政府は、子どもが生まれた時に提出が必要な出生届と出生証明書について、自治体の窓口に行かなくてもスマートフォンなどから入力してオンラインで提出できる仕組みを整える。8月にも省令改正し、一部の自治体で始まる見通しだ。2026年度中に全国での導入を目指す。
出生届と出生証明書は通常、一枚の用紙となっており、出生日から14日以内に市区町村に提出しなければならない。現行でも制度上はオンラインでの提出が可能だが、その場合は出生証明書に医師の電子署名が必要となるため、実施している自治体がなかった。
政府は段階的にオンライン化を進める。まず法務省は8月にも戸籍法施行規則を改正し、医師の電子署名を不要とする。デジタル庁もマイナンバーカードの専用サイト「マイナポータル」を改修し、医療機関が作成した出生証明書をスマホなどで撮影して画像添付できるようにする。これを受け、一部の自治体が実施に踏み切る見込みだ。
26年度からは、マイナポータルと法務省の「戸籍情報連携システム」をつなげ、小規模な自治体でも実施しやすい仕組みを導入する。親はマイナポータルで出生届の入力・提出のみを行い、出生証明書は医療機関から直接自治体に電子データで送信できるようにする。導入した自治体では、手入力で情報をデータ化していた作業が不要となり、職員の負担も軽減される。
こども家庭庁が23年に実施した調査によると、妊娠や出産手続きで負担軽減を求める意見のうち、2割が出生届に関するもので、「出産直後に役所まで書類を持っていくのが大変」などの声が出ていた。
政府は昨年度から一部の自治体で、妊婦や乳幼児の健診に必要な問診票をデジタル化しており、26年度から全国展開する。保育所に入るための見学予約や入所申請なども、26年度からオンラインで簡単に手続きできるシステムを整備する。
総務省によると、マイナカードの保有率は4月末時点で73・7%。政府はマイナカードを持ち歩かなくてもいいように、スマホに機能を搭載し、スマホのみで手続きできるサービスの拡充を図っている。