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2024.05.27 16:13:04

プールの更衣室にも混浴のルール準用、異性の利用は「6歳まで」…子供の発育以前より早く

 自治体や民間のプールで、異性の更衣室を利用できる子どもの年齢を引き下げる動きが広がっている。公衆浴場で混浴を制限する年齢の目安が「10歳以上」から「7歳以上」に変更され、これを準用する施設が相次ぐ。夏本番が近づく中、親子連れでプールに行く際は注意が必要だ。(柏原諒輪、岩島佑希)

施設がサポート

 日曜日の26日、東京都北区のレジャー型プール施設「元気ぷらざ」は、多くの人でにぎわっていた。

 「息子が1人で更衣室を使うのは不安なので、少しでも滞在時間を短縮できるよう、水着を着させてきた」。小学2年の長男(7)と訪れた練馬区の自営業女性(42)は、こう話した。長男には防犯ブザーを持たせているという。

 施設では2023年11月から、異性の更衣室について、利用を制限する年齢を「小学3年生以上」から「7歳以上」に変更した。ホームページで周知しているが、知らずに訪れる人もいる。

 このため、利用者の求めに応じ、更衣室を1人で使う低学年の子どもには職員が付き添う。ロッカーの使い方やプールサイドへの入場方法を案内するなどのサポートもしているという。

 小学1年の長女(6)と一緒に男性更衣室を利用した北区の会社員(37)は「周囲の視線が気になる時もあり、変更は理解できる。娘が7歳になったら女性更衣室を使わせたい」と語った。

発育進む

 プールの更衣室の異性の利用について、年齢を制限する法律はない。公衆浴場法や国の衛生管理要領に基づき、銭湯の衛生や風紀などを定めた自治体の条例を参考にするのが一般的だ。

 衛生管理要領で、混浴できない制限年齢がおおむね「10歳以上」と定められたのは00年。「子どもの発育が早くなっており、現状にそぐわない」との指摘もあり、19年12月に専門家らが混浴年齢や子どもの発育に関する調査に乗り出した。

 結果をまとめた報告書では、7~12歳の男女1500人を対象にした調査で、混浴を恥ずかしいと感じ始めた年齢は6歳と7歳で約半数を占め、子どもの発育が以前より進んでいることも指摘された。

 これを受け、厚生労働省は20年12月、混浴の制限年齢をおおむね「7歳以上」に変更するよう通知し、自治体は相次いで条例を改正した。一般財団法人「地方自治研究機構」によると、47都道府県や政令市など約160自治体のうち、今年4月時点で110自治体が条例で「7歳以上」と定めている。

心配の声も

 この規定が、プールの異性の更衣室利用にも準用されている。青森県、埼玉県、三重県などの自治体が運営するプールは、制限年齢を「7歳以上」としている。学年で線引きする自治体もあり、札幌市や鳥取県、熊本県などは「小学1年生以上」となっている。

 一方で、低学年は着替えなどで保護者のサポートが必要だとして、熊本市、姫路市の一部施設では「小学3年生以上」とする。宮城県や名古屋市などは制限を設けておらず、自治体によって対応は分かれている。

 子どもが1人で更衣室を使い、トラブルや性的被害などに遭うことを心配する声は少なくない。職員が付き添う施設もあるが、7歳の息子がいる埼玉県のシングルマザーの女性(38)は「今夏もプールに行きたいが、息子は人見知りなので初対面の人のサポートは不安」とこぼす。

 東京都あきる野市の「東京サマーランド」では、子どもが単独だと心配な親子や、身体が不自由な人らが利用できる個室「みんなの更衣室」を設置している。

安心して利用へ…工夫と周知必要

 混浴の制限年齢引き下げのきっかけになった調査に携わった植田誠治・聖心女子大学教授(学校保健学)は「盗撮や性的被害のリスク軽減の観点から、混浴のルールをプールに準用し、異性の更衣室の利用制限年齢を7歳以上とするのは一定の妥当性がある」と理解を示す。

 そのうえで、「子どもの心身の発育状況には個人差がある。不安を持つ親子が安心して利用できる多目的スペースを用意するなどの工夫が必要で、施設側の周知も大切だ」と指摘する。

2024.05.24 15:41:53

機能性表示食品、健康被害の報告義務付け・怠れば販売停止…制度見直し案

 小林製薬の「 紅麹(べにこうじ) 」成分入りサプリメントを巡る健康被害問題で、消費者庁の有識者検討会は23日、機能性表示食品制度の見直し案をまとめた。健康被害情報の報告やサプリの品質管理体制の構築を事業者に義務づけることなどを盛り込んだ。同庁はこれらに基づいて制度改正を進める方針だ。

 機能性表示食品は安全性や機能性を示す資料を同庁に届け出れば、国の審査を受けずに事業者の責任で食品の健康効果を表示できる仕組み。小林製薬の紅麹サプリも同食品として届け出られており、問題発覚を受け、有識者検討会が制度のあり方を議論してきた。

 見直し案では、同食品の届け出事業者が、医師の診断を受けた健康被害を把握した場合、因果関係や症状の軽重にかかわらず、全ての被害情報を速やかに行政機関へ報告することを求めた。医療関係者だけでなく、消費者やその家族などから寄せられた情報も報告の対象とする。報告先は同庁や保健所を想定している。

 同庁のガイドライン(指針)でも健康被害が発生した際は「速やかに報告することが適当だ」としているが、報告するかどうかは事業者の判断に任され、義務化されていなかった。今回の問題では、小林製薬は1月半ばに健康被害を把握したが、国や自治体への報告は2か月以上後だった。

