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2024.06.12 09:00:00

膵臓がん、薬品投与で光らせ1センチ以下で検出へ…国立がん研究センターなど早期発見へ治験開始

 国立がん研究センターなどの研究チームは11日、微小な 膵臓(すいぞう) がんを発見できる新しい画像診断技術を使った治験を始めたと発表した。従来の検査法では難しい0・3~1センチのがん検出を目指す。実用化されれば、初期に自覚症状がほとんどない膵臓がんの早期発見につながることが期待される。

 研究チームは、がん細胞の表面にあるたんぱく質にくっつきやすい性質を持つ新しい放射性医薬品を開発した。治験ではこれを 腹腔ふくくう 内に投与し、PET(陽電子放射断層撮影)検査で撮影すると、がん細胞が光って見える。マウスを使った実験では0・3センチ程度のがんが検出できたという。現状ではCT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)などの検査方法では1センチ以下の検出は困難となっている。

 第1段階の治験は2025年9月までを予定しており、転移のない膵臓がんと診断された患者7~18人を対象とする。新しい放射性医薬品の安全性や投与量を調べる。

 同センター中央病院の肱岡範・肝胆膵内科医長は「小さい病変や転移を検出でき、正確なステージ(病期)を判断して、患者に適切な治療法を提案できることになる」と話している。

2024.06.11 15:43:53

心臓移植の断念は全国計16件、国立循環器病研究センターでも…患者数や手術数が特定施設に偏り

 東京大、京都大、東北大の3大学病院が、人員や病床の不足などを理由に、脳死者から提供された臓器の受け入れを断念していた問題で、2023年に全国の移植施設で心臓の断念例が計16件あったことが11日、日本心臓移植学会の緊急調査で分かった。内訳は東大15件と国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の1件。3大学以外での断念例が判明したのは初めてとなる。

 読売新聞の1月1日の報道を受けて実施した日本移植学会の実態調査は、3大学のみが対象で、心臓、肺、肝臓で計62件の報告があった。

 今回の緊急調査は、心臓移植を手がける全施設(11か所)に、23年に施設側の事情で臓器の受け入れを断念したケースを尋ねた。

 その結果、東大と同センターから計16件の報告があった。東大は、日本移植学会の調査では10件と回答していたが5件増えた。

 16件の断念の理由として、手術を執刀する移植医や看護師らスタッフの不足のほか、手術後の患者が入る集中治療室(ICU)の満床などの回答があった。

 日本心臓移植学会によると、2施設が見送った心臓は、別の施設に登録されているあっせん順位の低い患者に移植されたという。

 断念例が相次ぐ背景には、脳死者からの臓器提供件数が増える中、待機患者が多い移植施設に、臓器の受け入れ要請が集中している現状がある。

 同学会は11日午後、記者会見を開き、緊急調査の詳細を公表する。同学会の澤芳樹代表理事は読売新聞の取材に対し、「移植を待つ患者数や手術数が、施設間で偏っていることが問題だ。学会も対策を講じたい」としている。

 日本臓器移植ネットワーク(JOT)の公開データを基に、読売新聞が行った集計によると、昨年、国内では115件の心臓移植手術が行われた。同センターは最多の32件を実施し、東大の25件が続いた。

 武見厚生労働相は11日午前の閣議後記者会見で、臓器受け入れの断念問題について「JOTから全ての移植実施施設の実態について辞退の件数や原因の報告をさせる。その内容を踏まえて移植医療の推進に取り組む」と話した。

2024.06.07 20:19:05

胎児の心臓の異常をAIで検知…先天性の心臓病発見のための支援システム、月内にも実証実験

 先天性の心臓病をいち早く発見するため、AI(人工知能)を使って胎児の心臓の異常を検知する超音波検査の支援システムを、理化学研究所(理研)や国立がん研究センターなどの研究グループが開発した。グループは、システムの精度を確かめる実証実験を、東京都と広島県の7医療機関で月内にも始める見通しで、早期の実用化を目指す。

 赤ちゃんは100人に1人の割合で、先天的に心臓病を抱えて生まれる。成長によって回復する場合もあるが、心不全を起こすような重症の場合は、出産直後に手術ができないと命に関わる。

 このため、胎児期に超音波検査で異常を見つける必要があるが、胎児の心臓は2センチ程度(妊娠中期)と小さく、動きも速いため、正確に診断できる専門医は限られている。出生前に診断できているのは4~5割にとどまっているという報告もある。

 そこで、研究グループは、胎児の正常な心臓の超音波検査画像、約1万2000枚をAIに学習させ、心臓と血管の18か所について、位置や形が正常であるかを検出する技術を開発した。あるべき位置や形でない場合は異常として扱う。最終的には医師が診断する。

 実証実験は、6月から昭和大江東豊洲病院(東京都)など計七つの病院や医院で、妊娠18~36週の妊婦350人を対象に行う。各施設50人ずつ行うことで、医療機関の規模や医師の熟練度により、支援システムの精度や性能に差が出ないかなどを検証する。

