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2024.05.09 14:54:37

高齢者7人に1人が認知症へ、行方不明は10年で倍増…求められる見守りや活躍の場

 2040年に、高齢者の7人に1人が認知症になるとの推計結果が、8日に開かれた政府の「認知症施策推進関係者会議」で公表された。長寿社会では、誰もが認知症になりうる。住みなれた街で安心して暮らすための取り組みがさらに求められる。

 「認知症は軽度から重度まで様々だ。誰もが住みやすい共生社会作りに尽力したい」。会議に出席した当事者団体「日本認知症本人ワーキンググループ」の藤田和子代表理事は話した。

 今年1月施行の認知症基本法は、「共生社会の実現」を目的に、国や自治体の責務を定めている。自治体が支援策を作るのに際し、認知症の人や家族の意見を聞くことを努力義務とした。

 神奈川県大和市は同法に先駆け、21年9月に「認知症1万人時代条例」を施行した。本人や家族と市民が価値観を共有し、街づくりを行うことなどを理念に掲げた。認知症への理解を深めるシンポジウムに本人が参加したり、企業の製品開発に関わったりする取り組みの支援に力を入れる。

 認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子副センター長によると、趣味や語学能力を発揮し、地域活動に参加する人もいる。「個性や能力を生かせるよう、行政が本人のしたいことをよく聞き、活躍の場を作ることが重要だ」と語る。

 認知症高齢者数の増加に伴い、行方不明になるケースも相次いでいる。警察庁のまとめによると、22年は延べ1万8709人。12年(9607人)から10年間で約2倍に上っており、地域の見守りが欠かせない。

 認知症の人と家族の会(京都市)の鎌田松代・代表理事は「同じ所を行ったり来たりして困った様子の高齢者を見かけたら、研修を受けたボランティア『認知症サポーター』を中心に、地域の人が声をかけてほしい」と話す。

2024.05.08 17:45:34

出産費用への保険適用に向け検討会設置へ…政府、妊産婦の心身支援策も議論

 政府は出産費用への公的医療保険の適用に向け、有識者らによる検討会を近く設置する方針を固めた。保険適用への課題や妊婦の支援策を議論して報告書を取りまとめ、厚生労働省やこども家庭庁による制度作りに生かしたい考えだ。

 検討会のメンバーには、産婦人科医や助産師、健康保険組合などの保険者らに加え、妊婦自身も参加する案が出ている。

 検討会では、医療措置ごとの診療報酬や保険適用の範囲、地域ごとの医療体制のあり方などについて、現場の声も聞いて協議する。妊娠中や産後にうつになる女性も多いことから、妊産婦の心身の支援策も話し合う見通しだ。

 政府は昨年12月に閣議決定した「こども未来戦略」で、2026年度をめどに正常 分娩ぶんべん の保険適用を目指す方針を明記した。

 出産費用は現在、けがや病気ではないとの理由から、帝王切開などを除いて保険適用の対象外となっており、各医療機関が独自に費用を設定している。

 政府は昨年4月、出産時に支払われる「出産育児一時金」を原則42万円から50万円に引き上げたが、費用は物価高騰の影響もあり、上昇傾向にある。病院や地域で差があり、地方より都市部の方が高い。22年度の正常分娩の出産費用は全国平均で48・2万円と、10年前と比べて約6・5万円高くなっており、一時金の超過分は自己負担を強いられている。

2024.05.08 14:38:17

認知症の高齢者2040年に584万人、7人に1人…九州大などの研究チーム推計

 全国の認知症高齢者数は、65歳以上の人口がほぼピークを迎える2040年に584万人になるとの推計結果を、九州大などの研究チームが8日発表した。高齢者のおよそ7人に1人の割合だ。認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の高齢者数も40年に612万人になると推計した。軽度認知障害の高齢者の将来推計は初めて。

 推計では22年の認知症高齢者は443万人で、25年に471万人になるとした。厚生労働省はこれまで、別の推計を基に25年に約700万人に上ると見込んでいたが、大幅に下回った格好だ。

 研究は22~23年度、福岡県久山町や島根県海士町など全国4地域で行った。65歳以上の住民を対象に専門医が診断するなどして、各年齢層で認知症高齢者の割合(有病率)を算出した。

