自治体や民間のプールで、異性の更衣室を利用できる子どもの年齢を引き下げる動きが広がっている。公衆浴場で混浴を制限する年齢の目安が「10歳以上」から「7歳以上」に変更され、これを準用する施設が相次ぐ。夏本番が近づく中、親子連れでプールに行く際は注意が必要だ。(柏原諒輪、岩島佑希)
施設がサポート
日曜日の26日、東京都北区のレジャー型プール施設「元気ぷらざ」は、多くの人でにぎわっていた。
「息子が1人で更衣室を使うのは不安なので、少しでも滞在時間を短縮できるよう、水着を着させてきた」。小学2年の長男(7)と訪れた練馬区の自営業女性(42)は、こう話した。長男には防犯ブザーを持たせているという。
施設では2023年11月から、異性の更衣室について、利用を制限する年齢を「小学3年生以上」から「7歳以上」に変更した。ホームページで周知しているが、知らずに訪れる人もいる。
このため、利用者の求めに応じ、更衣室を1人で使う低学年の子どもには職員が付き添う。ロッカーの使い方やプールサイドへの入場方法を案内するなどのサポートもしているという。
小学1年の長女(6)と一緒に男性更衣室を利用した北区の会社員(37)は「周囲の視線が気になる時もあり、変更は理解できる。娘が7歳になったら女性更衣室を使わせたい」と語った。
発育進む
プールの更衣室の異性の利用について、年齢を制限する法律はない。公衆浴場法や国の衛生管理要領に基づき、銭湯の衛生や風紀などを定めた自治体の条例を参考にするのが一般的だ。
衛生管理要領で、混浴できない制限年齢がおおむね「10歳以上」と定められたのは00年。「子どもの発育が早くなっており、現状にそぐわない」との指摘もあり、19年12月に専門家らが混浴年齢や子どもの発育に関する調査に乗り出した。
結果をまとめた報告書では、7~12歳の男女1500人を対象にした調査で、混浴を恥ずかしいと感じ始めた年齢は6歳と7歳で約半数を占め、子どもの発育が以前より進んでいることも指摘された。
これを受け、厚生労働省は20年12月、混浴の制限年齢をおおむね「7歳以上」に変更するよう通知し、自治体は相次いで条例を改正した。一般財団法人「地方自治研究機構」によると、47都道府県や政令市など約160自治体のうち、今年4月時点で110自治体が条例で「7歳以上」と定めている。
心配の声も
この規定が、プールの異性の更衣室利用にも準用されている。青森県、埼玉県、三重県などの自治体が運営するプールは、制限年齢を「7歳以上」としている。学年で線引きする自治体もあり、札幌市や鳥取県、熊本県などは「小学1年生以上」となっている。
一方で、低学年は着替えなどで保護者のサポートが必要だとして、熊本市、姫路市の一部施設では「小学3年生以上」とする。宮城県や名古屋市などは制限を設けておらず、自治体によって対応は分かれている。
子どもが1人で更衣室を使い、トラブルや性的被害などに遭うことを心配する声は少なくない。職員が付き添う施設もあるが、7歳の息子がいる埼玉県のシングルマザーの女性(38)は「今夏もプールに行きたいが、息子は人見知りなので初対面の人のサポートは不安」とこぼす。
東京都あきる野市の「東京サマーランド」では、子どもが単独だと心配な親子や、身体が不自由な人らが利用できる個室「みんなの更衣室」を設置している。
安心して利用へ…工夫と周知必要
混浴の制限年齢引き下げのきっかけになった調査に携わった植田誠治・聖心女子大学教授(学校保健学)は「盗撮や性的被害のリスク軽減の観点から、混浴のルールをプールに準用し、異性の更衣室の利用制限年齢を7歳以上とするのは一定の妥当性がある」と理解を示す。
そのうえで、「子どもの心身の発育状況には個人差がある。不安を持つ親子が安心して利用できる多目的スペースを用意するなどの工夫が必要で、施設側の周知も大切だ」と指摘する。