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2024.12.24 13:55:30

「がん予防」うたう再生医療で敗血症、厚労省が輝鳳会などに改善命令…法令違反や不適切な衛生管理確認

 医療法人 輝鳳(きほう) 会(東京都豊島区)が運営する医療機関で自由診療の再生医療を受けた2人が敗血症となった事案で、厚生労働省は24日、再生医療安全性確保法に基づき、輝鳳会と都内の医療機関代表2人に対し、再発防止策の策定などを求める改善命令を出した。調査では複数の法令違反や、不適切な衛生管理体制が確認されたという。

 発表などによると、輝鳳会の医療機関「THE K CLINIC」(同中央区)で今年9月30日、がんの予防をうたった再生医療で細胞の投与を受けた2人が帰宅中に緊急搬送され、集中治療室(ICU)に入院。敗血症と診断され、その後回復した。

 この医療機関では、希望者の血液から培養した免疫細胞を自分の体に戻す再生医療を提供しており、2人は同法人「池袋クリニック」(同豊島区)で別々に血液を採取されていた。血液は同法人の培養センター(同所)で、細胞の培養と処理が行われたという。

 同省は10月25日付で、培養センターでの細胞の加工などを一時停止する緊急命令を発出し、同29日から同センターなどに立ち入り調査した。その結果、2人の細胞加工物の残液から細菌が確認され、同省はいずれかの工程で混入した可能性が高いと結論づけた。

 培養センターでは、点検整備の記録の作成が行われないなど複数の法令違反があり、無菌試験の一部を目視で行うなど不適切な体制もあったという。このため同省は改善命令で、衛生管理体制の再検討や、改善計画の提出などを求めた。

  藤田医科大の八代嘉美教授(幹細胞生物学)の話 「がんの『予防』をうたう再生医療は一般的に科学的根拠に乏しい。再生医療の提供には高度な衛生管理が求められ、混入防止の教育体制や緊急時の安全確保策など、国や学会が連携して対策を考える必要がある」

2024.12.23 13:45:20

平日の日中だけ稼働「日勤救急隊」続々、全国の13%が導入…高齢化で増え続ける搬送に対応

 交代制で24時間勤務の通常の救急隊とは別に、搬送依頼が集中する平日の日中だけ稼働する「日勤救急隊」が全国の消防に広がっている。高齢化で増え続ける搬送依頼に対応し、働き方改革につなげるためだ。総務省消防庁によると、今年4月時点で全体の13%に相当する95消防本部が導入。現場到着までの時間が短縮される成果も上がっている。

 同庁によると、昨年の救急車の出動件数は過去最多の763万7967件(速報値)で、20年間で約1・5倍になった。高齢化で急な体調不良を訴える患者が増えているほか、救急車をタクシー代わりに使う患者もいて、2022年は搬送者の半数近くが入院不要の軽症だったという。

 救急車の現着所要時間も延びている。22年は前年から0・9分延び、過去最長の10・3分。20年前の6・3分から4分遅れている。また、22年で搬送最多の時間帯は午前10時~正午。午前8時から午後6時までに、搬送人員の約6割が集中していた。

 救急現場では「勤務日の朝から翌日朝まで24時間勤務に入り、その後休む」というのが一般的だが、介護や子育てなどを抱える職員もいる。日勤救急隊は、こうした職員らが忙しい日中に交代制で稼働し、全体の出動の負担を軽減させる仕組みで、全国の消防で導入が相次いでいる。

 昨年7月に導入した富山市消防局では、今年3月までに現着時間を前年比で約50秒短縮。名古屋市消防局も昨年4月に2隊を導入し、約16秒縮めた。また、21年から導入した群馬県の高崎市等広域消防局は、育休を取得した隊員の復職支援で活用する。今年4月に復帰し、日勤の隊員として働く秋山彩夏さん(29)は「復帰後も現場に出たかったのでありがたい」と話す。

 今年5月に導入した高松市消防局ではシニアが活躍。隊長の伏見忠さん(61)は20年以上の救急隊経験があり、定年延長を機に志願した。「通常勤務は体力的に厳しいが、日勤なら無理なく働ける。経験を生かして貢献できれば」と語った。

