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2024.03.07 19:27:38

発がん性疑いPFAS検出、米軍弾薬庫付近の川などで指針値の最大300倍…市が住民40人に臨時で健康診断

 発がん性が疑われる化学物質「 PFAS(ピーファス) 」が、広島県東広島市八本松町で国の暫定指針値を超えて検出された問題で、市は6日、周辺の井戸水を飲用している住民に臨時の健康診断を行うと発表した。高垣広徳市長が定例記者会見で明らかにした。

 対象は、同地域の14世帯約40人。地域集会場で今月から4月にかけ、通常の健康診断項目に加え、肺や大腸などのがん検診を行う。費用は市が全額負担する。PFASの血中濃度検査は行わない。

 検出されたのは米軍川上弾薬庫がある地域。高垣市長はこの日、市からの情報公開の要請に対して、米軍から中国四国防衛局を通して先月27日に回答があったと発表した。県内の米軍施設全体について▽泡消火剤を使用したことがない▽漏出を確認したことがない▽2020年に計8300リットルを処分した▽現在は一切保有していない――との内容で、高垣市長は「川上弾薬庫についての具体的回答がもらえず残念だ。引き続き調査を要請していく」と話している。

 同市内では、川上弾薬庫近くの川や水路で国の暫定指針値を上回るPFASが検出され、市が周辺58か所の井戸水を含め、河川や水路など計101か所を検査。これまでに最大で指針値の300倍となる1リットル当たり1万5000ナノ・グラム(ナノは10億分の1)を検出している。

2024.03.06 19:23:41

中学1年生250人の半数超、理科の課題で同じ間違い…教諭の違和感の正体は生成AIの「誤答」

 東京都内の私立中で2月、1年生の半数超が理科の課題に対する解答を間違う事態が起きた。原因となったのは、生成AI(人工知能)が表示した“誤答”。食品大手「キユーピー」がホームページ(HP)に載せていた記述を基に生成し、生徒たちが書き写していた。男性教諭に記述の誤りを指摘された同社は、誤解を招きかねない表現があったとして修正した。

同じ誤り

 <唾液アミラーゼは、食べ物に含まれるでんぷんを分解し、胃で消化されやすい状態にする>

 2月上旬。都内の私立中で1年生に理科を教える男性教諭(34)は、授業で出した課題の解答をチェックしていて違和感を抱いた。

 出した課題は「唾液アミラーゼの働き」を調べること。「でんぷんは胃では消化されない。なぜこんな解答になったのだろう」と疑問に思った。

 最初にチェックしたクラスで、多くの生徒がほぼ同じ文言で解答。気になって調べたところ、6クラスで計約250人いる1年生のうち、半数超が同じように間違っていたことが分かった。

生成AI

 男性教諭が試しに、インターネットで「唾液アミラーゼの働き」と検索すると、原因はすぐに判明した。検索サイトに搭載された生成AIが生徒の解答と同じ文言を生成し、表示していたからだ。

 生徒たちに検索サイトの生成AIを使って書いたか尋ねたところ、各クラスで6~7割の生徒が手を挙げた。ネットの利用は許可していたが、多くの生徒が、生成AIの回答について正確性を確かめずにそのまま書き写し、提出していた。

 男性教諭は、教科書や参考書を確認しながら、でんぷんは口と十二指腸で分解されることを説明すると、生徒たちは「胃では消化されないんだ」と納得した様子だったという。

誤解招く

 男性教諭は、生成AIがどの情報に基づいて回答を生成したのかも調べた。

 出典として挙げられていたのは「キユーピー」のHPだった。「一人何役?唾液の働き」と題した特集ページに、「唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)が、食べ物に含まれるでんぷんを分解し、胃で消化されやすい状態にします」との記載があった。

 男性教諭は2月18日、自身のX(旧ツイッター)で、キユーピーに宛てて投稿し、「もし修正できるならお願いしたく思います」と記した。

 キユーピーは翌19日に事態を把握。同社の研究所も含めて担当部署で検討した結果、でんぷんの消化について誤解を招きかねない表現だったと判断した。

 同28日、HPの記載から「胃で」を削除し、「唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)が、食べ物に含まれるでんぷんを分解し、消化されやすい状態にします」と修正した。また、胃で吸収されることを表現したイラストにも変更を加えた。

