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2024.12.03 19:23:42

高額療養費の自己負担、上限5~15%引き上げ案…保険料軽減狙い厚労省検討

 医療費が高額になった場合に患者の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」を巡り、厚生労働省は自己負担の上限額の引き上げ幅を5~15%とする方向で検討に入った。受診控えにつながらないよう、低所得者の引き上げ幅は抑制する方針だ。4日の自民党社会保障制度調査会や、5日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会で提示する。

 高額療養費制度は、1か月あたりの自己負担の上限額を超えた場合に超過額が払い戻される仕組み。現行制度では、医療費が月100万円かかった場合の自己負担額は、年収370万~770万円で約8万7000円、年収1160万円以上で約25万4000円となっている。

 11月の医療保険部会では「一定程度の引き上げ」を目指す方針が了承された。厚労省は引き上げ幅の検討を続けており、年末までに結論を得たい考えだ。

 上限額の引き上げには、現役世代の公的医療保険料の負担を軽減する狙いがある。現在、上限額は年収に応じ、70歳未満では五つ、70歳以上では六つに区分されているが、厚労省は区分も細分化する方針を示している。

 厚労省の試算によると、各区分で一律に5%引き上げた場合、1人当たりの保険料は年額600~3500円軽減される。15%引き上げた場合は、1200~5600円軽減される。厚労省は早ければ2025年夏に自己負担の上限を引き上げ、26年夏に区分の細分化にも取り組む考えだ。

 高齢化の進展や医療の高度化で、高額療養費の支給総額は12年度の2・1兆円から21年度には2・8兆円に膨らんだ。厚労省は、引き上げの理由として、賃上げなどを通じて世帯収入が増加していることや、物価上昇が続く中で現役世代を中心に保険料負担の軽減を求める声が多いことを挙げている。

2024.12.03 17:19:27

「新しい認知症観」普及へ、基本計画を閣議決定…孤立解消し社会参加の機会増やす

 政府は3日、認知症施策推進基本計画を閣議決定した。認知症になっても、希望を持って暮らしていけるという「新しい認知症観」の普及を打ち出し、日常生活におけるバリアフリー化や、社会参加の機会を増やすなどの施策を掲げた。今後、自治体が当事者の声を踏まえて推進計画を作る。

 基本計画は今年1月に施行された認知症基本法に基づくもので、当事者や家族らで作る関係者会議でまとめられた。計画は2029年度までの5年間が対象。

 認知症になった人も、できることややりたいことがあり、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることができるという考え方を「新しい認知症観」として明記した。

 「認知症になると何も分からない、できなくなる」といった周囲の人などの誤解により、当事者の意思が十分に尊重されず、地域で孤立しがちな現状の改善につなげるのが狙いだ。

 具体的には、当事者の視点に立って12の基本的施策を推進するとした。バリアフリー化に向けては、認知症の人が便利に移動できる交通手段の整備や、使いやすい製品・サービスの開発を進める。

 社会参加の機会を増やすため、認知症の当事者同士で体験や思いを共有する「本人ミーティング」や、当事者が認知症と診断されて間もない人の相談に乗る「ピアサポート活動」を広げる。介護保険のデイサービスを利用しながら、地域で清掃などのボランティア活動に参加し、謝礼を受け取る仕組みの普及も盛り込んだ。

 また、重点的に取り組む目標として、国民の認知症への理解促進、本人の意思の尊重、地域の人と支え合いながら安心して暮らせる環境作り、研究で得られた新たな知見や技術の活用――の4項目を挙げた。

 認知症基本法は、都道府県と市区町村に対し、基本計画に沿って、認知症の人や家族の声を聞きながら推進計画を策定するよう努力義務を課している。政府は自治体向けに策定の手引を示したり、当事者の意見を聞くための会議の開催などにかかる費用を補助したりして、計画の策定を後押しする方針だ。