 先天性の心臓病には、心臓の壁に穴が開いたり、血管が狭まったりする「ファロー 四徴症しちょうしょう 」や、重要な血管の位置が逆転して血液中の酸素が不足する「大血管転位症」などがある。

 研究を主導する、理研革新知能統合研究センターの小松正明氏(産婦人科医)は「早期発見で助けられる命がある。新しい技術を使った実験結果を反映させることで精度を一層高め、より良い治療につなげていきたい」と話している。

2024.06.07 20:14:34

iPSから免疫抑える「Tレグ」に近い細胞…京大チーム成功、関節リウマチなど治療期待

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、免疫反応を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」に近い細胞を作り出すことに世界で初めて成功したと、京都大などの研究チームが発表した。自己免疫疾患などの治療に生かせる可能性があり、論文が7日、科学誌「セル・ステムセル」に掲載される。

 ウイルスや細菌から体を守る免疫反応は、過剰になると自身の体を攻撃し、関節リウマチなどの自己免疫疾患や、白血病治療の骨髄移植後に起きる合併症などの原因となる。

 こうした過剰な反応にブレーキをかけるのがTレグで、坂口志文・大阪大栄誉教授が詳細を明らかにし、ノーベル賞級の成果と評価されている。患者の体からTレグを取り出して治療に使う研究も進むが、Tレグは培養してもほとんど増えず、数を確保できないことが課題だった。

 京都大iPS細胞研究所の金子新教授らは、人のiPS細胞から免疫細胞を作製。さらに4種類の薬を加えて1~2週間培養し、Tレグの特徴を持つ細胞を作ることに成功した。

 この細胞を免疫細胞と一緒に培養したり、マウスに投与したりする実験を行った結果、過剰な免疫反応を抑える効果が確認された。

 iPS細胞は増殖しやすく、治療に必要な大量のTレグを作り出せる可能性が開けたという。

  三上 統久(のりひさ) ・大阪大特任准教授(免疫学)の話 「今回の成果で、患者自身のTレグだけでなく、健康な他人のTレグを活用する道が示された。コスト削減などが見込める反面、安全性や有効性を慎重に確認していく必要がある」

2024.06.06 15:31:46

「睡眠科」を診療科名に追加へ、08年以来の見直し…不眠・無呼吸など「国民病」の治療期待

 厚生労働省は、医療機関が掲げることができる診療科名に「睡眠科」を追加する方針を固めた。診療科名を分かりやすく表記することで、患者が医療機関を選択しやすくする。診療科名の見直しは2008年以来となる。日本人は睡眠時間が短く、睡眠障害は現代の「国民病」とも言われる。様々な病気のリスクを高める恐れがあるため、適切な治療につながることが期待される。

 医療機関が看板などで広告できる診療科名は「 標榜ひょうぼう 診療科」と呼ばれ、厚労省が医療法に基づき定めている。「内科」「外科」「小児科」など単独で使えるものが20種類あるほか、「糖尿病内科」「脳神経外科」など組み合わせで認められているものもある。それ以外の診療科も開設できるが、路上や駅での広告や看板などで宣伝ができない。

 追加するには、関連学会の賛同を得た上で、厚労省の医道審議会に意見を聞く必要がある。〈1〉国民の求めの高い診療分野であるか〈2〉診療科名がわかりやすいか――などの条件を満たしていることが前提となる。

 専門医らでつくる日本睡眠学会の調査では、睡眠障害を治療する医療機関(約1200施設)の72%が睡眠科の標榜を希望する。同学会は日本呼吸器学会や日本循環器学会など関連学会から賛同を得られるよう調整を進めており、今夏にも追加を求める要望書を厚労省に提出する予定だ。

 これを受け、厚労省は早急に手続きを進める考えだ。「睡眠科」の単独ではなく、「睡眠内科」「睡眠精神科」など組み合わせで標榜できる方式を想定している。

 現在、患者は症状に応じ、精神科や耳鼻咽喉科、小児科などにかかっているとみられるが、受診先を探しにくいことが課題となっている。日本睡眠学会は「一目で分かる診療科を求めるニーズは高い」と説明する。

 経済協力開発機構(OECD)の調査(21年版)では、日本人の1日あたりの平均睡眠時間は7時間22分で、33か国中で最も短い。厚労省の調査では、睡眠で十分な休養が取れていない人の割合は18年に21・7%に上っている。慢性的な睡眠不足は高血圧や糖尿病、うつ病などのリスクを高める恐れがある。

 こうしたなか、睡眠への関心が高まっている。睡眠の質を高める効果をうたう乳酸菌飲料などが人気となっており、調査会社の富士経済によると、睡眠サポート市場は15年の43億円から22年には640億円に急拡大している。

 ◆ 睡眠障害 =睡眠に何らかの問題がある状態で、心身の健康に影響を与える恐れがある。不眠症や睡眠時無呼吸症候群、過眠症「ナルコレプシー」など約70種類と多岐にわたる。睡眠が不足すると、高血圧や糖尿病、心疾患などのリスクを上昇させる恐れがある。厚労省は睡眠時間の目安として、成人では6時間以上を推奨している。

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