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2024.11.06 19:29:41

救急車呼ぶか迷ったら「#7119」…レタスやダイコンの梱包にQRコード

認知度向上へスーパー協力 

 救急車を呼ぶべきか悩んだ時、看護師や医師らが電話で症状を聞いて助言する相談窓口「#7119」を多くの人に知ってもらおうと、姫路東消防署(兵庫県)は店で売られる野菜の 梱包こんぽう 袋にQRコード付きのシール(縦4・2センチ、横7センチ)を貼り付けた。専用ダイヤルの認知度を高めようと、同署がスーパーの協力を得た。

 「救急車を呼んでいいのかな?」「病院に行ったほうがいい?」「迷ったら、このダイアル!! #7119」――。スーパーのレタスや千切り大根などの袋に貼られたシールには、そんな文言が記される。

 姫路市は今年1月、ダイヤルを導入した。県内で活用するのは他に神戸市と芦屋市があり、不急の119番を減らす効果が期待されるが、広く認知されるのはこれからだ。そこで同署では、誰もが手にする野菜にシールを貼ることを企画。市内のNPO法人が経営する「ラーフ農園」(豊富町)や「ボンマルシェ」「ヤマダストアー」の協力を得て、計6店に置いてもらった。

 煙や熱を感知して音声で知らせる住宅用火災警報器をPRするシールもあり、QRコードを読み込むと避難所の位置を示すハザードマップや火災発生状況などを知らせる市のLINE公式アカウントや、ホームページに飛ぶ。

 各店内に置くのは今月いっぱい。担当者は「市民に知っていただきたい情報も入手できる。有効に活用して」と効果に期待している。

2024.11.05 11:29:00

中堅・ベテラン医師の「総合的な診察能力」習得を支援、地方勤務も促し偏在改善へ…厚労省

 厚生労働省は2025年度、中堅以降の医師に総合的な診療能力を習得してもらうための学び直しの支援事業を始める方針を固めた。幅広い病気を診られる医師を増やし、医師不足が深刻な地方での勤務を促すことで、医師偏在の改善につなげる考えだ。

 総合的な診療能力を持つ医師は様々な症状の患者を診察し、必要に応じて専門医を紹介する。高血圧や骨粗しょう症、白内障などいくつもの持病を抱える高齢者の割合が高い地方では特にニーズが高まっている。

 支援事業の対象は、各診療科で働く中堅やベテランの医師ら。大学病院や大病院の勤務医らには、開業や定年後を見据えて総合的な診療能力を持つことが強みになる点をアピールするなど、それぞれの事情を踏まえ学び直しを促す。

 希望者には、総合診療の経験豊富な医師らから、オンラインなどを通じて多くの領域の知識や診療のポイントを学ぶ研修の機会を提供する。指導的な立場の医師の助言を得ながら、総合診療の経験を積める中小病院や診療所も紹介する。病院団体や学会などが実務にあたる。

 国内では専門医の認定を担う日本専門医機構が総合診療専門医の育成を進めてきた。ただ、研修や試験を経て認定されるのは若手を中心に年数百人にとどまる。

 厚労省は、都市部の大病院で特定の臓器や病気を診療してきた専門医が、学び直しにより幅広い領域を診られるようになれば、地方で勤務しやすくなるとみる。支援事業で一定の技能を習得した医師らに、医師不足が深刻な地域の医療機関を紹介することも検討している。

2024.11.01 19:24:42

さいたま市立中学の元校長が元教頭に「恥かかせんじゃねえ」と罵倒…地裁がパワハラ認定、市に賠償命令

 勤務校の校長からパワーハラスメントを受けて適応障害を発症したとして、さいたま市立中学校の元教頭の男性(52)がさいたま市に慰謝料など約921万円の支払いを求めた訴訟の判決が10月30日、さいたま地裁であった。田中秀幸裁判長は訴えの一部を認め、市に約482万円の支払いを命じた。

