろう。えい航は速力を落として、慎重に進める必要があった」との見方を示した。

 同社によると、船の点検は毎日行っており、今回も異常はなかったという。同社は乗船料を全額返金する方針。海保が今後、航行不能になった原因を調べる。

 

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