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2024.05.08 14:38:17

認知症の高齢者2040年に584万人、7人に1人…九州大などの研究チーム推計

 全国の認知症高齢者数は、65歳以上の人口がほぼピークを迎える2040年に584万人になるとの推計結果を、九州大などの研究チームが8日発表した。高齢者のおよそ7人に1人の割合だ。認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の高齢者数も40年に612万人になると推計した。軽度認知障害の高齢者の将来推計は初めて。

 推計では22年の認知症高齢者は443万人で、25年に471万人になるとした。厚生労働省はこれまで、別の推計を基に25年に約700万人に上ると見込んでいたが、大幅に下回った格好だ。

 研究は22~23年度、福岡県久山町や島根県海士町など全国4地域で行った。65歳以上の住民を対象に専門医が診断するなどして、各年齢層で認知症高齢者の割合(有病率)を算出した。

 その結果、有病率は年齢層が上がるほど高くなり、22年の65歳以上の有病率は12・3%だった。高齢化に伴い、認知症高齢者は50年に586万人、60年には645万人に増えると推計した。

 軽度認知障害については、22年の有病率を15・5%と算出し、558万人と推計。25年に564万人、60年に632万人になるとした。

 別の研究チームが13年に公表した認知症の有病率は15%だった。有病率が低下した背景について、研究チーム代表の二宮利治・九州大教授(疫学)は「喫煙率の低下や、高血圧、糖尿病など生活習慣病管理の改善などによって、認知機能低下の進行が抑制された可能性がある」と分析した。

 政府は今年1月施行の認知症基本法に基づき、総合的な施策を推進する基本計画を今秋までに策定する方針だ。認知症の人が自立して暮らせる地域作りを急ぐ。

 ◆ 認知症 =記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態。アルツハイマー病や、脳 梗塞こうそく などが原因の「脳血管性」など様々なタイプがある。軽度認知障害は生活に支障が出ていない状態で、認知症に進むケースと、正常に戻るケースがある。

2024.05.07 10:37:40

rTMS療法、子どもへの実施は「適切でない」…発達障害へは「非倫理的で危険」

 18歳以上のうつ病患者を対象に公的医療保険が適用されている「反復経頭蓋磁気刺激療法」(rTMS療法)について、日本児童青年精神医学会は「18歳未満の子どもへの有効性と安全性は十分には認められていない。実施は適切ではない」などとする声明を出した。一部の医療機関が「発達障害に有効」として、子どもを対象に自費診療で行っていることについて、「非倫理的で危険性を伴う」としている。

 rTMS療法は、専用の機器を使って、頭の外側から脳の神経細胞を磁気で刺激し、うつ病の症状緩和を狙う。保険の対象は、抗うつ薬では十分な効果を得られない18歳以上のうつ病患者で、別の専門学会の使用指針では18歳未満には行うべきではないとしている。

 声明では、この療法は重い副作用として、けいれん発作が表れることがあると指摘。発達障害や精神疾患がある18歳未満の子どもを対象にした海外の臨床試験を精査した結果、有効性と安全性は十分には認められないと判断した。

 日本児童青年精神医学会の岡田俊代表理事は「rTMS療法の自費診療を行う医療機関の多くは、副作用に対応できない懸念がある。子どもへの有効性や安全性を臨床試験で十分に検証してから行うべきだ」と話している。

2024.05.01 19:26:01

肝臓で新たな免疫細胞を発見…腸内細菌を撃退しても炎症抑える働き、慢性肝炎の予防や治療法へ期待

 腸とつながる肝臓の血管付近には、腸から侵入する腸内細菌を撃退しつつ肝臓の炎症を抑える特殊な免疫細胞が存在することがわかったと、大阪大の石井優教授、宮本佑特任研究員らのチームが発表した。慢性肝炎の予防や新しい治療法の開発につながる可能性があるといい、科学誌ネイチャーに論文が掲載された。

 食物から腸で吸収された栄養分は、門脈という血管を通って肝臓に届く。腸が傷つくと門脈から腸内細菌などが侵入し、肝臓に炎症を起こすことがある。チームはマウスの肝臓で、免疫細胞の動きを詳細に観察できる独自技術を駆使し、門脈付近では炎症が起きにくいことを発見した。

 通常、体内に侵入した細菌を免疫細胞が攻撃すると炎症が起きるが、この場所にいるマクロファージという免疫細胞の中に、逆に炎症を抑える物質を活発に出すものがあることが判明。細菌を撃退し、炎症も抑えることで、肝臓のダメージを防いでいるとみられる。

