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2024.06.04 16:47:49

川崎市医師会がLINEで医療人材マッチングサービス…紹介会社手数料に苦しむ医療機関の声受け

 全国で医療人材不足が問題となるなか、川崎市医師会は、LINE(ライン)を使って医療機関と求職者をつなぐ独自のマッチングサービスを始めた。人材紹介会社を介さず直接、医療機関と求職者を結ぶことで、高額な採用経費を削減し、採用しやすくするのが狙いだ。(松岡妙佳)

 「昨年1年間で約4500万円が人材紹介手数料に消え、赤字になった」。市内で病院を経営する医療法人の男性理事長(49)はため息をつく。新型コロナウイルスによる業務負荷の増大などにより、2022年1月~23年12月の2年間で看護師が計30人離職し、23年3月から約4か月間、病棟1棟を閉鎖せざるを得なかった。

 病院は看護師確保のため、大手就職情報会社や人材紹介会社など、過去最多の11社と契約。23年中に40人を採用したが、紹介手数料は採用する人材の年収の約2割ほどが「相場」といい、1人平均約110万円を費やした。「採用をためらえば病院の機能が維持できず、背に腹は代えられない」――。

 採用経費に悩む会員の声を受け、川崎市医師会は昨年10月、公式ウェブサイト内に医療機関の求人情報を無料掲載するページを作った。現在、市内の医療機関93件が看護師や医師などを募集している。

 さらに、4月からは市内の人材育成会社と協力してSNSで情報発信し、求人情報のページに誘導する仕組みも導入。同医師会の求人情報を発信するライン公式アカウントを作り、アカウントのリンクを開くと医療機関の連絡先や待遇がわかる求人票が表示される。

 インスタグラムのアカウントも作り、市内の医療機関で働く看護師のインタビューなどを紹介し、結婚や出産で一度離職した「潜在看護師」も発掘する。ラインの登録者を増やすため、市のイベントでPRしたり、ポスターを作ったりして周知する。

 厚生労働省が昨年公表した看護職員の1人あたりの人材紹介手数料は、全国平均で約57万円(2021年度)。ハローワークなど、無料の求人方法もあるが、求職者にとっては、人材紹介会社に登録して転職先を探すのが一般的だという。

 医療機関側にも「急いで採用したい」などの事情があり、有料の紹介会社の利用が広がっている。同省には「手数料に上限を設けるべきだ」などの声も寄せられているという。

 全国の都道府県医師会によると、SNSで会員の求人を拡散している医師会はほかになく、川崎市医師会独自の取り組みとみられる。市医師会の岡野敏明会長は「どこも人材不足と採用時の高額な費用に苦しんでいる。将来的には医師会だけでなく、看護協会や薬剤師会とも協力して仕組みづくりをしていきたい」と意気込んでいる。

2024.05.31 18:04:35

コロナ解説きっかけ、SNS中傷5000件被害の医師「萎縮すれば正しい情報伝わらない」

 新型コロナウイルス禍でワクチン接種を呼びかけた医師らが<コロナ騒動の戦犯>などとSNS上で激しい 誹謗(ひぼう) 中傷にさらされた。「 萎縮(いしゅく) すれば次のパンデミック(世界的大流行)で正確な情報の発信が妨げられる」――。医師らは、そんな思いから今も悪質な投稿者の責任を追及している。(川畑仁志、石間亜希)

情報開示を申し立て

 <ワクチンを推進した人殺しの畜生><#コロナ脳死ね><生きている価値がない>

 埼玉医科大総合医療センター(埼玉県川越市)でコロナ禍に対応した岡秀昭教授(総合診療内科)は、2020年の感染拡大以降、SNSで続く中傷に頭を悩ませてきた。

 流行が始まった直後から、X(旧ツイッター)で 逼迫ひっぱく する医療現場の実情を発信し、感染対策の必要性を訴えてきた。すぐにSNSでの中傷が始まり、22年頃にネットニュースのコメンテーターとして、コロナワクチンの重症化予防効果などの解説を始めた頃から激化した。

 <おぞましいくらいに気持ち悪い>――。顔の見えない匿名アカウントからの言葉の暴力はやまず、昨年5月頃から約50件の投稿について発信者情報の開示を裁判所に申し立て、これまでに約20人を特定。謝罪を求めたところ半数はすぐに応じ、最高約100万円の和解金の支払いを受けて示談した。

 「感情的にならず、冷静に意見を述べればよかった。ひきょう者だった」などと反省の言葉を記した手紙も届いた。

 一方で、一部の投稿者は過激化し、<殺意がわいてきた><ぶっ殺したくなってきた>などとさらに乱暴な投稿を続けた。

 岡氏は特に悪質な投稿者について、損害賠償を求めて民事訴訟を起こし、警察にも刑事告訴した。岡氏が数えた中傷投稿は5000件を超えたという。「医師が 躊躇ちゅうちょ すれば、世の中に正しい情報が伝わらなくなってしまう。SNS事業者は、誹謗中傷や侮辱、名誉 毀損きそん に当たる投稿を厳しく規制してほしい」と訴えた。

開示に時間

 新型コロナワクチンの情報発信サイト「こびナビ」(23年11月活動終了)の副代表として、Xなどでワクチンの情報を発信してきた木下 喬弘(たかひろ) 医師(38)も中傷を受けた一人だ。

