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2024.07.02 21:05:19

次の感染症危機に備えた「行動計画」改定…コロナ教訓踏まえ、平時からワクチン研究推進

 政府は2日午前の閣議で、次の感染症危機に備えた「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の改定を決定した。新型コロナウイルスの感染拡大で行動制限が長期化したことを踏まえ、対策を「柔軟かつ機動的」に切り替える方針を明記した。平時からワクチンの研究開発などを推進することも盛り込んだ。

 計画は2013年に策定され、抜本的な改定は今回が初めて。新たにワクチンや水際対策など7項目を追加し、計13項目について「準備期」「初動期」「対応期」の対応策をそれぞれまとめた。

 昨年9月から有識者会議で議論を行い、今年4月に改定案を大筋了承した後、パブリックコメント(意見公募)を実施していた。

 計画の改定案にはワクチンに関し、研究開発の支援や接種体制の整備を盛り込んだが、公募で19万件超の意見が寄せられ、特にワクチン接種への懸念が多かったため、「予防接種の意義や制度の仕組み」に関する啓発を行うことを追加した。偽・誤情報への対策にあたっては「表現の自由に十分配慮」することも記した。

 感染防止対策としては、科学的知見が不十分な段階でも、医療の 逼迫ひっぱく 時に、「まん延防止等重点措置」や「緊急事態宣言」などに踏み切るとした。そのうえでワクチンや治療薬の普及などに応じて柔軟に変更し、「国民生活や社会経済活動への影響の軽減を図る」ことも強調した。

 計画は毎年度点検し、6年ごとに改定する。より具体的な対策や基準を示すガイドライン(指針)も早期に作成する見通しだ。

2024.07.01 12:40:56

母乳の栄養成分「トリカプリン」、おなかの大動脈瘤を縮小させる可能性…治療薬候補として臨床試験

 母乳などに含まれる栄養成分「トリカプリン」が、おなかの大動脈にできたこぶを小さくする可能性があるとして、大阪大の研究チームは、腹部大動脈 (りゅう) の患者を対象に、治療薬候補として服用してもらう臨床試験を行うと発表した。

 腹部大動脈瘤は、おなかの大動脈が動脈硬化でしなやかさを失い、もろくなった血管の壁が膨らんでこぶを作る病気。自覚症状がないまま進行し、突然破裂して命を落とすこともある。

 チームの 樺敬人かんばたかひと ・同大特任研究員(循環器内科学)によると、国内の推定患者数は100万~180万人で、こぶが5センチ以上になると、有効な治療は、人工血管に置き換えるなどの手術に限られる。

 トリカプリンは母乳やココナツミルクなどに含まれる中性脂肪の一種で、主成分とする健康食品を同大などが開発。近畿大などと行ったラットの実験では、血管が丈夫になり、こぶを縮小させる効果がみられた。

 臨床試験は大阪大病院で実施する。こぶが4・5センチ以下の患者10人(50~85歳)に、この健康食品を毎日3回、1年間服用してもらう。樺特任研究員は「有効性がわかれば、手術の前に投薬治療ができるようになる可能性がある」としている。

 加藤雅明・森之宮病院(大阪市)心臓血管外科顧問の話「手術よりも薬の方が患者の負担は軽く、治療薬として実用化されれば積極的に使っていきたい。今回の臨床試験で、こぶが縮む詳しい仕組みの解明も期待したい」

2024.06.28 18:10:38

東京女子医大の推薦入試、寄付額などを点数化して「貢献度」として判定…同窓会組織にも報告

 東京女子医科大(東京都新宿区)と同窓会組織「至誠会」が医学部の子女枠推薦入試を受けた受験生側から寄付金を受け取っていた問題で、2019年9月に受験生を審査した同会の理事らが、寄付額などを点数化した「貢献度」を判定に用いていたことがわかった。同大は同11月、文部科学省から入試選考に関する照会を受けた際、「適正に行っている」と回答しており、同省は詳しい経緯の報告を求めている。

 問題の推薦入試は、〈1〉3親等以内に至誠会の会員(卒業生)か準会員(在校生)がいる〈2〉同会の推薦を受ける――ことを条件としており、19年は14人が同会に推薦審査を依頼。9月末に筆記と面接が行われた。

 読売新聞が入手した19年の審査に関する内部資料によると、大学と至誠会への寄付額と、会員の親族が同会の会合に参加した回数が「貢献度」として点数化され、筆記や面接、高校の内申点の合計点に加算されていた。

 この年の推薦入試の募集人員は「約7人」だった。審査を担当した至誠会の業務執行理事ら3人は、7位と8位の生徒の総合点が僅差で、2人とも「貢献度」が14人の中で2番目の7点だとして、8位の生徒も推薦することを決めた。この2人の7点はいずれも寄付で得たものだった。

 審査の結果については、面接などに関与していない至誠会理事にも報告されたが、寄付額を点数化したことについての言及はなかった。

 審査の結果は、当時至誠会の代表理事だった同大の岩本絹子理事長(77)にも報告されており、岩本氏は翌10月、同大の学長に8人を推薦することを通知。大学の試験ではこのうち7人が合格した。

 文科省には翌11月頃、至誠会の審査について「寄付金額の多さで判断している」との情報が寄せられ、同省入試不正対応窓口は同月下旬、大学側に報告を求めた。これに対し、同会は大学を通じて「寄付金額の多さで推薦の授与・不授与を判断したという事実は一切ない」と回答していた。

