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2024.07.24 15:26:07

熱中症対策、生徒死亡を教訓にAIリスク判定…専門保険の加入は過去最多9万件

 今夏は記録的な暑さとなり、熱中症リスクが増している。過去に起きた痛ましい事故などを教訓に、学校や企業ではAI(人工知能)によるリスク判定やリモートワークの活用などの対策が進む。

 18日午後、山形県米沢市立第二中の体育館。気温30度超の暑さの中、部活動に来た生徒らは、熱中症リスクを判定するタブレット端末に顔を映し、「ほぼ安全」を確認してから館内に向かった。男子バスケットボール部の3年男子生徒(14)は「事前にリスクが分かり、対策もしやすい」と話した。

 AI端末はポーラ化成工業(横浜市)が開発した。顔色や表情などから、熱中症が起こりやすい体調(疲労、寝不足、紅潮、発汗)かどうかをAIで推定。気温や湿度などに基づく「暑さ指数」も加味し、リスクを4段階(危険、注意、やや注意、ほぼ安全)で示す。3月から提供を始め、建設、製造業などの約200社が導入しているという。

 米沢市は今月、市内の全7中学校に試験導入した。きっかけは昨年7月に起きた市立中1年の女子生徒の死亡事故。運動部活動からの帰りに熱中症の疑いで倒れ、病院で亡くなった。市教委は「様々な対策を駆使し、命を守り抜く必要がある」と危機感を強める。

 柔軟な働き方で猛暑に備える企業もある。「熱中症対策リモートワーク推奨デー」を導入するのは、埼玉県新座市のスマホ用アクセサリー製造のトリニティ。暑さ指数が基準以上になると、社員は在宅勤務を選べる。

 導入は2022年7月。前月に会社前で高齢女性が暑さで倒れ、社員が救助する出来事があり、星川哲視社長は社員にも「身に迫る危険」が及んでいると痛感、推奨デー導入を決めた。22、23年の実施は計3日だったが、今年はすでに4日に上り、同社広報は「今夏は災害級の暑さ。社員の健康を第一にしたい」と強調する。

手持ち扇風機は35度以上で「逆効果」

 熱中症を防ぐには、個人の備えも不可欠だ。近年は屋外で手持ちの小型扇風機を使う人が増えているが、製造する「エレコム」(大阪市)は「35度以上だと逆効果」と注意を促す。熱風で汗の蒸発が早まり、かえって熱中症になりやすいという。

 熱中症専門の保険も注目されている。住友生命保険の子会社が2022年に提供を始めた「熱中症お見舞い金保険」は、1日または1か月単位で加入でき、入院に最大3万円、点滴治療に同1万円が支払われる。加入件数は22年約6・3万件、23年約5・6万件だったが、今年はすでに約9万件に上るという。

熱中症警戒アラートは倍増

 今年に入り、環境省と気象庁による「熱中症警戒アラート」の発表数(4月24日~7月21日)はのべ363件に上り、昨年同期間(のべ195件)よりほぼ倍増している。総務省消防庁のまとめでは、熱中症の救急搬送(4月29日~7月21日)も3万4547人で、昨年同期間(3万1502人)を上回るペースだ。

 今後も異例の暑さが続く見通しで、気象庁は22日、西・東日本では8月5日まで10年に1度程度の著しい高温になる可能性が高まっているとして「早期天候情報」を発表。以降も平年より暑くなると見ている。

2024.07.23 19:36:26

アマゾンが処方薬のネット販売に参入、スマホ注文で自宅に薬が…薬剤師の服薬指導も可能に

 アマゾンジャパンは23日、スマートフォンから処方薬を注文すると、自宅などに薬が届くオンライン薬局サービスを始めたと発表した。全国のドラッグストア約2500店舗と連携し、オンラインでも薬剤師の服薬指導を受けられる。糖尿病など継続的な治療が必要な中高年や、子育て世帯などの利用を見込んでいる。