 同社によると、HPの当初の記述は2018年9月からあったといい、同社は「外部に発信している以上、誤解のないように注意していきたい」としている。

妄信は危険

 <ちゃんと生成された内容の正誤チェックや文章校正が出来ない限り使うべきではない><AIにまず回答作らせて教科書で調べて修正すると定着率の高い勉強法になると思う>

 男性教諭の投稿は、360万回以上閲覧され、中には、そんなコメントも書き込まれた。

 男性教諭は「結果的に唾液アミラーゼの働きについて学習の理解が深まった。生成AIは間違った回答を示すこともあり、生徒たちにとっては自分で調べることの大切さを知る良い機会になった」と話す。

 医学博士で江田クリニック院長の江田 あかし 氏(消化器内科)は「でんぷんは胃では消化されず、キユーピーHPの記載は医学的に言えば誤りで、誤解を生じさせる。同社が迅速に修正したのは評価できる」と指摘。「生命や健康に関わる医学的な情報についてAIを妄信することは、現時点では非常に危険。情報の正確性について、ほかの文献に当たるなどの『裏取り』が必要だ」としている。

2024.03.05 15:58:10

体を動かす時間は成人60分・高齢者40分が目安…厚労省がガイド作成、座りっぱなし防止には30分ごとに動く

 厚生労働省は、日常生活で推奨される身体活動や運動の目安などをまとめたガイドを作成した。歩行と同程度の活動を成人は1日60分以上、高齢者は1日40分以上行うことを勧めた。週2~3回は筋力トレーニングを取り入れ、長時間の座りっぱなしを避けるように呼びかけた。

 厚労省が作成したのは「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」。2013年以来、10年ぶりの改訂で、こども(18歳未満)、成人、高齢者に分け、学術論文などを基にまとめた。24年度以降、自治体の健康づくり施策などに活用してもらう。

 成人では、家事などを含めた身体活動を1日60分以上、ウォーキングに換算すると1日約8000歩以上を推奨する。このうち筋トレなど「息が弾み汗をかく程度」の運動を週60分以上行う。

 高齢者の場合、身体活動は1日40分以上で、ウォーキングで1日約6000歩以上に相当する。達成できなくても、今より10分でも多く体を動かすことを心がける。体力が十分にあれば、成人と同等レベルで行うことを目標にする。

 筋トレは、腕立て伏せやスクワットでもいい。筋肉は年齢に関係なく鍛えられ、糖尿病などの発症リスクが低くなるほか、高齢者では筋力や骨密度が改善し転倒や骨折のリスクが低減するとされる。

 座りっぱなしの弊害についても指摘した。時間が長くなるほど、死亡リスクが高まるとの研究結果を踏まえ、30分ごとに体を動かすことが望ましい。

 こどもについては、1日60分以上の活動をし、ゲームやスマホの利用は減らすことを勧めている。

2024.03.04 12:41:38

大学病院の宿直医、担当外も担当「判断ミスしないかびくびく」…医師派遣撤退で地域医療にしわ寄せも

[2024年の医師 働き方改革]<4>

 「宿直に入るたび、判断ミスをしないかびくびくしている」。大阪府内の大学病院に勤務する30歳代の男性医師は「働き方改革」を前にした心境を打ち明ける。

 勤務先では、改革を見据え、「合同宿直」の試行が始まった。これまでは診療科ごとに医師が宿直し、急患や入院患者に対応していた。残業時間を削減するため、1日に宿直する医師数を減らし、担当外の診療科の患者も診るようになる。

 大学病院は、一般病院で対応が難しい患者を引き受ける。専門外の患者を診ることに一部の医師から不安の声が上がる。

 病院側は取材に「医師の確保は将来的により困難になり、従来の体制を維持することは難しい」と説明。合同宿直を本格導入しても、脳外科や産科など緊急性の高い診療科は従来の宿直体制を維持するとし、幹部は「現場の不安を吸い上げ、患者の理解も得ながら適切な体制を模索していきたい」と話した。