 だが、至誠会では21年の入試まで、受験生が同会に提出する「推薦審査依頼書」に寄付の実績を記載させる運用を続けていた。

 同大の子女枠の推薦入試を巡っては、至誠会の理事が受験生に対する面接の場で、同席した保護者らに寄付を打診したケースがあったこともわかっている。文科省は、私大の入学に関して寄付金を収受したり、募集や約束をしたりすることを禁止している。

面接官は同窓会組織の理事ら

 東京女子医大への推薦を得るための至誠会の審査はどのように行われたのか。

 至誠会の資料によると、初年度の2018年を除き、22年までの審査は筆記試験と面接で行われた。筆記は、大学の沿革や創立者・吉岡弥生の歩みなどについて記述する設問が並んだ。

 面接には保護者ら親族も同席し、建学の精神への理解や、同大への貢献の実績などについて確認が行われていた。面接官は、同大理事を兼ねる至誠会理事らが担当しており、18、19年は面接官3人全員が同大理事の兼務者だった。18年の面接では保護者らに寄付を打診したケースがあったこともわかっている。

 こうした審査を経て至誠会から推薦を得た生徒は、大学での選考に進み、改めて筆記試験や面接を受験する仕組みだった。同大は今年度の試験から、子女枠の推薦入試に至誠会が関与しない仕組みに変更した。

2024.06.28 14:22:17

心移植に東京医科歯科・岡山・愛媛の3大学参入へ…医療のひっ迫改善に期待

 脳死下の臓器提供件数が増える中、東京医科歯科大、岡山大、愛媛大が新たに心臓移植を実施する方針であることが27日、分かった。日本心臓移植学会が今月発表した緊急調査では、移植施設の人員や病床が不足し、脳死者から提供された心臓の移植を断念した例が、2023年に16件あった。3国立大の参入により、心臓の移植施設は全国14か所に増え、移植医療体制の 逼迫(ひっぱく) の解消につながることが期待される。

 東京医科歯科大は、東京大から約1キロの近距離にある。東大には、移植を待つ患者が集中し、23年の心臓移植の断念例16件のうち15件を占めた。東京医科歯科大では東大との連携を視野に、移植チームづくりを急ピッチで進めている。今年10月に東京工業大と統合し「東京科学大」になることが決まっており、心臓移植を実施することで、新大学の実力のアピールにつなげる狙いもある。

 岡山大は現在、肺、肝臓、腎臓の移植を担う。脳死下の臓器提供例は国内最多の実績を持つ。心臓移植施設となれば、中国地方で唯一となる。愛媛大は四国初の心臓移植施設となる。

 医療機関が心臓移植を行うにはまず、日本循環器学会などでつくる協議会の推薦を受け、日本医学会の委員会で選定される必要がある。その上で、臓器あっせん機関「日本臓器移植ネットワーク(JOT)」が、移植施設として登録すると実施できる。

 東京医科歯科大、岡山大は来年度にも協議会への申請を行う。JOTによると、愛媛大は登録まで済ませ、実施に必要なシステムの導入などを準備している。

  心臓移植に詳しい 福嶌教偉ふくしまのりひで ・千里金蘭大学長(看護学、心臓血管外科)の話 「移植施設が増え、待機患者の偏りが緩和されれば、臓器の受け入れを断念する問題を解決する一助となる。併せて個々の移植施設の受け入れ態勢の充実も図ることが求められる」

◆移植施設= 臓器移植法の運用指針に基づき、医療機関が、臓器ごとに組織される学会協議会などに申請し、選定される。その後、JOTが施設として登録すると移植を実施できる。心臓の場合、2020年、国立成育医療研究センターが登録されたことで11施設になった。

2024.06.27 11:42:47

機能性表示食品、健康被害情報を9月から報告義務化…消費者庁が方針

 消費者庁は、機能性表示食品を製造・販売する事業者に対し、医師の診断がある健康被害情報の全件報告を9月から義務づける方針を固めた。品質管理体制の強化は2026年9月から求める。

 小林製薬の「 紅麹べにこうじ 」成分入りサプリメントを巡る健康被害問題を踏まえた措置で、国が安全性などを審査して販売を許可する「特定保健用食品(トクホ)」にも適用する。

 同庁は27日にも、食品表示法に基づく内閣府令の改正案を内閣府の第三者機関である消費者委員会に示す。

 改正案では、9月以降、届け出事業者に対し、因果関係や症状の軽重にかかわらず、全ての被害情報を保健所などに報告することを義務づける。小林製薬が報告までに約2か月かかったことから、被害情報を収集する体制の強化も9月から求める。

 26年9月からは、製品の品質を一定に保つための「GMP(適正製造規範)」に沿った製造・管理も義務化する。GMPは製品の保管や工場の点検方法などを定めるもので、これまではGMPに基づく品質管理を行うかどうかは事業者任せだった。

 機能性表示食品については、トクホや医薬品との混同を避けるため、製品のパッケージなどの表示方法を同月から見直させる。

 政府は5月末に再発防止策を公表し、内閣府令の改正案を検討していた。消費者委は7月にも政府に意見を答申し、改正が行われる見通しだ。

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