 新サービス名は「アマゾン・ファーマシー」。導入するのは米国とインドに次いで3か国目となる。

 処方薬は、医師の診療を受けた後、薬局に処方箋を持ち込むなどして薬剤師の指導を受ける必要がある。

 新サービスには、ドラッグストア大手のウエルシアホールディングス(HD)やアインHDなど9社が協力。医療機関からデジタル化された処方箋をもらってアプリに登録すれば、オンラインで指導を受けられる。薬は指定先に配送してもらえ、店舗でも受け取れる。

 配送はドラッグストア側が担い、アマゾンは売り上げに応じて各社から手数料を得る仕組みだ。アマゾンジャパン消費財事業本部の前田宏・統括事業本部長は「電子処方箋やオンライン服薬指導の便利さを知ってもらいたい」と述べた。

 対面が原則だった診療や服薬指導は、コロナ禍で規制緩和が進んだ。医師のオンライン診療や、薬剤師のオンライン指導が解禁され、2023年1月からは電子処方箋の運用も始まった。

2024.07.23 15:05:58

iPS細胞を使った最先端の治療技術、万博で3Dホログラム展示…キラーT細胞が働く様子など再現

  iPS細胞(人工多能性幹細胞)などを使って、血液のがんである白血病や新型コロナウイルス感染症の治療応用を目指す京都大発の新興企業が、治療用に開発した免疫細胞の最先端技術を2025年大阪・関西万博に出展する計画を進めている。治療のイメージをコンピューターグラフィックス(CG)を使って立体化した「3Dホログラム」で展示する方向で検討している。23日午後に発表される。

 出展を計画しているのは、京大医生物学研究所の河本宏教授(免疫学)が19年に創業した「リバーセル」(京都市)。河本教授のチームは、様々な細胞に変化するiPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)を使って、白血病のがん細胞や新型コロナウイルスの感染細胞を撃退する免疫細胞「キラーT細胞」を大量に作製することに成功した。

 25年度には、急性骨髄性白血病の患者10~20人を対象にした医師主導治験を京大病院で開始し、早ければ28年頃の実用化を目指す。

 万博への出展は、公益財団法人「大阪産業局」の支援プロジェクトの一環で実現。キラーT細胞ががん細胞などを撃退する様子を再現するという。

 河本教授は「iPS細胞などからキラーT細胞を作る技術は、これまでの治療法とは桁違いの効果が出る可能性がある。万博での展示を多くの人に知ってもらうきっかけにしたい」と意気込んでいる。

2024.07.19 12:13:17

大麻の国内生産者は27人、海外では「環境に優しい新素材」と注目…三重大が研究センター開設

 三重大学は18日、産業用大麻の研究開発を進める「神事・産業・医療用大麻研究センター」を開設したと発表した。麻薬成分が少ない産業用大麻は古来、神社のしめ縄や衣料などに活用されてきた。近年はバイオプラスチックやバイオ燃料の原料として再注目されつつある。センターは各学部と連携し、新品種の開発や効率的な生産技術の確立を進め、産業用大麻の安定的な生産を支援したい考えだ。(松岡樹)

 産業用大麻はかつて、衣類や漁具など幅広く利用された。1950年代半ばには全国で約3万7000人の生産者がいたとされる。その後、外国産の繊維や化学繊維が普及して需要が減った。国の規制強化もあり、2022年時点の大麻の生産者は27人に減った。

 一方、海外では産業用大麻が「環境に優しい新素材」として注目され、自動車の車体や建材など様々な分野で活用が進む。

 三重大の研究センターが扱う産業用大麻は、麻薬成分の含有量が極めて低いもの。2~3年後までに、神事に使われるしめ縄などに適した新品種を開発することを目標に掲げる。向精神作用のない有効成分の活用なども研究する。

 三重大は昨年3月から、産業用大麻とゆかりのある明和町や生産者と連携し、大麻を生産するプロジェクトを始め、明和町の斎宮跡などで無毒性の大麻を栽培してきた。センターは医学部や工学部と連携しながら、生産プロジェクトも支援していく方針だ。

 18日に記者会見した諏訪部圭太センター長は「学内の全ての学部を巻き込み、産業や医療に応用・活用していく道ができた。さらなる実用化に向けて研究していきたい」と力を込めた。

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