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2025.01.29 18:58:10

赤ちゃん「泣いてもよかよ!」…パパママ応援の気持ち、可視化で温かな社会に

 電車やバス、飲食店などで赤ちゃんが泣き出した際、周囲の人が、受け入れる気持ちを表そうというプロジェクトが広がっている。福岡県筑後市出身のエッセイスト紫原明子さん(42)(東京在住)が発案した取り組みで、「泣いてもいいよ」とのメッセージを記載したグッズの製作・配布に取り組む自治体は全国30自治体となった。紫原さんは「温かな気持ちが広がってほしい」と願っている。(南佳子)

社会全体で応援

 「WE (ラブ) 赤ちゃん」「泣いてもよかよ!」

 JR筑後船小屋駅(筑後市)では、こうしたポスターを在来線と新幹線の待合室に貼り、駅員が制服に缶バッジを付けて周知を図っている。

 「WE♡赤ちゃんプロジェクト」と名付けた取り組みの一環だ。ほほえむ赤ちゃんの絵とともにメッセージを記載したステッカーや缶バッジを製作するなどし、まちなかに掲示したり、身に着けてもらったりする。泣きやまない赤ちゃんに慌てるパパやママを、社会全体で応援する狙いがある。

 プロジェクトに賛同した同市は昨秋から、筑後弁版のステッカーや缶バッジ、チラシなどを1000個・枚ずつ作り、市役所などで配布。同駅のほか、JR羽犬塚駅や商業施設でもポスターの掲示などでアピールしている。2歳児と0歳児を育てる同市の会社員女性(34)は「周りに迷惑をかけるかもしれないと、電車移動を避けることがあった。受け入れる気持ちを示してくれるのは心強い」と話す。

 市こども家庭サポートセンターの担当者は「小さな思いやりを積み重ねる一歩。子育て世帯の外出時の負担の大きさに理解が進んでほしい」と期待する。

言葉に救われる

 紫原さんがプロジェクトを思い立ったのは自身の育児中の経験がきっかけだった。長男(22)と長女(19)が幼かった頃、家族で外食中に泣き出し、居合わせた人に「帰ってくれ」と言われ、悔しさが募った。カフェで乳児が泣き出し、申し訳なさそうに退店する母親を見たこともある。声を掛けたかったが勇気が出なかった。

 こうした経験から、「話しかけなくても、泣き声を不快に思っていないと伝えられないか」とプロジェクトを考案。仕事で関わりのあった母親ら向けのウェブサイトを運営する企業エキサイト(東京)に提案し、2016年に始動した。

 プロジェクトを紹介するウェブサイトでは、「賛同する♡」ボタンを設けて賛同者を募っている。これまでに9万人を超えており、「言葉に救われる」「赤ちゃんはいっぱい泣いて笑って元気に育ってね」といった優しいメッセージも寄せられている。

各地の方言で

 「泣いてもいっちゃが!」(宮崎県)「泣いでもさすけね!」(福島県)など、各地の方言で呼びかけるのもポイントとなっている。

 京都府では「泣いてもかましまへん!」と掲げた大型広告が商店街に登場し、京都市内にはラッピングバスが走る。山口県は「泣いてもええっちゃ!」のグッズを製作し、協力する店舗を通じて配布した。

 紫原さんは「泣き声を受け入れる気持ちの可視化が進めば、肯定的に見守る温かな社会になるのではないか」と期待する。

 子育て支援に詳しい立正大の岡本依子教授(発達心理学)は「子どもは地域で育てるものだと認識できる仕組み。育児初心者の父母にとっても地域とのつながりを実感でき、安心して親としての成長を重ねられる」と評価している。

「外出時に苦労」85%

 子育て世代が、外出時に周囲の目を気にして負担に感じていることを示す調査がある。乳幼児用品メーカーのピジョン(東京)が昨夏、3歳以下の子を育てる父母1000人に調査したところ、育児中の外出について85・4%が不便さや苦労を感じると回答。「飲食店や公共の場で赤ちゃんがじっとできない」(41・4%)、「ぐずる・泣きやまない」(39・9%)といった回答が多かった。

 また、うれしいと感じる周囲の手助けが「よくあった」とした人が16・2%にとどまるなど、更なる理解が求められる回答が目立った。

2025.01.29 16:16:01

コロナ無料検査の水増しで都の補助金8億円詐取か、男7人容疑で逮捕…申請簡素化で不正相次ぐ

 東京都が実施した新型コロナウイルスの無料検査事業で、検査数を水増しして補助金約8億円をだまし取ったとして、警視庁は29日、東京都中央区の医療関連会社「アイチェック」(現・日本IC)元営業担当課長の島田雅史容疑者(59)(品川区小山)ら男7人を詐欺容疑で逮捕した。他人の名前や検体を使って虚偽申請を繰り返したとみている。

 他に逮捕されたのは、同社元社員の村松学容疑者(35)(文京区小日向)ら。

 捜査関係者によると、7人は共謀して2022年10月~23年1月、都内約20か所の検査所で行ったPCR検査と抗原検査の実施件数を、約11万9000件水増しして都に報告し、計約15万9000件分の補助金約7億9500万円をだまし取った疑い。

 同社は、都の無料検査事業に登録した新宿区の検体検査会社と提携し、検査所を運営。補助金を申請する際、島田容疑者と村松容疑者らが、無関係の名簿を使って別人の名前を記載し、知人から集めた唾液を検体として使っていたという。

