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2024.06.19 12:09:03

移植待機者数や術後生存率、年度内にも病院別に公開へ…患者の特定施設への集中緩和に期待

 脳死者から提供された臓器を移植する医療体制が 逼迫(ひっぱく) する中、厚生労働省は18日、移植を待つ患者数や移植後の生存率などを移植施設ごとに公開する方針を表明した。臓器あっせん機関の日本臓器移植ネットワーク(JOT)などが構築を進めるデータベースを活用し、今年度中の公開を目指す。手術実績の多い移植施設に待機患者が集中する事態の緩和が期待される。

 移植を希望する患者は現在、手術を受ける移植施設を原則1か所選ぶ。施設ごとの詳細なデータは公開されておらず、主治医の意見や移植手術の実績などを参考に決めるしかなかった。

 脳死下の臓器提供件数の増加に伴い、東京大など有数の移植手術実績を持つ施設では待機患者が集中する一方、人員や病床の不足から、提供された臓器の受け入れを断念する事例が相次いでいる。施設別のデータが公開されることが、断念問題の解消につながる可能性がある。

 今回の方針は、同日の参院厚労委員会で、大坪寛子健康・生活衛生局長が、日本維新の会の梅村聡参院議員の質問に対して答えた。

 厚労省が公開にあたって活用するのは、JOTが国の補助金を受けて日本移植学会とともに構築中のデータベース「 TRACER(トレーサー) 」。国内で行われる臓器移植に関する情報を一元化する。

 公開はこのデータベースを基に、施設ごとに〈1〉臓器別の待機患者数〈2〉登録から移植までの平均待機期間〈3〉移植後の生存率の3項目を示すことを想定している。データベースは今年度中にも運用が始まる見通しで、大坪氏は「国民から信頼される移植医療の推進のために、施設ごとのデータ公表が重要だ」と答弁した。

 JOTは、今後公開を検討する3項目について、臓器ごとにまとめた数のみを公表してきた。待機患者数は5月時点で、腎臓1万4194人、心臓842人、肺615人の順に多く、6臓器全体で1万6000人超にのぼっている。

 データベースの構築に携わる日本移植学会前理事長の江川裕人・浜松ろうさい病院長は「移植施設別の(生存率などの)治療成績に大きな違いはないとみられる。各施設のデータが公開されることで、待機患者の一部の施設への偏りを解消することが期待できる。JOT、厚労省、学会が緊密に連携して進めていきたい」と話す。

 また、厚労省は、この日の厚労委で、待機患者が、手術を受ける移植施設を複数登録できる仕組みを検討する方針も明らかにした。

2024.06.19 07:09:00

「日本版DBS」法成立、性犯罪歴を最長20年確認可能に…2026年度をめどに施行

 子どもと接する職場で働く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」創設を盛り込んだ「こども性暴力防止法」は19日、参院本会議で可決、成立した。性犯罪歴の有無を刑の終了から最長20年確認することが可能となり、就労を制限できるようになる。2026年度をめどに施行される。

 日本版DBS制度は、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴について、事業者がこども家庭庁を通じて法務省に照会できる仕組み。現職者も照会の対象となり、犯歴が確認された場合、事業者は配置転換などを講じなければならず、解雇も許容される。

 同法では、行政に監督・認可などの権限がある学校や保育所などに対して、性犯罪歴の確認を義務づける。一方、学習塾や放課後児童クラブなどは日本版DBS制度の参加を任意とし、希望して国から認定されれば確認の義務を負う。

 対象となる性犯罪は、不同意わいせつ罪などの刑法犯のほか、痴漢や盗撮といった自治体の条例違反も含まれる。照会期間は拘禁刑(懲役と禁錮両刑を2025年に一元化)が刑を終えてから20年、罰金刑以下は10年とした。

 性犯罪歴がない人でも、子どもや保護者からの訴えから、性加害の「おそれ」があると認められれば、配置転換などの措置を講じなければならない。「おそれ」の判断が 恣意しい 的に行われる可能性があることから、こども家庭庁は今後ガイドラインを作成し、判断の基準を示すこととしている。

2024.06.18 15:37:35

【独自】脳死疑い患者は年1万人、実際の「判定」は132人どまり…臓器提供者増やせる可能性

厚労省が初推計

 脳卒中や不慮の事故などが招く脳死の可能性がある患者が、2023年の1年間に、国内で少なくとも約1万人にのぼったとする初の推計結果を、厚生労働省の研究班がまとめた。同年、臓器提供のために脳死と判定されたのは132人にとどまっている。研究班は、医師らが家族に臓器提供の選択肢を示すことが増えれば、提供者(ドナー)を相当数増やせる可能性があるとしている。

