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2024.07.12 12:01:50

iPS細胞使いチップ内に小腸の壁再現…3層構造になった絨毛、病気の研究など視野に

 3種類の層でできた小腸の壁の組織を、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使ってチップの中で再現することに成功したと、京都大iPS細胞研究所などのチームが発表した。小腸の病気の研究などに役立つといい、論文が12日、国際科学誌に掲載される。

 小腸の内壁は粘液層、上皮層、間質層の3層構造になった 絨毛じゅうもう で覆われている。これまでも小腸の一部を模した「ミニ臓器」は作られていたが、上皮層の再現にとどまっていた。

 同研究所の高山和雄講師(幹細胞生物学)らは、血管から染み出た水分の緩やかな流れ(間質流)に注目した。幅1ミリ、高さ0・6ミリ、長さ10ミリの管の中を、微小な穴が多数あいた膜で上下2段に仕切ったシリコーン製のチップを作製。上段にiPS細胞などから作った小腸のもとになる細胞を置き、下段には培養液を流し、上段へ染み出すようにして約20日間、培養した。

 すると細胞は小腸の絨毛と似た複雑な形の組織を作り、3層構造ができている様子が観察された。培養液の流れを止めると、こうした構造はできなかった。

 高山講師は「小腸の粘膜を障害して下痢を引き起こすノロウイルスやクローン病などの研究に活用できるのではないか」と話す。

  酒井康行・東京大教授(生物工学)の話 「間質流を使って細胞が三次元的に組織化する能力を引き出しており、面白い成果だ。小腸粘膜に炎症を起こす病気の研究に使うには、免疫細胞を組み入れるなどの工夫が必要だろう」

2024.07.10 12:37:26

男性から女性への戸籍上の性別変更、手術なしでも認める高裁決定…申立人「願いがやっとかなった」

 性器の外観を変える手術をせず、戸籍の変更に必要な性同一性障害特例法の要件のうち「変更後の性別と近い性器の外観を持つ」(外観要件)とする規定を満たさないとされた当事者が、戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう求めた家事審判で、広島高裁は10日、性別の変更を認める決定をした。

 最高裁大法廷は昨年10月、性同一性障害特例法で生殖能力をなくす手術を事実上の要件とする規定について、「手術を受けるか性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫るもので、制約の程度は重大だ」とし、違憲とする決定を出した。その上で、外観要件については「2審で判断されていない」とし、審理を高裁に差し戻していた。

 代理人弁護士によると、申立人は西日本在住で50歳未満の社会人。2009年に性同一性障害の診断を受け、戸籍上は男性で、女性として社会生活を送っている。性別適合手術は受けていない。

 高裁は決定で、外観要件について「手術が必要ならば体を傷つけられない自由を放棄して手術を受けるか、性自認に従った法令上の扱いを受けることを放棄するかの二者択一を迫るような制約を課し、憲法違反の疑いがあると言わざるを得ない」と言及。「手術が行われた場合に限らず、他者の目に触れた時に特段の疑問を感じないような状態で足りると解釈するのが相当」として、手術なしでも外観要件は満たされるという考えを示した。

 その上で、ホルモン療法を継続的に受けることによって生物学的な性別がいずれであっても、外性器の形状に変化が生じることは医学的に確認されていると指摘。申立人は継続的に医師の診断に基づくホルモン療法を受けており、別の医師による診断でも、身体の各部の女性化が認められているとし、性別変更を認めた。

 申立人は決定後、代理人弁護士を通じ「物心ついた時からの願いがやっとかなった。ギャップによる生きにくさから解放されることを大変うれしく思う」とコメントを発表した。

2024.07.09 13:00:28

鳥インフルH5N1、人への感染性高まった可能性…アメリカでは牛を介し感染例も

 米国で飼育される牛の間で感染が広がる高病原性鳥インフルエンザウイルスのH5N1について、従来と比べて人への感染性が高い可能性があるとする分析結果を、東京大などの国際研究チームが明らかにした。

 哺乳類の間での弱い 飛沫(ひまつ) 感染も確認されており、チームは「人でも感染が広がらないよう、封じ込めを急ぐ必要がある」としている。論文が8日付けの科学誌ネイチャーに掲載される。

 米国では今年3月以降、牛の感染が少なくとも12の州で確認された。牛から人に感染し、目の充血などの症状が出たことが数例報告されている。

 東京大など日米のチームが感染した牛のウイルスを分析すると、人の喉や鼻に多い分子に結合する性質があり、この分子を介して人でも感染する可能性が示された。従来のH5N1は、この分子に結合する能力が低かったという。

 またウイルスを感染させた哺乳類のフェレットの4匹中1匹で飛沫感染したことが血液検査で判明した。チームの国立国際医療研究センター研究所国際ウイルス感染症研究センター長、河岡義裕・東大特任教授(ウイルス学)は「ウイルスが変化し感染性が高まっている可能性がある。病原性の変化も注視することが必要だ」と話す。

  北海道大学の迫田義博教授(ウイルス学)の話 「飛沫感染したフェレットのウイルス量は非常に少なく、すぐにパンデミック(世界的大流行)につながるとは言えないが、注意は必要だ。検出の時期や場所が違うウイルスを調べ、データを蓄積することを急ぐべきだ」

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