全国の認知症高齢者数は、65歳以上の人口がほぼピークを迎える2040年に584万人になるとの推計結果を、九州大などの研究チームが8日発表した。高齢者のおよそ7人に1人の割合だ。認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の高齢者数も40年に612万人になると推計した。軽度認知障害の高齢者の将来推計は初めて。
推計では22年の認知症高齢者は443万人で、25年に471万人になるとした。厚生労働省はこれまで、別の推計を基に25年に約700万人に上ると見込んでいたが、大幅に下回った格好だ。
研究は22~23年度、福岡県久山町や島根県海士町など全国4地域で行った。65歳以上の住民を対象に専門医が診断するなどして、各年齢層で認知症高齢者の割合(有病率)を算出した。
その結果、有病率は年齢層が上がるほど高くなり、22年の65歳以上の有病率は12・3%だった。高齢化に伴い、認知症高齢者は50年に586万人、60年には645万人に増えると推計した。
軽度認知障害については、22年の有病率を15・5%と算出し、558万人と推計。25年に564万人、60年に632万人になるとした。
別の研究チームが13年に公表した認知症の有病率は15%だった。有病率が低下した背景について、研究チーム代表の二宮利治・九州大教授(疫学)は「喫煙率の低下や、高血圧、糖尿病など生活習慣病管理の改善などによって、認知機能低下の進行が抑制された可能性がある」と分析した。
政府は今年1月施行の認知症基本法に基づき、総合的な施策を推進する基本計画を今秋までに策定する方針だ。認知症の人が自立して暮らせる地域作りを急ぐ。
◆ 認知症 =記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態。アルツハイマー病や、脳 梗塞 などが原因の「脳血管性」など様々なタイプがある。軽度認知障害は生活に支障が出ていない状態で、認知症に進むケースと、正常に戻るケースがある。