 研究班は日本医大(東京)などの医師らで構成、脳死判定を行える大学病院や救急病院など895か所に昨年8月、調査を実施した。

 調査では、同月3日からの1週間に〈1〉意識不明で瞳孔が開いている〈2〉適切な治療をしても病状の回復が見られない――など脳死の可能性を示す4項目を満たす患者数を尋ねた。有効回答があった601か所(67%)では計184人いた。

 この結果を踏まえ、回答施設だけでも脳死の可能性がある患者は年間9568人いると推計した。

 脳死判定は、臓器移植法に基づき行われる。患者の家族の承諾が必要だが、医師が家族に臓器提供の選択肢を示すことは少ない。

 背景には、救命に尽くしている医療者は時間的な余裕がないほか、回復が難しい事実の告知に心理的な抵抗を感じることがある。法的脳死判定の前に必要な検査をしても、医療機関に追加の診療報酬が支払われないことも指摘されている。

 脳死ドナーになるには、臓器に問題がない、がんや感染症でないなどの医学的条件もある。年齢も、肺や腎臓は70歳以下など臓器ごとの目安がある。研究班代表の横堀将司・日本医大教授(救急医学)は「今回推計された脳死の可能性がある人がみなドナーになれるわけではないが、取り組み次第で、脳死下の臓器提供件数を増やし、より多くの命を救える可能性が示された」と話している。

 脳死ドナーからの臓器提供を巡っては、東京大など移植手術の実績が上位にある病院で、人員や病床の不足などから、提供された臓器の受け入れを断念する事例が問題になっている。横堀教授は「脳死判定までの様々なハードルを下げる対策と合わせ、移植医療の 逼迫ひっぱく を防ぐ体制作りが必要だ」と指摘した。

  ◆脳死 =脳全体の機能が失われ、治療で回復する可能性がない状態。脳卒中や、交通事故による頭部損傷などが原因となり、多くは数日以内に心停止に至る。1997年10月に臓器移植法が施行され、脳死となった人からの心臓、肺、肝臓、腎臓、 膵臓すいぞう 、小腸、眼球の提供が認められた。

2024.06.18 09:00:00

はがきが主の「ねんきん定期便」今年度中にデジタル化へ、マイナポータルで自動送付

 厚生労働省は、定期的に年金の保険料納付額や受給見込み額を知らせる「ねんきん定期便」を今年度中にデジタル化する方針を固めた。現在は主にはがきで誕生月に郵送しているが、マイナンバーカードの専用サイト「マイナポータル」で自動的に届くようにする。

 今月改定する「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に盛り込む予定で、日本年金機構が定期便の情報をマイナポータルに送信するシステムを開発する。

 現在もマイナポータルにアクセスすることで、パソコンやスマートフォンなどから情報を確認することができるが、今後はアクセスしなくても自動的に配信されるようになる。はがきによる通知も継続するが、希望すればマイナポータルのみにすることもできる。

 年金制度を巡っては、将来受け取れる年金額を実感しにくいことが信頼性を高める上での課題となっていた。同省は2022年には年収に応じて年金額を予測する「公的年金シミュレーター」を開始しており、積極的な情報発信を通して若者らが将来像をイメージしやすくすることで制度の理解につなげる狙いがある。

2024.06.17 18:36:42

認知症の早期発見へ、1万人の行動分析…新薬「レカネマブ」登場で重要性高まる

 認知症のリスクを早期に見つけ、医療機関につなげる効果的な方法を探す実証研究を、厚生労働省が今月にも本格的に始める。全国36自治体で約1万人に認知症の「スクリーニング検査」の受検を呼びかけ、その後の行動を調べることで、何が医療機関への受診の障害となっているかを把握する。昨年12月に治療が始まったアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」の投与対象は早期患者に限られており、早期発見の重要性が高まっている。

 実証研究は、国立長寿医療研究センター(愛知県)が主導する厚労省の研究班が行う。札幌市や川崎市、愛知県半田市、兵庫県たつの市などの参加自治体は、主に60歳以上の住民に、日付や今いる場所を質問したり、簡単な計算をさせたりする無料の検査を受けるよう、広報紙やポスターなどで呼びかける。