 脂質が蓄積して起きる肝炎(MASH)や、肝移植が必要な場合もある難病・原発性硬化性胆管炎(PSC)の患者では、この免疫細胞が非常に少なかった。

 チームは、この細胞が不足するとMASHやPSCの発症につながるのではと推測。この細胞は腸内細菌が作る物質によって増えることもわかり、数を制御できれば、有効な治療法のない肝疾患を予防できる可能性があるとしている。

 肝疾患に詳しい熊本大の田中靖人教授(消化器内科学)の話「原因がわかっていない肝疾患の発症メカニズムの一部を説明しうる成果。腸内細菌との関連も興味深く、新しい治療法につながることを期待したい」

2024.05.01 19:12:29

新生児の先天性疾患検査、難病追加を13府県8政令市で先行実施…専門家「いち早く全国で公費化を」

 新生児の先天性の病気を早期発見する検査に、二つの難病を加えるこども家庭庁の実証事業が始まり、大阪府や埼玉県など13府県と、千葉市や名古屋市など8政令市が参加することがわかった。同庁が費用を補助し、全国一律での実施を目指して検査や治療体制を整え、課題を洗い出す。専門家は「命を救える検査に地域差がでないよう、公費検査を広げていくべきだ」としている。

 検査は、かかとから少量の血液を採取して分析する「新生児マススクリーニング検査」で、国は現在、都道府県や政令市に20種類の病気について公費で行うことを求めている。

 実証事業で加わるのは、細菌やウイルス感染への抵抗力が極度に低い「重症複合免疫不全症(SCID)」と、全身の筋力が低下する「脊髄性筋 萎縮いしゅく 症(SMA)」の検査。数万人に1人の割合で生まれ、治療しなければ命にかかわる。早期発見できた場合、SCIDは造血幹細胞移植、SMAは遺伝子治療薬による治療などが可能で、子どもは健康に成長できる可能性が高い。

 二つの難病の検査は、大学病院などを中心に行われてきた地域もあるが、数千円の自己負担が必要になるため希望しない親もいた。地域内でも検査ができない医療機関もあったため、学会や患者家族会が全国一律の実施を求めていた。

 実証事業に参加する21自治体では検査は公費で行うため、原則として自己負担はない。自治体は、血液から特定の遺伝子を分析する検査機関や、専門的な治療を行う病院を確保する必要がある。両親への丁寧な説明や、遺伝カウンセリングを行う体制も整える。

 同庁は2023年度の補正予算に10億円の事業費を計上し、参加自治体を募っていた。24年度も新たな募集を行う。

 この検査に詳しい防衛医科大学校の今井耕輔教授(小児科)は、「二つの難病の検査をしている医療機関では、早期発見による治療で救命できた実績がある。すべての新生児が公平に検査を受けられるよう、いち早く全国で公費化するべきだ」と話している。

2024.04.30 18:46:32

タミフルやガスターなど1095品目、患者の自己負担額引き上げへ…後発薬の使用を促進

 ジェネリック医薬品(後発薬)がある特許切れの先発薬について、厚生労働省は今年10月から、患者の自己負担額を引き上げる1095品目のリストを公表した。インフルエンザ治療薬「タミフル」や保湿剤「ヒルドイド」などが含まれている。安価な後発薬の使用を促し、医療費を抑制する狙いだ。

 後発薬は先発薬(新薬)の特許が切れた後、同じ有効成分で作られる。今回、引き上げ対象となるのは後発薬の発売から5年以上が経過したか、後発薬の使用割合が50%以上となった先発薬だ。

 リストには抗アレルギー薬「アレグラ」、止血薬「トランサミン」、胃腸薬「ガスター」、認知症治療薬「アリセプト」なども入っており、最も薬価が高いのは、抗がん剤「アリムタ」の注射用500ミリ・グラム(9万7951円)となっている。ヒルドイドはアトピー性皮膚炎などの治療に使われるが、美容目的の使用が問題視されたことがある。

 自己負担額は例えば、タミフルは1カプセル(75ミリ・グラム)の薬価が約206円で、後発薬の最高価格が約112円のため、3割負担の人だと、現在の約62円から約81円に上がる。

 対象品目のリストは、厚労省のウェブサイト( https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html )に掲載されている。

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