 見直し案では、サプリの製造工程について、製品の品質を一定に保つ手法である「GMP(適正製造規範)」に基づく管理の義務化も求めている。

 GMPは製品の保管や工場の点検などの方法を定めるもので、国が具体的な手順を公表している。事業者にGMPに基づく管理体制の構築を義務づけ、同庁が必要に応じて立ち入り検査する仕組みが想定されている。

 機能性表示食品は現在、届け出後のチェック体制がないため、事業者が法令の順守状況を定期的に確認し、同庁に報告した上で公表することも盛り込んだ。食品のパッケージに、国が安全性などを審査する「特定保健用食品(トクホ)」や医薬品とは異なることをわかりやすく示すことも求めた。

 同庁はこれらを義務づけるため、食品表示法に基づく内閣府令である「食品表示基準」の改正を検討する。同庁の担当者によると、健康被害情報の報告など、義務化された内容の実施を怠れば、機能性表示食品として販売することができなくなるという。

2024.05.23 18:55:10

アルツハイマー病の脳内変化、血液検査で推定する手法開発…早期診断に役立つ可能性

 認知症全体の6~7割を占めるとされる「アルツハイマー病」について、症状が出ていない人などの血液を調べることで、脳内でこの病気に特徴的な変化が起きているか高精度で推定する手法を開発したと、東京大などの研究グループが発表した。病気の早期診断に役立つ可能性がある。論文が23日、国際医学誌に掲載された。

 アルツハイマー病は、記憶障害や判断力低下などの症状が表れる10~20年前から、脳内に「アミロイド βベータ (Aβ)」や「タウ」と呼ばれる異常なたんぱく質が徐々に蓄積し、神経細胞が傷つくことで脳が 萎縮いしゅく して起きると考えられている。

 グループは、認知症の症状がない人と、認知症の前段階とされる「軽度認知障害(MCI)」相当の計474人を対象に、血液中に含まれるAβとタウの量を調べて分析することで、脳内でAβの蓄積が起きている「陽性」か、起きていない「陰性」かを推定した。その上で、医療現場で使われている、脳内の蓄積状態を確認できる「アミロイドPET」と呼ばれる画像検査で確かめたところ、血液検査は90%以上の精度で診断できていた。

 昨年12月、認知症の進行を遅らせる効果が認められた「レカネマブ」の投与が始まった。対象は、検査でアルツハイマー病の早期段階と診断された患者に限られるが、アミロイドPET検査ができる施設は少なく、脳脊髄液を採取する検査は体の負担が大きいという課題があった。血液検査は各メーカーが開発を進めており、精度向上が課題となっている。

 研究グループの岩坪威・東京大教授(神経病理学)は「アルツハイマー病治療は早期発見が重要だが、負担の大きい検査を多くの人が受けることは現実的ではない。血液検査は診断効率化に役立つ可能性がある。実用化に備えて診療体制の充実が求められる」と話している。

2024.05.22 15:26:39

こども家庭庁が「産後ケア」拡充へ…市町村への補助額の上限撤廃、産後うつなど受け入れ支援強化

 こども家庭庁は、出産後の女性を心身両面でサポートする「産後ケア」事業の拡充に乗り出す。国から各市区町村への補助額の上限を撤廃し、産後うつなどで支援が必要な母親を受け入れた施設への支援も強化する。今年度中に全ての自治体で事業を実施したい考えで、安心して子育てできる環境づくりを目指す。

 産後ケアは、0歳児のいる母親が心身を休められるよう、自治体から委託された助産院や病院が育児を手伝ったり、相談に乗ったりする事業だ。助産師による「居宅訪問型」や、母親が病院などに泊まる「宿泊型」、保健センターへの「通所型」がある。

 事業の実施は2021年施行の改正母子保健法で市区町村の努力義務となった。22年度は全国の8割にあたる1462市区町村で実施されたが、利用者は0歳児を持つ母親の10・9%にとどまった。

 こども家庭庁は、自治体に事業の実施を促すため、財政支援を手厚くする。

 23年度予算の関連事業費は約57億2000万円で、施設運営費の補助は一つの自治体に対して6施設分までしか支給されていなかった。1施設が受け取ることができる補助額は最大で、「宿泊型」が月247万4700円、「居宅訪問型」「通所型」が月169万6000円だった。

 24年度は関連事業費を約60億5000万円に増額。6施設分までという上限を撤廃した。1施設が受け取る補助額は、物価高などを反映し、最大で「宿泊型」は月251万9600円、「居宅訪問型」「通所型」は月172万7700円にそれぞれ増えた。

 また、特にサポートの必要性が高い母親の利用を増やすため、産後の健診などでうつの傾向があったり、育児への強い不安を抱えていたりする母親を受け入れた施設には、1日あたり7000円加算する。

 これらの補助金は国と自治体で半額ずつ負担する。出産後は女性ホルモンの変動で不安定な状態になりやすいとされ、同庁の22年度の調査で、10人に1人の母親に、産後うつの疑いがあった。核家族化などを背景に、親兄弟など身近な人の手を借りにくい人が増えており、政府は産後ケアの普及を進める。

 林官房長官は22日午前の記者会見で「子育て家庭の産後の心身の負担軽減を図る観点から、拡充が重要だ。取り組みを通じて全国展開を進めていく」と述べた。

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