 検査は、検診会場や自宅で、スマートフォンを使うなどして受ける。認知症や、前段階の軽度認知障害(MCI)の疑いがある人には、医療機関の受診を促す。

 チームは各自治体で検査を受けた人数のほか、〈1〉治療を受けた〈2〉ケアなど必要な支援に結びついた〈3〉受診しなかった――などのケースについて人数やその理由を分析する。患者や家族からの聞き取りも踏まえて、医療機関での受診や相談、予防にむけた活動を妨げている要因を見極める。

 受診率などが良かった自治体の仕組みを参考に、効果的な方法をまとめた手引を2024年度中に作成。25年度以降は、各地での取り組みに活用してもらう。

 東北大と同センターは、7種類の認知機能検査と血液検査を約1000人に受けてもらい、早期診断に効果的な手法を調べる実証研究も行う。検査には、医師らと対面で行う、スマホのアプリで行う、目の動きで認知機能をはかる機器を使う――など様々なタイプがある。すべて受けてもらい、どういった手法が効果的なのか検討する。

 厚労省は、実証研究の費用として、23年度補正予算に5億円を計上している。

 九州大などの研究チームは5月、25年の国内の認知症高齢者は471万人、MCIは564万人になるとする推計結果を公表した。40年には合わせて約1200万人に増加する見込みだが、現状では認知症の指摘を受けても医療機関につながらないケースも多く課題になっていた。

 国立長寿医療研究センターの桜井孝・研究所長は「研究を通じて、誰もが地域で検査を受けて、疑いがある場合は早期に適切な医療やケアにつなげられる社会システムを作ることを目指したい」と話している。

2024.06.17 02:33:00

東京女子医大、教員人事で同窓会組織への寄付額を考慮…卒業生に「評価に影響」と要求

文科省が報告求める

 東京女子医科大(東京都新宿区)が、医学部卒業生の教員への採用、内部昇格にあたり、同窓会組織「至誠会」への寄付額を考慮していたことがわかった。寄付の実績が「評価に影響する」と通知しており、昨年までの5年間で約40人が申請前後に寄付をしていた。役職を金で買うような仕組みがルール化されていたといえ、文部科学省は同大に対し、内部調査を行って詳細を報告するよう求めている。

 東京女子医大によると、同大理事会は2018年5月、卒業生が教授や准教授、講師、准講師の役職への就職や昇格を志願する際、至誠会が個々の卒業生に発行する「活動状況報告書」を評価対象とすることを新たに決定した。

 具体的な手続きは翌6月、医学部学務課名で学内に通知され、留意事項には「寄付などの状況を かんが み、活動が認められない場合は評価に影響します」と記されていた。

 20年に発行されたある卒業生の報告書では、過去5年間の至誠会への寄付額や同会主催の研修会などへの出席状況が記載されていた。行事出席は1回0・5点、寄付は10万円あたり0・5点とポイントに換算され、総点数で「非常に良い」(9点以上)から「非常に悪い」(1点以下)の5段階で評価が行われていた。

 関係者によると、点数が低い卒業生には、至誠会理事を兼務する大学理事らが「ポイントが足りない」と連絡し、寄付を求めていた。一方、就職や昇格に必要な点数や、評価の各段階の点数は示していなかった。

 読売新聞が内部資料を分析したところ、至誠会には18年6月以降、昨年3月までに少なくとも延べ70人が報告書の発行を申請。同55人が同会に寄付しており、うち41人は申請前後に10万~80万円を入金していた。

 同大は取材に「公益性のある活動をしている至誠会への寄付を社会貢献活動の一つとして積極的に判断してきた」とし、「寄付を強いる行為があったとの報告や通報も確認されていない」と回答した。

 至誠会は昨年4月、代表理事を同大の岩本絹子理事長が兼務するのは不適格だとして、岩本氏を解任。同大は同10月、昇格などに至誠会への寄付金などを考慮する制度を撤廃した。

 同大を巡っては、至誠会元職員が勤務実態がないのに不正に給与を得た疑いで、警視庁が今年3月、関係先として大学本部などを一般社団法人法の特別背任容疑で捜索している。

 文部科学省の幹部は、「教員の選考は社会に理解を得られる形で、適正、公正な手続きで行われなければならない」としている。

  ◆至誠会 =私立の東京女子医科大医学部の卒業生や学生が加盟する一般社団法人。病院や看護専門学校を運営し、女性研究者への助成事業も行う。今年3月時点の正会員(卒業生)は約4600人。

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