 訴状などによると、男性は2021年4月から同校に教頭として勤務。22年4月に赴任してきた元校長(60)に「俺に恥かかせんじゃねえ」「教頭の仕事を全く分かっていない」などと言われたり、校長室に呼びつけられて長時間 叱責しっせき されたりした。男性は同年5月頃に適応障害などの診断を受け、その後、市教育委員会から休職を命じられ、23年9月に退職した。

 判決は、校長が絶対的な上下関係のもと、男性を 執拗しつよう に追及したり、罵倒したりしたとパワハラを認定。調査を行った市教育委員会がパワハラを認めず、配置転換や懲戒処分を行わなかったことが男性の精神的苦痛を増大させたとした。

 判決を受けて、市教委の竹居秀子教育長は「判決文を精査し、今後の対応を検討する」とコメントした。

2024.10.31 17:10:09

同性婚カップル「法律の後ろ盾がない中での子育ては手探りばかり」…違憲判決に「色々な家族を受け止めてくれた」

 提訴から5年半の時を経て、30日に言い渡された東京高裁判決は、同性間の結婚を認めない民法などの規定を「憲法違反」と断じた。原告らは「色々な家族がいることを司法が受け止めてくれた」と歓喜に沸いた。(徳山喜翔、杉本和真)

 「婚姻の平等へさらに前進!」。30日午前10時半過ぎ、東京・霞が関の高裁前。原告らが横断幕を掲げると、支援者らから「おめでとう」と大きな拍手が送られた。

 原告の一人で、東京都世田谷区で暮らす50歳代の小野春さん(仮名)は約20年間、同性パートナーの西川麻実さん(同)と共に、それぞれが元夫と授かった3人の子どもを育ててきた。休日には子どものサッカー練習に付き添い、誕生日にはディズニーランドに出かけた。「家族の中身は元夫の時と何も変わらなかった」

 だが、自身が産んだ次男が病気になった時、パートナーによる入院手続きを病院から断られた。「実態は親子なのに、戸籍上は他人。公的証明がなければ家族は守れない」と痛感した。

 今回、高裁判決が言い渡された「東京1次訴訟」は2019年2月に提起された。22年11月の1審・東京地裁判決は「同性愛者が家族になるための法制度が存在しないことは憲法に違反する状態」とまでは認定した。ただ、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」とする憲法24条1項を「異性間の婚姻を指す」と解釈するなどし、「違憲」の壁は乗り越えなかった。

 これに対し、高裁判決は憲法制定時、婚姻は男女間で行われることが前提で、同性婚の可否が議論にならなかった点を重視。異性間の「夫婦」が血縁関係のない子どもを共に育てているケースにも触れ、同性か異性かで婚姻の可否を区別することに合理的な根拠はないと結論づけた。

 高裁判決は小野さんと西川さんについて、「婚姻関係にある夫婦と異ならない共同生活を営んできた」と触れた。法廷で次男と一緒に言い渡しを聞いた小野さんは判決後の記者会見で、「法律の後ろ盾がない中での子育ては手探りばかりだったが、色々な家族がいるとの思いが裁判所に届いてくれて胸がいっぱい」と涙を流した。

「社会的な議論必要」指摘も

 この日の判決は、同性婚に対する社会の理解が進んでいるとして、国会に対し制度改正を促した。原告側から評価する声が聞かれる一方、識者らからは社会的な議論が必要という意見も出ている。

 高裁判決は、自治体でパートナーシップ制度の導入が広がり、同性婚に関する意識調査で賛成している人が増えていることを挙げ、同性婚について「社会的な受容度は相当程度高まっている」と評価した。

 さらに、同性婚を認める手立てとして、民法や戸籍法の改正のほか、婚姻とは別の制度を新設することを例示。具体的な制度の構築は国会の裁量に委ねられているとしつつ、その裁量は「法の下の平等」など憲法の範囲内に限られるとくぎを刺した。弁護団の寺原真希子弁護士は「国会での議論にも具体的な注文をつける画期的な判決だ」と評価した。

