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2024.11.28 16:37:10

下水の新型コロナウイルス調査、予算1・7倍要求で範囲拡大…1週間後の流行を予測

 下水に含まれる新型コロナウイルスを調べる事業について、厚生労働省は2025年度、調査地点を拡大する。流行状況の把握の精度を高めるのが狙いだ。欧米では下水の病原体調査が広く普及しており、専門家は「新たな感染症の危機に備え、日本でも調査体制の充実を図るべきだ」と指摘している。

 ウイルスは感染者の排せつ物にも含まれる。そこで下水に含まれるウイルスの濃度を分析して、下水処理場のある地域の感染状況との相関関係を把握することを目的に、厚労省が今年度から調査を始めた。現在13都県17か所の下水処理場で実施している。約1週間後の新型コロナの流行状況を予測できることも分かってきたため、調査地点を増やすことにした。他の感染症の調査事業も含めた予算を、今年度の1・4億円から25年度の概算要求では1・7倍となる2・4億円を計上した。今後、下水調査に協力する自治体を募る。

 海外では下水調査が広く行われている。米国で少なくとも1500か所、欧州で約30か国1700か所で実施され、対象も新型コロナ以外にインフルエンザなど複数の病原体を調査している。

 北島正章・東京大特任教授(下水疫学)によると、全国200か所で調査を行えば、人口の3分の1、約4000万人の範囲をカバーできるとし、「下水から新型コロナ以外の病原体も広く調べられる体制を整えるべきだ」と訴えている。

2024.11.27 16:54:54

肥満だと肝臓や大腸がんの危険性アップ、女性は乳がんのリスク高める…徳島大助教

 肥満や代謝の異常が日本人のがんリスクを高めているとの研究結果を、徳島大大学院医歯薬学研究部の渡辺毅助教(39)が26日、発表した。日本人を対象にした大規模な疫学調査データを活用。部位別では、肥満の人は肝臓や大腸のがんリスクが高くなり、高血糖などの代謝異常があると正常体重でも 膵臓(すいぞう) がんにかかる危険性がアップすると分析した。

 渡辺助教は徳島大を含む全国の大学やがんセンターが集めた患者ら約5万3000人の疫学調査の結果を解析した。肥満の人は肝臓がんにかかるリスクが139%増、大腸がんが41%増。さらに高血糖、脂質異常、高血圧のうち一つ以上あると代謝異常とし、全がんでリスクが15%増えるとした。

 また女性では、肥満が乳がんのリスクを45%高め、代謝異常が加わると63%増にアップ、子宮体がんも95%増えるとした。男女とも健康体重では、代謝異常がある場合のみ、膵臓がんの危険性が60%増えると分析した。

 徳島大で記者会見した渡辺助教は「これまで欧州では肥満の人の有病率は低いとされてきたが、日本人には肥満の影響が大きいことがわかった。自分がどのがんになりやすいかを知り、食事を改め、運動するといった生活習慣の改善で予防を」と呼びかけた。

2024.11.26 18:41:34

田中耕一さん「ノーベル賞より感慨深い」…開発に携わった質量分析計が「マイルストーン」認定

 2002年にノーベル化学賞を受賞した島津製作所(京都市中京区)の田中耕一・エグゼクティブ・リサーチフェロー(65)らが開発に携わった同社の質量分析計「LAMS―50K」が、社会の進歩に貢献した製品などに贈られる「米国電気電子学会(IEEE)」の「マイルストーン」に選ばれた。田中さんら開発者は15日に本社で開かれた記念式典に集まり、喜びを見せた。(矢沢寛茂)

 IEEE(アイ・トリプルイー)は電気・電子技術分野の世界最大の専門家組織。誕生から25年以上経過した製品や技術を対象に、マイルストーンを認定している。日本では過去に、シャープの「電卓」などが選ばれている。

 島津製作所の質量分析計は、田中さんのノーベル化学賞受賞につながった技術を応用し、1988年に発売された。田中さんは、たんぱく質などの巨大分子を壊さずにレーザーを当ててイオン化し、質量を測定する手法を開発。その後、質量分析計の活用と開発が世界中で進み、現在の生物学や医学に欠かせない装置となっている。

 「ノーベル賞の時より感慨深かったかもしれない」。式典の前に開かれた記者会見で、田中さんはそう喜びを表現した。

 「ノーベル賞は夢にも描けない名誉だったが、私だけの評価はアンフェアとも思っていた。今回の認定で私を含めた5人で開発、達成した意義などを紹介できる機会をいただいた」と述べ、開発チーム全体の功績であることを強調した。