 自宅の住所をさらされ、<木下はワクチンを打っていないのに、打ったふりをしている>と事実無根の情報を拡散されたため、法的手段を取ることを決めた。

 ただ、発信者情報が開示されるまで、短くても半年、長ければ1年以上を要した。より悪質な投稿を探すため、自身を中傷する書き込みを約1000件見返し、1日がつぶれたこともあった。

 木下氏は「勝訴しても、まったく割に合わないが、私個人への中傷よりも、公衆衛生として重要な施策が実行できなくなる危機感から提訴を決めた」と強調。「明らかに違法性のある投稿は情報開示のステップを簡単にしてほしい」と訴える。

投稿・日時・URLの証拠印刷を…弁護士

 SNSなどで 誹謗(ひぼう) 中傷を受けた場合はどうすれば良いのか。ネット上のトラブルに詳しい清水陽平弁護士は「証拠を残しておくことが重要だ」と強調する。

 発信者の特定は、プロバイダー責任制限法に基づき、被害者側が裁判所に申し立て、SNSの運営事業者から発信者のIPアドレス(ネット上の住所)の開示を受けたうえで、接続事業者から氏名や住所を伝えられるのが通常の流れだ。

 法的に権利侵害にあたるか判断する際に参考となるのが、投稿に虚偽や人格を否定する内容が含まれるかだ。清水弁護士は「後から『投稿者の責任を追及したい』と思っても、証拠がなければどうしようもない」と言う。投稿をパソコンで表示し、投稿内容・日時やURLをPDFで印刷しておくことが望ましいという。

 総務省の「違法・有害情報相談センター」によると、2022年度は5745件の相談が寄せられ、10年度の4倍以上になっている。

 22年10月には改正同法が施行され、投稿者を特定する手続きが簡略化された。今月10日、同法はさらに改正され、SNSの運営事業者に、削除申請への迅速な対応のほか、▽削除を申請する窓口の設置▽削除する基準の策定・公表などが義務付けられた。

2024.05.30 12:48:41

臓器摘出手術の7割超が休日に集中、平日は人員や病床が逼迫…受け入れ断念が増加する恐れ

 脳死下の臓器提供を巡り、今年に行われた摘出手術の7割超が休日に集中していることが、読売新聞によるデータ分析でわかった。移植施設への臓器の受け入れ要請が休日に集中することで、人員や病床が 逼迫(ひっぱく) し、この傾向が続けば受け入れの断念が増加する恐れがある。

 本紙は、日本臓器移植ネットワークの資料を分析した。28日時点で脳死下の臓器提供は46件あり、うち76%にあたる35件の摘出手術が土日祝日(正月三が日を含む)に集中していた。1日の間に2件以上の臓器提供があった日は10日間で、うち9日間は休日だった。

 背景には、平日は提供施設の手術室が予定で埋まることが多く、人員や病床を確保しやすい休日に摘出手術が計画されることや、脳死者の家族が 看取みと りのため集まりやすいことなどがあるとみられる。休日の摘出手術率は近年増えており、2016~19年には平均41%だったが、20~23年は同61%に増えた。

 同じ日に特定の移植施設に複数の臓器の受け入れ要請が集中することで、受け入れを断念するケースが相次いでいる。日本移植学会の緊急調査によると、昨年は、東京大、京都大、東北大の3大学病院で計62件の受け入れ断念例があった。

2024.05.29 19:37:00

災害時に医薬品や食料品のドローン輸送拡大へ…禁止空域でも許可得ずに飛行可能に

 政府は、災害時のドローン活用を拡大する方向で最終調整に入った。医薬品や食料品など支援物資の輸送であれば、飛行禁止空域でも許可を得ずに飛行できる仕組みの規制緩和を検討しており、規制改革推進会議が31日にもまとめる答申案に明記する見通しだ。6月に閣議決定する規制改革実施計画に盛り込み、年内にも実施する。

 ドローンの飛行は、住宅密集地など通常の禁止空域に加え、災害時には捜索や救助にあたるヘリコプターなどの妨げにならないよう、航空法に基づき飛行禁止空域が追加される。現状では、禁止空域で飛行させるには国土交通相の許可が必要で、都道府県警や自治体からの依頼があった場合には、許可が不要となっている。

 1月に発生した能登半島地震では、道路が寸断され、孤立集落への対応が課題となった。ドローンは、被害状況を把握するための空撮などでは使われたものの、支援物資の輸送での活用はわずかにとどまった。

 被災地からの要望も踏まえ、答申案では、医薬品や食料品などを輸送する場合には、禁止空域でも許可を得ずに飛行できることを明確化するよう国土交通省に求める。被災者に迅速に物資を届けるため、ドローンの活用を促す狙いがある。

 このほか答申案では、スタートアップ(新興企業)を支援するため、株式会社などの設立に必要な定款の認証制度も見直す。定款の認証にかかる手数料について、スタートアップを対象に、現行の最低3万円から半額程度に引き下げを検討することを明記する方向だ。

 手続きの簡素化も進め、今年度中に、定款案の提出から法人の設立登記までを72時間以内に完了させる新たなシステムの運用を始める。デジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」を使った場合は、24時間以内に完了させる。

 個人が自家用車を使って有償で人を運ぶ「ライドシェア」を巡っては、需要増が見込まれる雨天やイベント時にも活用できるよう制度改善を盛り込む見通しだ。タクシー会社以外にも参入を認めるかどうかについては調整が続いている。

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