 一方、元横浜家裁判事の梶村太市弁護士は、高裁が言及した複数の意識調査では、同性婚に賛成する声がほとんどは7割以下で、多くても8割弱だったことに着目。「同性婚は国民の人生観に関わる問題であるのに、『8、9割以上の圧倒的多数による賛成』とは言いがたい調査結果を基に『受容度は高まっている』と結論づけてよいものなのか」と話す。

 その上で、梶村弁護士は「司法の場ではなく、まずは国会で制度改正の是非について慎重な議論がされるべきだ」と話した。

 林官房長官もこの日の記者会見で「同性婚は国民生活の基本に関わる問題で、国民一人ひとりの家族観とも密接に関わる」とし、国民的な議論が必要だとの認識を示した。

地裁判断は割れる

 一連の訴訟は2019年以降に全国で起こされ、地裁では違憲(札幌、名古屋)、違憲状態(東京1次、福岡、東京2次)、合憲(大阪)の判断が出ている。

 いずれも請求が棄却されたことから原告側が控訴しており、今年3月には札幌高裁で初の控訴審判決が出た。1審に続いて違憲となったが賠償請求は引き続き認められず、原告側は上告。今回の東京高裁判決に対しても、原告側は上告を検討しているという。12月13日には福岡高裁で3件目の控訴審判決が予定されている。大阪、名古屋、東京2次の各訴訟も高裁で審理が進む。

 早稲田大の棚村政行名誉教授(家族法)は「真っ正面から『婚姻平等の道を開くべきだ』とした東京高裁判決は高く評価できる。同種訴訟への影響も大きいだろう」と話している。

2024.10.31 12:30:22

ハムスターに「葉緑体」移植成功、動物細胞に光合成機能加える可能性…東大などのチーム

 東京大などのチームは31日、植物が光合成をする時に使う「葉緑体」をハムスターの細胞に移植することに成功したと発表した。チームは「移植した葉緑体から光合成の初期反応が確認された」としており、本来はない光合成機能を動物細胞に加える技術につながる成果という。論文が国際学術誌に掲載される。

 葉緑体は、光のエネルギーで水を分解し、酸素や生体内のエネルギー供給源となる化合物「アデノシン三リン酸(ATP)」を作り出す。ATPが二酸化炭素などと反応すると、栄養分が合成される。この一連の化学反応が光合成と呼ばれる。

 チームは、海藻中の葉緑体を細胞に取り込める一部のウミウシに着目。藻類から抽出した葉緑体をハムスターの細胞と共に実験装置で培養すると、古くなるなどして不要となった細胞を分解する「 貪食どんしょく 」と呼ばれる作用で、葉緑体がハムスターの細胞に取り込まれた。

 チームによると、光合成が起きる葉緑体内の膜が少なくとも2日間は保たれていたほか、光を当てると、水の分解時に発生した光合成の初期反応も確認された。

 自らの光合成で酸素や養分を作って増殖する細胞ができれば、化石燃料なしに細胞を大量培養する技術につながるという。東京大の松永幸大教授(分子生物学)は「今後、酸素やATPの発生の有無を詳細に調べたい」と話す。

  光合成に詳しい関西学院大の橋本秀樹教授の話 「本当に光合成しているかどうかはATPの確認が不可欠で、更なるデータが必要だ」

2024.10.30 19:39:29

「何も分からなくなる」違うよ…当事者グループ発足10年、認知症のリアルを発信

 認知症の人たちなどで作る「日本認知症本人ワーキンググループ」(東京)が今月、発足から10年を迎えた。認知症になっても希望と尊厳をもって暮らせる社会の実現を掲げ、当事者として思いを発信してきた。認知症の人の意見を国や自治体の施策に取り入れる動きも広がり、「何も分からなくなる」とされた従来のイメージは変わりつつある。(小沼聖実)

