医療ニュース 2025.02.06
聴覚障害の「逸失利益」算定基準、健常者と「同等」…娘の告別式と同日の確定に父「導いてくれた」
聴覚障害のある女児が重機にはねられて死亡した事故を巡り、将来得られるはずの収入「逸失利益」の算定基準が争われた訴訟で、全労働者の平均年収と同水準と判断した大阪高裁判決が5日、確定した。原告の遺族と、被告の運転手側の双方が期限までに上告しなかった。重機の運転手と当時の勤務先は遺族に約4300万円を賠償する。
大阪府立生野聴覚支援学校小学部5年の井出 安優香 さん(当時11歳)は2018年2月、大阪市生野区で下校中、歩道に突っ込んできた重機にはねられて死亡。遺族が損害賠償を求めて提訴した。
23年2月の1審・大阪地裁判決は逸失利益について「障害が労働能力を制限することは否定できない」とし、全労働者の平均年収の85%で算定した。
これに対し、1月20日の大阪高裁判決は全労働者の平均年収を原則とし、減額を「例外」とする判断基準を示した。その上で、井出さんのコミュニケーション能力の高さや障害を補うデジタル機器の存在を踏まえ、「減額する理由はない」と判断。賠償金を1審の約3700万円から増額した。
父「私のように苦しむ遺族が二度と出ないことを望む」
井出さんの父、努さん(52)が5日、大阪市内で記者会見を開き、「長い時間がかかったが、やっと報われた」と語った。
訴訟では、障害を理由とした減額を「差別的だ」と訴え続けた。「私のように苦しむ遺族が二度と出ないことを望む」と述べた。
井出さんの告別式が営まれたのは、ちょうど7年前の2月5日。努さんは「安優香が天国に行った日。偶然ではなく、娘が導いてくれた」と涙を浮かべた。