 政府がこうした共生社会の実現を急ぐのは、急速な高齢化に伴い、認知症高齢者が増えるからだ。

 厚生労働省研究班の推計では、22年に443万人だったが、25年には472万人、40年には584万人になる。40年には高齢者のおよそ7人に1人の割合で、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の高齢者(613万人)を含めると、約1200万人となる。

2024.12.02 15:58:34

動物実験が難しいB型肝炎、マウスでの再現成功…感染マウスを使った実験で新薬候補も見つかる

 根治が難しいB型肝炎について、マウスでこの病気を再現することに成功したと、大阪大と国立国際医療研究センターなどのチームが発表した。原因ウイルスを減らす新薬候補も見つけており、現在、治験も計画中だ。論文が国際科学誌に掲載された。

 B型肝炎ウイルスは血液や体液を通じて感染。肝炎を発症させ、慢性化すると肝硬変や肝がんにつながる。国内では110万~140万人の感染者がいるとされる。

 根治を目指せるインターフェロン注射薬はあるが、副作用が強い上、一部の患者にしか効かない。また、症状を抑える内服薬はあるが、ウイルスが肝細胞の核の中に入り込んで居座るため、一生飲み続ける必要があった。

 よりよい新薬の開発が求められているが、このウイルスは人以外にほとんど感染しないため動物実験が難しいという課題があった。

 阪大の小玉尚宏助教、竹原徹郎教授らは遺伝子操作の技術を駆使し、B型肝炎ウイルスが持続感染した状態をマウスで再現することに成功。このマウスの免疫状態を調べると、免疫細胞の機能が低下してウイルスの増加を抑えられず、肝炎が慢性化していることがわかった。

 チームは住友ファーマなどが開発中の、免疫を活性化する薬剤に着目。マウスで効果を検証すると、免疫細胞の機能が回復して数が増え、血液中のウイルス量が4日間で10分の1に減った。人に応用できれば、一定期間の投薬で根治に持ち込める可能性があるという。

  熊本大の田中靖人教授(消化器内科学)の話 「マウスで実験ができるようになったことは有用だ。今回のような免疫に関する治療法と、ウイルスの遺伝子を標的にした治療法を併用できるようになれば、根治の可能性が広がるだろう」

2024.12.02 13:22:05

きょうマイナ保険証に「一本化」、従来型も最長1年有効

 現行の健康保険証は2日に新規発行が停止され、マイナンバーカードに保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」に原則として移行する。混乱を回避するため、従来の保険証は2025年12月1日までの最長1年間使用できる。マイナ保険証の利用は低迷しており、円滑な移行には今後、利用の促進をどこまで図ることができるかが課題となる。

 マイナ保険証の利用登録は、10月時点で7747万人が手続きを済ませている。全国の医療機関や薬局の92%(9月時点)がマイナ保険証に対応する。

 従来の保険証の使用は、市区町村が運営する国民健康保険と後期高齢者医療保険では来夏までが基本で、会社員らが入る健康保険組合や全国健康保険協会は最長の1年間になる。

 従来の保険証の期限切れ前に、マイナ保険証を持っていない人や、マイナカードを保険証として利用登録していない人には、申請しなくても健保組合などから「資格確認書」が交付される。病院で提示すれば、従来の保険証と同じように保険診療を受けられる。

 マイナ保険証を使った場合、本人が同意すれば、医師は病院の受診歴や処方薬の履歴を確認できる。従来は新規加入や転居・転職時に新たに保険証を発行してもらう必要があったが、マイナ保険証は継続して利用できるメリットもある。

 ただ、他人の情報がひも付けられたトラブルなどの影響で、マイナ保険証の利用率は10月時点で15%にとどまっている。高齢者を中心に不安を抱く人が多く、政府は国民の不安 払拭ふっしょく に向け、利便性の理解につながる情報提供に力を入れる方針だ。