 「認知症は恥ずかしくない、隠す必要はないんだと、当事者同士で話すことで肩の荷が下りた」「地域の人が変わらずに接してくれるから、安心して生活できる」

 23日に東京都内で開かれた10周年の記念イベントには、オンラインを含めて40人以上の認知症の人と、家族ら約410人が参加し、当事者8人が活動を振り返った。

 その一人、仙台市の丹野智文さん(50)は若年性認知症と診断を受けて11年。各地の講演会で積極的に発言してきたが、最初は医療や福祉関係の参加者ばかりだったという。「今は、多くの当事者や家族が来られるようになった。診断を受けてすぐ、SNSで相談をくれる人もいる。社会は変わった」と感慨深げに話した。

 グループは2014年10月、代表理事の藤田和子さん(63)らが設立した。「認知症の人が前向きに生きようとする姿が、これまでのイメージを 払拭ふっしょく してきた」と振り返る。

 鳥取県で看護師をしながら3人の娘を育てていた45歳の頃、初期のアルツハイマー病と診断された。朝、食べたものを忘れたり、娘の外出を見送った後、起こそうと部屋に行ったり――。職場に迷惑をかけると思い、仕事を辞めた。

 認知症のことを調べると、「何も分からなくなる」といった暗い情報ばかり。認知症の人にどう接したらいいか、どう「対策」すればいいかという、支援者目線の話が中心だと感じた。

 実際には、全てができなくなったわけでも、いつもできないわけでもない。「診断後も私は私で変わらない。当事者として感じたことを伝え、社会を変えたい」。そんな思いで地元の友人らと発信を始めたのが、活動の原点だ。

 グループが一貫して訴えてきたのは、当事者の声をすべての取り組みの出発点にすること。認知症の人が希望をもって暮らせる地域づくりを当事者が参画して進められるよう求め、国会議員らと意見交換を重ねた。

 昨年、議員立法で認知症基本法が成立した。同法に基づき、国の施策を検討する会議には、藤田さんら3人の当事者が委員として参加。勉強会や当事者同士の交流といった活動を報告し、要望を伝えた。

 前向きに活動する姿は当事者の輪も広げた。

 グループのメンバーで大分県の戸上守さん(64)は公務員だった8年前、若年性認知症と診断され、落ち込んで1年ほど自宅にひきこもった。

 意識が変わったのは、デイサービスで同年代の認知症の仲間に出会い、一緒にソフトボールや農作業を始めてからだ。講演会で各地を飛び回り、藤田さんらと知り合うと、思いはさらに強まった。「認知症でもいろんなことができる人が、たくさんいるんだと、よく分かった。自分も頑張ろうと励みになる」

 グループには現在約200人の当事者が参加する。

 藤田さんは、会議の場でメモを取ったり、人の話を聞いて考えをまとめたりすることが、以前よりできなくなってきたと感じている。でも、共に活動してくれる仲間が増えた。「認知症の人も、これからなるかもしれない人も、もっと仲間を増やし、よりよい地域づくりを進めたい」と語る。

意見を施策・商品に反映

 認知症の人を「何も分からない」とするイメージを変えるきっかけになったのは2004年、京都市で開かれた国際アルツハイマー病協会の国際会議だ。福岡県の越智俊二さん(故人)が、国内の当事者として実名で経験を語った。政府は同年、「 痴呆ちほう 」は 侮蔑ぶべつ 的な表現だとして「認知症」に呼び名を変えた。

 政府が施策推進のため策定する計画には、認知症の人の視点を重視することや、思いの発信を支援する考え方が盛り込まれた。実際、当事者が交流し、思いを語り合う「本人ミーティング」や、診断されたばかりの人の相談に乗る「ピアサポート活動」の普及に取り組む自治体が増えている。当事者の声を集め、施策に生かす自治体もある。

 民間でも製品の開発や改善のため、認知症の人に意見を聞いたり、実際に使ってもらったりする動きが出ている。目立つ色のスイッチが付いたガスコンロや裏表がなくどちらで着てもいい洋服などが登場している。

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