        ◇

 4月からの働き方改革で、勤務医の残業時間は原則年960時間が上限となる。単純に労働時間を減らせば、これまで通りの医療サービスを提供することは困難だ。

 日本医師会が昨秋、全国の病院に実施した調査では、回答した約3000病院の34・6%が、改革による地域医療への懸念として「救急医療の縮小・撤退」を挙げた。「専門的な医療提供の縮小・撤退」を懸念する声も21・7%に上った。

 病院の多くが医師の派遣を受ける大学病院も残業削減に迫られている。調査では、派遣引き揚げを懸念する声も30%あり、実際、各地で起きている。

 岩手県沿岸部にある県立久慈病院は昨年4月、脳出血の疑いがある救急患者の受け入れを停止した。岩手医科大病院から派遣されていた常勤医師2人のうち1人が退職し、補充がかなわず、対応できなくなったためだ。患者は約50キロ離れた青森県の病院に搬送する。

 遠野千尋院長(57)は「地方の病院では、派遣を受けられなくなると、たちまち医療提供体制に影響が出てしまう」と打ち明ける。

 特に影響が大きいのが産科だ。出産はいつ起きるかわからないため、長時間労働になりやすく、なり手不足が慢性化している。

 新潟県糸魚川市の糸魚川総合病院は、富山大病院から派遣を受けられなくなり、昨年4月、 分娩ぶんべん を休止した。11月、県外から60歳代の男性医師を確保し、再開にこぎ着けたが、山岸文範院長(65)は「来てくれたのは奇跡で、次はない。今後は地域の病院が連携し、役割分担していかざるを得ない」と話した。

        ◇

 入院が必要な2次救急患者を受け入れる大阪府東大阪市の市立東大阪医療センター。1月中旬の夜、救急外来には次々と患者が運ばれていた。

 大半の診療科で「宿日直許可」を取っておらず、救急外来の宿直中はすべて残業時間となる。残業時間を抑えるために宿直明けは帰宅するルールで、非常勤の医師を雇って宿直体制を維持しているのが実情だ。

 医師の紹介会社に依頼して非常勤の医師を募集しているが、救急医は特に需要が高く、病院間の争奪戦になっており、確保は容易ではない。

 宮尾清貴・総務課長は「限られた医師の中でどう残業を削減するのか。日本中の病院がジレンマを抱えている」と漏らした。

2024.03.04 12:20:26

緊急避妊薬、処方箋なしの試験販売を継続へ…販売薬局増も検討

 厚生労働省は、望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬(アフターピル)を医師の処方箋なしで薬局で試験販売する調査研究を、来年度も継続する。近くまとまる今年度の調査結果を踏まえ、販売薬局を増やすかや購入希望者への情報提供の内容を見直すかなどを検討する。

 この薬は、性暴力にあったり、避妊に失敗したりした女性が使う。性行為から72時間以内の服用で妊娠を約8割防げる。世界約90か国・地域では医師の処方箋なしで薬局で購入できる。国内でも市販化を求める声の高まりを受け、厚労省が、有識者検討会などで市販化の議論を進めてきた。

 調査研究は、厚労省の委託を受けた日本薬剤師会が昨年11月、全国145か所の調剤薬局で始めた。購入できるのは16歳以上の女性で、16歳、17歳は保護者の同伴が必要となる。同会は、購入した女性へのアンケート調査などを実施し、薬剤師の説明だけで安全に服用できるかを確かめる。

 厚労省は、今年度のデータのみでは、薬剤師だけで適正に販売できるかの検証が難しいと判断した。来年度の研究も、同会を中心に進める方針だ。

 市民団体「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」共同代表の染矢明日香さんは、「今の仕組みでは、販売する薬局が限られているため、必要な時に入手するのが難しい。厚労省は漫然と研究を続けるのではなく、早期の市販化を目指してほしい」と注文している。

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