 その結果、有病率は年齢層が上がるほど高くなり、22年の65歳以上の有病率は12・3%だった。高齢化に伴い、認知症高齢者は50年に586万人、60年には645万人に増えると推計した。

 軽度認知障害については、22年の有病率を15・5%と算出し、558万人と推計。25年に564万人、60年に632万人になるとした。

 別の研究チームが13年に公表した認知症の有病率は15%だった。有病率が低下した背景について、研究チーム代表の二宮利治・九州大教授(疫学)は「喫煙率の低下や、高血圧、糖尿病など生活習慣病管理の改善などによって、認知機能低下の進行が抑制された可能性がある」と分析した。

 政府は今年1月施行の認知症基本法に基づき、総合的な施策を推進する基本計画を今秋までに策定する方針だ。認知症の人が自立して暮らせる地域作りを急ぐ。

 ◆ 認知症 =記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態。アルツハイマー病や、脳 梗塞こうそく などが原因の「脳血管性」など様々なタイプがある。軽度認知障害は生活に支障が出ていない状態で、認知症に進むケースと、正常に戻るケースがある。

2024.05.07 10:37:40

rTMS療法、子どもへの実施は「適切でない」…発達障害へは「非倫理的で危険」

 18歳以上のうつ病患者を対象に公的医療保険が適用されている「反復経頭蓋磁気刺激療法」(rTMS療法)について、日本児童青年精神医学会は「18歳未満の子どもへの有効性と安全性は十分には認められていない。実施は適切ではない」などとする声明を出した。一部の医療機関が「発達障害に有効」として、子どもを対象に自費診療で行っていることについて、「非倫理的で危険性を伴う」としている。

 rTMS療法は、専用の機器を使って、頭の外側から脳の神経細胞を磁気で刺激し、うつ病の症状緩和を狙う。保険の対象は、抗うつ薬では十分な効果を得られない18歳以上のうつ病患者で、別の専門学会の使用指針では18歳未満には行うべきではないとしている。

 声明では、この療法は重い副作用として、けいれん発作が表れることがあると指摘。発達障害や精神疾患がある18歳未満の子どもを対象にした海外の臨床試験を精査した結果、有効性と安全性は十分には認められないと判断した。

 日本児童青年精神医学会の岡田俊代表理事は「rTMS療法の自費診療を行う医療機関の多くは、副作用に対応できない懸念がある。子どもへの有効性や安全性を臨床試験で十分に検証してから行うべきだ」と話している。

2024.05.01 19:26:01

肝臓で新たな免疫細胞を発見…腸内細菌を撃退しても炎症抑える働き、慢性肝炎の予防や治療法へ期待

 腸とつながる肝臓の血管付近には、腸から侵入する腸内細菌を撃退しつつ肝臓の炎症を抑える特殊な免疫細胞が存在することがわかったと、大阪大の石井優教授、宮本佑特任研究員らのチームが発表した。慢性肝炎の予防や新しい治療法の開発につながる可能性があるといい、科学誌ネイチャーに論文が掲載された。

 食物から腸で吸収された栄養分は、門脈という血管を通って肝臓に届く。腸が傷つくと門脈から腸内細菌などが侵入し、肝臓に炎症を起こすことがある。チームはマウスの肝臓で、免疫細胞の動きを詳細に観察できる独自技術を駆使し、門脈付近では炎症が起きにくいことを発見した。

 通常、体内に侵入した細菌を免疫細胞が攻撃すると炎症が起きるが、この場所にいるマクロファージという免疫細胞の中に、逆に炎症を抑える物質を活発に出すものがあることが判明。細菌を撃退し、炎症も抑えることで、肝臓のダメージを防いでいるとみられる。

 脂質が蓄積して起きる肝炎(MASH)や、肝移植が必要な場合もある難病・原発性硬化性胆管炎(PSC)の患者では、この免疫細胞が非常に少なかった。

 チームは、この細胞が不足するとMASHやPSCの発症につながるのではと推測。この細胞は腸内細菌が作る物質によって増えることもわかり、数を制御できれば、有効な治療法のない肝疾患を予防できる可能性があるとしている。

 肝疾患に詳しい熊本大の田中靖人教授(消化器内科学)の話「原因がわかっていない肝疾患の発症メカニズムの一部を説明しうる成果。腸内細菌との関連も興味深く、新しい治療法につながることを期待したい」

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