2024.11.29 12:26:50

マイナ保険証利用の患者、電子カルテを病院間で共有へ…病歴や検査結果も把握可能に

 政府は、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を利用する患者の電子カルテ情報について、医療機関同士で共有する新システムの運用を、2025年度に始める方針を固めた。既存のシステムでは確認できない過去の検査結果など詳細な情報を把握できるようになる。医療の安全性の向上や効率化につなげる狙いがある。

 新システムは「電子カルテ情報共有サービス」で、厚生労働省所管の法人が管理する。各医療機関から、電子カルテに記録された病名やアレルギー、感染症と生活習慣病の検査や健診結果、処方薬の情報が集まり、データベースに蓄積される。データの保存期間は3か月~5年間となる。全国の医療機関がデータを閲覧するためには、患者の同意を得る必要がある。

 新システムの導入で、救急患者の症状と、データをつきあわせて診断したり、初診患者の検査結果を、過去の数値と比べて病状の変化をみたりすることが可能になる。アレルギー情報は、安全な薬の処方に役立つ。

 医療機関がシステムを通じて、別の医療機関に紹介状を送る機能も備える。患者が紹介状を入手する手間が不要となる。

 現在、マイナ保険証で受診する患者については、同意した上で、過去の受診歴や処方薬などの情報を確認できる別のシステムがある。ただ、何の検査を受けたかはわかっても、結果はわからないなど得られる情報は限られている。

 医療機関が新システムに接続するためには、電子カルテの改修が必要となる。厚労省は運用に向けて、改修費の一部を補助している。25年初めから全国10か所で実証事業を行い、安全で有効な使い方や課題を検証。同年度中の本格稼働を目指す。

 政府は、マイナ保険証の利用を基本とする仕組みへの移行を進めており、来月2日、現行の健康保険証の新規発行を停止する。医療機関や薬局でのマイナ保険証の利用率は10月時点で2割弱と低調で、利用促進が課題となっている。

2024.11.28 17:51:46

ドラッグロス解消へ新薬スピード承認…がんや難病などで新制度導入の方針

 厚生労働省は、がんや難病などの患者に薬を迅速に届けるため、効果が予測できる段階で製造販売を承認する新制度を導入する方針を決めた。承認後に効果が確認できない場合は取り消しを可能とする。欧米で承認された薬が日本で使えない「ドラッグロス」の解消策で、来年の通常国会に医薬品医療機器法の改正案の提出を目指す。

 製薬企業が承認を得るためには通常、3段階の臨床試験(治験)を実施し、薬の安全性や効果を確認する。その上で、国に承認申請を行う。

 新制度は、命に関わる重い病気や、有効な治療がない、患者が少なく臨床試験に時間がかかるなどのケースが対象となる。中間段階までのデータで効果を予測でき、患者が使う利点が大きいと判断された場合に承認する。安全対策のため、必要に応じて薬を処方できる医療機関や医師の条件を定める。

 承認後は原則、最終段階の試験の実施を製薬企業に求める。効果が確認できなかった場合は承認を取り消せる仕組みとする。

 米国には、新制度と同様の承認取り消しが可能な迅速承認の仕組みが導入されている。

 厚労省は2017年、重い病気の新薬などについて、中間段階までのデータで効果が確認できれば、最終段階の試験を経ずに早期に承認する制度を設けた。

 だが、製薬企業にとって条件のハードルはなお高い。これまでの適用は、がんや難病の治療で使われる5品目に限られており、厚労省は、新たな制度の導入が必要と判断した。

 ドラッグロスは深刻化している。厚労省によると、欧米で承認済みだが、日本で未開発の薬が23年3月時点で86品目に上る。政府は今年7月に策定した創薬力強化に向けた工程表で、86品目のうち必要性の高い薬について、臨床試験を26年度までに始めるとする目標を盛り込んだ。

 新制度が実現すれば、ドラッグロスが生じている薬の開発が日本で進みやすくなるほか、新たなドラッグロスの発生を防ぐ効果も期待される。

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