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2024.06.25 19:57:54

入院48時間以内にリハビリ計画作成、入院の長期化防ぎ医療費も抑制…急性期病床で政府が後押し

 政府は、救急治療や手術で入院した患者に早期からリハビリを実施し、身体機能を回復させて退院につなげる取り組みの強化に乗り出した。6月から適用された診療報酬で、入院後48時間以内に患者全員の状態を評価し、必要に応じてリハビリ計画を作成するよう後押しした。入院の長期化を防ぎ、医療費の抑制を図るとともに、患者には日常生活を早く取り戻せる利点がある。

 入院患者は寝たきりの状態が続くと筋力が低下し、入院が長期化したり、退院後に介護が必要になったりする恐れがある。

 今回、リハビリの強化を促したのは「急性期病床」と呼ばれる病床だ。医師や看護師が手厚く配置されているが、重症者などに対応するのが本来の役割で、リハビリが遅れたり十分に実施できていなかったりするケースがある。一方で入院基本料が高く設定されており、入院が長引けば、医療費が膨らむ可能性がある。

 早期リハビリでは、入院から48時間以内に理学療法士や看護師らが、患者が車椅子からベッドに移動できるかなどの身体機能や、食事ができるかなどの栄養状態をチェックする。その判定結果に基づき、患者ごとにリハビリ計画を作成し、ベッドで手を動かしたり起き上がったりする訓練や、筋力トレーニングなどを実施する。

 リハビリは平日だけでなく、土日祝日も取り組めるよう求めた。厚生労働省が入院患者約15万人分のデータを分析した結果、休日にもリハビリをした人は平日のみの人と比べ、退院時に身体機能が1・3倍回復していた。

 栄養状態が悪化すると身体機能の低下につながるため、管理栄養士による栄養管理も強化する。

 新たな診療報酬では、急性期病床でこうした取り組みを実施した場合、患者1人につき1日あたり1200円を上乗せする。最長で14日間算定できるため、最大1万6800円になる。

 病棟に理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職を2人以上、管理栄養士を1人以上、常勤で置くことが条件だ。 誤嚥性ごえんせい 肺炎などを防ぐため、かむ力やのみ込む力などの 口腔こうくう 機能が低下しないよう必要な管理体制の整備も求める。

 日本理学療法士協会の斉藤秀之会長は「入院から2週間は簡単なものでも構わないので、早い段階からリハビリを実施すれば、早期退院につながる。急性期病床でも多くの病院が積極的に取り組むことが重要だ」と話している。

2024.06.25 15:12:13

真夏のエアコンで死者3割以上減少、排熱で気温上昇のデメリットを上回る…国立環境研究所など推計

 真夏にエアコンの利いた部屋で過ごすことで、熱中症や暑さによる持病の悪化などで亡くなる人を3割以上減らせるとの研究成果を、国立環境研究所などのチームがまとめた。近年、猛暑による高齢者らの死亡リスクが高まる中、エアコンの適切な利用が命を守ることを改めて裏付けた。

 エアコンの利用で、夏場の死者をどの程度まで具体的に減らせるかを示した研究は初めてという。

 チームは、大阪、神戸、京都、大津、奈良、和歌山と堺市の計7都市で、近年の8月の気候や、ビル・住宅に設置されたエアコンの排熱状況をコンピューターで再現。過去の気象データや死者の状況、エアコン保有率などの情報を加え、暑さによる死者数を推計した。

 その結果、7都市における8月の平均気温は28・2度と算出され、エアコンを全く利用しない場合、同月の死者は1900人と推計されたが、エアコンを保有する全世帯が使うと、686人減少。地球温暖化で平均気温が3度上昇したと仮定すると、エアコンを利用しない場合の死者はさらに増えて9803人に上ったが、利用すれば4628人減らせた。

 また、エアコンの排熱が気温を押し上げる影響を加味した推計では、3度上昇の条件で死者は342人増えたものの、エアコンを使った方が死者数を抑える効果は大きかった。

 厚生労働省によると、2022年の熱中症による死者は1477人に上る。9割近くが65歳以上という。

 チームの岡和孝・同研究所気候変動影響観測研究室長は「エアコン利用の重要性を示せたが、排熱を抑える研究も必要だ」としている。成果をまとめた論文が国際科学誌に掲載された。

 井原智彦・東京大准教授(環境社会システム学)の話「意義のある成果だ。エアコンによる死者数抑制の効果が、排熱のデメリットを明確に上回ることを将来予測も含めて示せたのは大きい」

2024.06.24 17:35:45

技能実習生の送り出し側6割が個人仲介、高額仲介料要求の「ブローカー」も…厚労省が初の実態調査

 日本に派遣される外国人技能実習生について、海外の「送り出し機関」の約6割が、個人の仲介で集めていることが、厚生労働省の初の実態調査でわかった。中には、実習生や機関側に高額の仲介料を要求する「ブローカー」も含まれているとみられ、厚労省は、実習生が支払う手数料が高騰する一因とみている。近く、報告書を公表する。

 調査は昨年8月~12月にベトナム、インドネシア、フィリピン、中国、カンボジアの5か国で実施した。186の送り出し機関がアンケートに回答し、36機関に対し、実習生から受け取る手数料やブローカーの実態について、現地でヒアリングを行った。

 アンケート(複数回答)で実習生を集める方法を尋ねたところ、「自社で募集」が89%で最多だった。次いで多かったのが「個人の仲介」の58%で、「大学や専門学校の紹介」(51%)、「日本語学校などの紹介」(49%)を上回った。