 外部から通報を受けた都が調査し、不正が発覚した。警視庁は口座の分析などから、島田容疑者が補助金を私的に流用し、他の6人に分配していたとみている。

 無料検査事業は、国の臨時交付金約6200億円を財源とし、都道府県が21年12月~23年5月に実施。検査1件につき、PCR検査で最大1万1500円、抗原検査で最大6500円の補助金が交付された。

 同事業は申請手続きを簡素化したことで、各地で不正申請が相次いだ。都は計21事業者が計393億円を不正に申請していたとして、交付の取り消しや、交付済みの計約102億円の返還命令を行っている。

2025.01.28 17:22:42

視野が狭まっても自覚しにくい緑内障、「運転外来」開設相次ぐ

 眼科の専門病院や大学病院で緑内障の患者らを対象とした「運転外来」を設ける動きが出ている。緑内障の患者は視野が狭まる症状を自覚しにくい。注意せずに運転を続けると事故につながるリスクがあるため、外来では、運転時の見え方や状況判断を確認する。担当する医師チームは今年1月、「運転能力を過信する緑内障患者が多い」とする研究報告をまとめた。

 国内初の眼科の運転外来は2019年7月、西葛西・井上眼科病院(東京)が開設した。神戸市立神戸アイセンター病院と新潟大医歯学総合病院が続き、3か所に増えた。さらに名古屋市立大東部医療センターが今年4月に始める予定だ。ほかにも設置を検討する大学病院がある。

 外来は、視力や視野、認知機能など一般的な検査に加え、「ドライビングシミュレーター」という装置を使うのが特徴だ。患者は装置の運転席に座り、市街地を走行する動画を見てアクセルやブレーキを操作する。走行中の目の動きを捉え、見落とした部分が画面に表示される。

 受診するのは、40歳以上の20人に1人がかかるとされる緑内障のほか、網膜色素変性症や脳卒中など視野に障害が出る患者らだ。開設が相次ぐ背景には、こうした患者が運転リスクを自覚しにくいことがある。

 同眼科病院の国松志保副院長らが今月、国際科学誌に報告した研究では、同眼科病院と新潟大の運転外来を受診した緑内障患者227人のうち145人(64%)が、運転時の見えづらさや不安はなく「運転に問題がない」「正常に見えている」と回答。145人のうち63人は、症状が最も重い後期緑内障だった。

 視野が狭まると、車や歩行者の飛び出しに気づくのが遅れ、信号や標識を見落とすリスクがある。国松氏は「視野の変化に気づかず、視力に問題はないから安全と思い込むケースが目立つ」と指摘する。

 外来では、視野の上部が欠けた人には、信号をよく確かめるよう促し、下部が欠けた人には左右からの飛び出しへの注意を呼びかけるなど助言する。受診後の経過を追えた患者の7割が運転を続けており、国松氏は「ほとんどの人が運転時に注意するようになっており、大きな事故は起こしていない」と説明する。シミュレーターで危険性を体感したことで納得して運転をやめた患者もいるという。

 交通事故の予防医学に詳しい一杉正仁・滋賀医大教授の話「運転外来は、地域の安全を守るためにも重要な取り組みだ。緑内障をはじめ運転に支障が出る病気は多く、行政がシミュレーターの導入費を補助するなど普及を後押しすべきだ」

2025.01.27 17:34:28

自律型生活支援ロボ・盲導犬に代わる「AIスーツケース」…大阪万博のプラン最終版概要が判明

 政府が2025年大阪・関西万博でアピールする新技術や、開催に合わせて進める取り組みをまとめた行動計画「万博アクションプラン」最終版の概要が判明した。「未来社会」で活用を目指すロボットや翻訳技術、海外と自治体の国際交流事業などを盛り込んだ。政府の国際博覧会推進本部が今月中に正式決定する。

 最終版では、〈1〉未来社会の体験〈2〉日本の魅力発信〈3〉地方活性化――を3本柱とし、具体的な最新技術や13府省庁が連動して進める事業を並べた。新技術は万博内で展示するほか、来場者への応対や会場への交通手段などに使用される。

 「未来社会の体験」では、AI(人工知能)によって人間の動きを把握し、状況に応じた生活支援ができる自律型ロボットを展示するほか、会話を瞬時に30言語に翻訳するアプリをスタッフの来場者対応や会場案内、音声放送などの通訳用に幅広く使用していくとした。

 新技術としては、盲導犬に代わって視覚障害者を安全に目的地まで誘導する「AIスーツケース」の会場内での展示や、自動運転バスや空飛ぶクルマなどの会場内外での運行もこれまでに策定してきた行動計画で想定されてきたが、最終版でも採用された。

 近未来の医療体験ができる場として、世界最大級の医療・ヘルスケアの国際展示会を会場近くで開催することも新たに計画した。

 「日本の魅力発信」では、日本のアニメやマンガを紹介する「クールジャパンショーケース」を会場内で開催。「地方活性化」に向け、参加国・地域と日本全国の自治体が交流する「万博国際交流プログラム」(登録数16府県72市区町村)を実施し、地元産品の海外展開や人材交流を後押しする方針を掲げた。

 行動計画は21年12月に初版を策定し、約半年ごとに改訂してきた。4月13日の開幕を控え、今回が最終版となる。

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