2024.12.20 14:17:38

119番すべきか病院に行くべきか、電話窓口「#7119」の相談増加…大分県が全県で運用検討

 大分市は10月から、救急車を呼ぶべきかどうか迷った時の電話相談窓口「#7119」を運用している。看護師らが症状を聞き取って対処法を助言するため、不急の119番を減らし、救急隊員の負担軽減や救急車の現場到着時間の短縮などが期待されている。2か月間ですでに約1800件の相談が寄せられており、県も来年度からの全県での運用を目指している。(池田圭太)

 #7119は、急病やけがの際に119番すべきかや病院に行くべきかを迷った時などの相談窓口。政府が全国展開を推進しており、総務省消防庁によると11月現在、31都府県が全域で実施している。大分市や名古屋市など、一部の自治体だけで運用している例もある。

 大分市は10月1日に開始。病院が開いていない時間帯の受け皿として、月~土曜は午後7時~翌日午前8時、日曜と祝日は午前8時~翌日午前8時に受け付けている。今年度の事業費は業務委託費など計1300万円で、3年以上の実務経験がある看護師がコールセンターで対応している。

 市保健所保健総務課によると、11月末までの相談件数は1785件。うち119番を勧めたのは252件、医療機関の受診を勧めたのは830件だった。残りの703件は、休日の当番医の確認や、#7119で対応していない心の病や薬の相談などだった。

 市の利用状況を踏まえ、県は来年度から全県での運用開始を目指し、各市町村の意向を確認している。

 大分市の足立信也市長は11月の定例記者会見で「119番に寄せられていた電話の受け皿として、救急車の適正利用に寄与することも考えられる」と手応えを語った。

 年末年始の今月29日~来年1月3日は24時間対応する。通話料は自己負担。市は、明らかに緊急を要する場合は迷わず119番するよう呼びかけている。

昨年の救急出動 大分市過去最多

 大分市の救急出動件数は、高齢化などの影響で増加傾向にある。市消防局によると、2023年は、過去最多だった22年を1748件上回る2万3548件だった。

 搬送人数は22年より1985人多い1万9907人。このうち病院で「軽症」と診断された患者の割合は37.8%で、2年連続で増加した。通報を受けてから現場に到着するまでの平均所要時間は8.2分だった。

2024.12.18 09:48:00

「子どもの介護」でも休業取得しやすく…厚生労働省が来年度からの基準改定へ

 厚生労働省は、企業などが従業員の介護休業を認定する際に使う「判断基準」に、子どもの介護も対象だと明記する方針を固めた。現行の基準は高齢者介護を前提としており、日常的に医療行為が必要な「医療的ケア児」や障害児を育てる労働者から、申請しづらいとの声が相次いでいた。来年度からの運用を目指す。

 介護休業は2週間以上、常に介護を必要とする家族がいる場合、1人につき最大93日取得できる。1995年に始まった制度で、高齢化が進む中、家族の面倒を見るために仕事を辞める「介護離職」が問題となって導入された経緯がある。

 このため、高齢者介護を念頭に置いている。休業が必要なほどの介護状態であるかを見極めるため、厚労省が定めた判断基準の中には、「認知症高齢者等」との記載は出てくるが、子どもに関する文言はない。

 現行の基準では「歩行」「排せつ」など12項目に、できないことがあるなど一定程度該当するか、要介護2以上である場合、休業が認められる。対象が子どもであっても、基準を満たせば取得は可能だ。

 だが、労働者側からは「子どもに関する記載がないため、申請しにくい」、企業側からは「認めていいのかどうか、悩ましい」といった意見が国や自治体に寄せられていた。

 20歳未満の医療的ケア児は、医療技術の進歩によって救える命が増えたことで増加。2008年に1万人を超え、23年は約2万人と推計されている。身体障害や知的障害を持つ18歳未満も37万人超に上る。

 厚労省は年内に有識者研究会を発足させ、障害児らを育てる当事者や企業からヒアリングを行って基準の見直し案を検討する。新基準には子どもの介護も対象だと明示する方針という。

 厚労省の約6300事業所を対象にした調査では、22年度に介護休業を取得した従業員の割合は、0・06%。来年4月に改正育児・介護休業法が施行され、企業には40歳前後の社員への介護休業制度の周知が義務づけられる。障害児や医療的ケア児を育てる労働者への配慮義務も企業に課され、仕事と育児・介護との両立支援が広がる見通しだ。

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