 「仲介者」には実習生の親族や知人のほか、村長など地域の有力者が多い。ヒアリングからは、機関側がブローカーから高額の仲介料を要求され、実習生が支払う手数料に跳ね返っている実態が確認された。

 ベトナムの送り出し機関の担当者は「たくさんのブローカーが訪れ、1人あたり14万円程度の謝礼を求めてくる」「ブローカーは複数の機関が提示する仲介料を比較し、紹介先を決める。結果的に実習生が負担する手数料が高くなってしまう」などと証言した。

 機関側が送り出しの手数料や日本語の教育費などとして実習生から受け取る金額は、ベトナムでは「30万円以上」が50%に上り、カンボジアでは、「50万円以上」が42%を占めた。

 政府は、現行の技能実習制度に代わり、新たに外国人材の育成と確保を目的とする「育成就労」制度を創設。新制度は2027年までに始まるが、海外の送り出し機関に人材確保を頼る状況は変わらない。

 厚労省は、育成就労の外国人が負担する手数料を送り出し機関が公開する仕組みの創設に向け、現地政府への働きかけを強めていく方針だ。

2024.06.24 09:36:00

がんの男児の精巣保存、成人後の不妊治療に備え技術開発へ…日米チーム「精巣バンク」計画

 がん治療を受ける男児の精巣の一部を凍結して長期保存し、成人後に正常な精子を作れるようにする不妊治療技術の開発に、大阪大など日米共同研究チームが着手した。将来の実用化を見据え、男児の精巣の一部を採取する「精巣バンク」の運用を、来年にもスタートさせる計画だ。

 がんで放射線照射や抗がん剤の投与を受けると、治療が成功しても不妊になるケースが多い。成人は治療前に卵子や精子を凍結温存する技術があり、女児は凍結した卵巣を成人後に体に戻し出産した事例の報告があるが、精巣が未成熟な男児の治療法はない。

 大阪大の伊川正人教授(生殖医学)らの研究チームは、未成熟な精巣を体外で培養し、精子を作る研究を始めた。同大はマウスで子どもを産ませることに成功しており、サルなどの動物で研究を進める。同大の林克彦教授らがiPS細胞から精子を取り囲む細胞を作り、体外で精巣の環境を再現して、人間の精子を成熟させる技術を確立する。

 米ペンシルベニア大は人工的に成熟させた精子に異常が起きないかを調べ、米ベイラー医科大は精子を正常に育てる薬剤を探し、不妊治療の安全性を高める。国内チームはAMED(日本医療研究開発機構)、米国チームはNIH(米国立衛生研究所)の支援を受けて研究を進める。

 現在の男児患者が成長して適齢期となる20年後をめどに、育てた精子を体外受精させたり、精巣の細胞を移植したりする不妊治療の実用化をめざす。男児の精巣バンクには複数の国公立大が参加を検討している。

 国立がん研究センターによると、0~14歳の男児は年間約1000人が小児がんと診断されている。精巣バンクの登録は年間10人程度から始める計画だ。

  がん患者への生殖補助医療に詳しい吉村泰典・慶応大名誉教授の話 「小児がん患者の生存率が大きく向上し、将来の不妊治療へのニーズが高まっている。実験動物とは精子が成熟する仕組みが異なるなど課題はあるが、10年以上先なら実現する可能性は高く、患者や家族の大きな希望になる」

2024.06.21 15:05:38

蚊の「食欲」促す血中成分を特定、被害防ぐ薬開発の可能性も…理化学研究所などのチーム

 デング熱などを媒介するネッタイシマカが「腹八分目」で血を吸う行動をやめるメカニズムを解明したと、理化学研究所と東京慈恵会医科大のチームが発表した。針を刺すことで血液中に生じる物質が、蚊に満腹感をもたらしているという。蚊の被害を防ぐ薬の開発に役立つ可能性があり、論文が21日、科学誌セル・リポーツに掲載される。

 ネッタイシマカは東南アジアや南米などに生息するヤブ蚊の一種で、デング熱やジカ熱などのウイルスを媒介する。

 人や動物の血液に含まれるATPという物質が蚊の「食欲」を促していることはわかっていたが、腹部が吸った血で満たされる前に逃げることが多く、何をきっかけに「食事」をやめるのかは分かっていなかった。

 理研の佐久間知佐子・上級研究員らは、ネッタイシマカが好むATPの溶液に、血液から赤血球などを取り除いた上澄みだけを加えると、あまり吸わなくなることを発見。上澄みの中に、蚊に満腹感をもたらす物質があると推定して成分を絞り込んだ結果、「フィブリノペプチドA」という物質が関わっていることを突き止めた。

 この物質は、血液の凝固に欠かせないフィブリノーゲンというたんぱく質から作られる。蚊が血管に針を刺した刺激で血液の凝固反応が進んでこの物質が増え、蚊の体内にある程度蓄積すると血を吸う行動を終えることがわかった。

 ネッタイシマカと同じヤブ蚊の仲間で、国内に多いヒトスジシマカなども、同じ仕組みを持っているとみられ、佐久間上級研究員は「蚊の体内でどのような反応が起きて満腹と感じているかが分かれば、吸血を抑える薬を作れるかもしれない」と話す。

 蚊の感染症対策に詳しい愛媛大の渡辺幸三教授(熱帯疫学)は「独創的な研究成果だ。血を吸うのはメスの蚊で、卵が成熟する栄養となる。蚊の吸血行動を抑えることは個体数を減らすことにもつながるだろう」としている。

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