 さらに、かつて東北大工学部電気工学科でアンテナ工学を専攻したことに触れ、当時の教科書や開発当時の電子回路の基板を手に「大学にも恩返しができた」と笑顔を見せた。

 記念式典では、田中さんは開発者仲間の吉田多見男さん、吉田佳一さん、秋田智史さん、井戸豊さんと一緒にIEEEから同社に贈られた銘板を囲み、記念撮影した。

 田中さんと入社同期(1983年)の山本靖則社長(65)は「ノーベル賞の時は本当にびっくりした。あの熱気を覚えている。長い時間を経て、チームで作り上げた革新的な製品が認定され、格別の喜びだ。改めて敬意を表したい」とたたえた。

2024.11.26 18:11:29

患者の「声」取り戻すAIアプリ開発、口の動きから本人そっくりに…大阪大などチーム

 病気で声を失った患者の口元の動きから話そうとしている内容を人工知能(AI)で推定し、本人そっくりの人工音声を流す「読唇アプリ」を、大阪大などの研究チームが開発した。患者の意思疎通が楽になるといい、チームは実用化を目指し、大阪大病院で患者に試験的に使ってもらうことを計画している。

 喉頭がんや下咽頭がんなどの治療では声帯を切除して声を失う場合がある。代替の発声方法として、食道の粘膜をふるわせる「食道発声」や、気管と食道の間に穴をあけて器具を取り付ける「シャント発声」などがあるが、元の声とは異なる上、習得が難しく、体への負担も大きい。

 日本語は母音が5種類しかなく、例えば「あ」と「か」では口元の動きがほぼ同じため、母音が10種類以上ある英語などより読唇が難しいとされる。

 チームの御堂義博・特任准教授らは、母音に加え、前後の音の並びによって変化する口元の動きを16種類に分類した「口形コード」という手法に着目。まず話している口元の膨大な映像と、その動きに対応するコードをAIに学習させ、口元の動きをコードに変換する手法を開発した。

 さらに別のAIを使い、コードを自然な日本語に置き換える2段階のシステムで、話そうとしている言葉を推定できるようにした。

 事前に録音した患者本人の声をもとに、人工音声でそっくりに再現するシステムも組み合わせ、アプリを完成させた。語尾が不正確になりやすいなどの課題はあるが、大半は意味が伝わる会話ができたという。

  大上研二・東海大教授(耳鼻咽喉科・ 頭頸とうけい 部外科)の話 「練習が不要で体への負担もないため、声を失ってすぐに使えるのは大きなメリットだ。より即時性を高め自然な会話に近づけられれば、患者さんにとって大きな福音になる」

2024.11.25 18:14:35

日本初のデフリンピックまで1年、選手ら受け入れへバリアフリー化急ぐ…「理解進むきっかけ」期待

 聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」の日本初開催まで1年を切った。多くの競技会場を抱える東京都内には期間中、世界70~80の国・地域から耳が不自由な選手たちが多く集まる。都内の宿泊施設や競技施設では、聴覚障害に対応したバリアフリー化が進むが、手話通訳者の育成など課題も残る。(上田惇史)

来客の知らせ、照明の点滅で

 東京港に臨むホテル「グランドニッコー東京台場」(港区)の客室。インターホンが鳴ると室内と風呂場の照明が点滅を繰り返し、液晶モニターに廊下に立つ来訪者の姿が映った。広報担当の川島由美子マネジャーは「耳が聞こえなくても来客がわかるよう、光で知らせます」と説明した。

 同ホテルは昨年夏、聴覚障害者の利便性向上のため、全882客室のうち、10客室にこの点滅機能を設けた。電動で角度を調節できるベッドといすを備えるなど、宿泊客の様々な障害に対応している。

 同ホテルは、大会運営組織から外国人選手の受け入れを要請され、しゃべると言葉が表示される自動翻訳機器の導入や、従業員への手話研修を予定している。川島マネジャーは「課題は多いが、利用者のニーズに応えるのがホテルの役割。様々な想定をしながら、準備を進めたい」と話す。

高齢者の利便性向上にも

 大会の準備・運営に携わる東京都は2021年の東京パラリンピックに続き、デフリンピックを都内のバリアフリー化を進めるきっかけにしようとしている。

 今年度は、競技会場となる駒沢オリンピック公園など都有6施設で「光警報装置」の設置に着手。災害が起きると白色の光の点滅で知らせる仕組みで、来年夏までにトイレや更衣室などの天井計661か所に専用のライトを付ける。

 音声を文字に変換して目の前のディスプレーに表示する機器も、スポーツ施設や図書館など約40か所に配備した。健常者の話した内容が言語で表示され、聴覚障害者は端末で文字を打ち込み、意思疎通する。駅にも設置を進める予定で、都国際スポーツ事業部の萬屋亮・担当課長は、「聴覚障害者だけでなく、耳の遠い高齢者の利便性向上にもつながる」と話す。

少ない手話通訳者

 デフリンピックには五輪のように選手・関係者が滞在する選手村がない。来年11月の東京大会では全17の競技会場のうち、15会場が都内にあり、選手約3000人の大半は都内の宿泊施設に滞在することになる。聴覚障害のある観戦客が国内外から訪れることも予想される。

 民間施設ではそれに対応できるだけのバリアフリー化が進んでいないのが実情だ。

 都は17年度から、バリアフリー化に取り組む民間の宿泊施設に対し、改修費や備品購入費を補助しているが、聴覚障害者向けは計16件にとどまり、ここ3年間は0件だ。都内約750の宿泊事業者が加盟する都ホテル旅館生活衛生同業組合の担当者は、「外国人観光客の増加で人手不足が慢性化し、ほかのことにまで手が回らない」と話す。

 手話通訳者の確保も難題だ。手話は各国・地域で異なるため、海外の選手と意思疎通するには、共通語として「国際手話」が用いられる。使用できる人材は国内に少なく、都は昨年度から講習会受講料の補助を始め、同年度は延べ331人を支援した。担当者は「普及につなげ、大会本番でも活躍してもらいたい」とする。

低い認知度、選手意気込み

 デフリンピックの認知度は低く、都が昨年、18歳以上の都民に実施した調査では、パラリンピックを知る人が93%に上ったのに対し、デフリンピックは15%にとどまった。

 過去4大会で計19個のメダルを獲得した競泳の いばら 隆太郎選手(30)(SMBC日興証券)は、聴覚障害を理由にスポーツクラブの入会を断られた人の話をよく聞くという。「大切なのは互いを知ろうとすること。いい結果を残して注目を集め、聴覚障害への社会の理解が進むきっかけにしたい」と意気込む。

 ◆ デフリンピック =英語で「耳が聞こえない」を意味する「デフ(deaf)」とオリンピックを組み合わせた造語。1924年にパリで初めて開催され、夏季・冬季大会がそれぞれ原則4年に1度行われる。100周年の節目の大会となる東京大会は来年11月15~26日、東京、福島、静岡の1都2県の17会場で21競技が行われる。

2024.11.25 16:04:34

高濃度PFASを検出、岡山・吉備中央町が住民の血液検査を開始…公費で実施は全国初

 岡山県吉備中央町の浄水場で、人体への悪影響が懸念される化学物質「 PFAS
(ピーファス)
」が高濃度で検出されたことを受け、同町は25日、住民の血液検査を始めた。環境省によると、公費での血液検査は全国で初めて。健康への影響に関する確定的な知見はなく、結果は岡山大などが詳しく分析する。

 検査は円城浄水場から給水するエリアの住民ら約2400人のうち、希望した約800人が対象。PFASの血中濃度のほか、脂質や肝機能の状態を調べる。来年1月中に結果を通知する。検査を受けた会社員女性(47)は「体への影響が心配で検査を受けに来た。現時点で体調に変わりはないが、検査で病気などが明らかになった時には、行政に早めの対応をしてもらいたい」と話した。

 同浄水場では2020年以降、町が毎年行う水質検査で、PFASの一種である「 PFOAピーフォア 」と「 PFOSピーフォス 」が、国の暫定目標値(1リットルあたり50ナノ・グラム)を大幅に上回る1400~800ナノ・グラム検出された。しかし、昨年10月に県職員が異常な数値に気付くまで、町は対策を取っていなかった。

 発生源は、同浄水場の取水場であるダムの上流にある資材置き場に、町内の企業が08年頃から保管していた使用済み活性炭の可能性が高いという。活性炭はPFASの除去にも用いられる。昨年撤去されたが、県が今年10月に行った周辺の沢の水質調査でも高濃度のPFASが検出された。町は問題発覚後に水源を変更した。

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