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2024.08.01 01:46:25

アルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」製造販売を了承…厚労省部会、11月にも公的保険適用

 厚生労働省の専門家部会は1日、米製薬大手イーライリリーのアルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」(商品名ケサンラ)について、製造販売の承認を了承した。病気の原因とされる物質を除去するタイプの薬では、日本の製薬大手エーザイなどが開発したレカネマブに次いで2例目。11月にも公的保険が適用される見込み。

 ドナネマブは、患者の脳内に蓄積する異常なたんぱく質「アミロイド βベータ (Aβ)」の塊を取り除き、病気の進行の抑制を図る。対象は、認知症の前段階となる軽度認知障害(MCI)の人を含むアルツハイマー病の早期の患者。点滴で月1回、最長1年半投与する。1年をめどに検査してAβの塊の消失が確認できれば投与をやめられる。

 約1700人が参加した最終段階の臨床試験では、認知機能などの低下を22%抑える効果が確認された。病状がより早期のグループでは35%の抑制効果があった。副作用として脳の微小出血や腫れがみられた。

 昨年8月、厚労省に承認申請が出され、米国では今年7月2日に承認されていた。米国での年間治療費は約3万2000ドル(約480万円)となっている。日本の薬価は厚労相の諮問機関、中央社会保険医療協議会で議論される見通し。

 レカネマブは昨年9月に国内で承認され、12月から保険診療で使われている。

2024.07.31 19:23:54

入学式で新入生の母親が心肺停止に、居合わせた看護師の保護者や教職員ら7人の連携で命救う

 今年4月、大阪府岸和田市立大芝小学校の入学式の最中に新入生の母親が倒れて、一時、心肺停止となった。緊迫した事態に、居合わせた看護師の保護者や教職員ら7人が力を合わせて救命措置を施し、母親は一命を取り留めた。市消防本部はその冷静で的確な対応を称賛。感謝状贈呈式で、無事に回復した母親が恩人たちに感謝の思いを伝えた。(松本慎平)

 市消防本部が感謝状を贈ったのはいずれも看護師の雪本弥生さん(37)、萩原未夢さん(37)、小川真理子さん(46)、宮瀬隆也さん(30)。そして会社員の原陽介さん(38)、大芝小教諭新田展央さん(50)、同小校務員小次功晃さん(53)。

 4月4日午前、大芝小体育館で、次女(7)の入学式に出席していた山内由起子さん(44)は突然意識を失い、椅子から崩れ落ちた。「バタン」という音で気づいた周囲の人たちが、一斉に動いた。

 原さんが119番をし、新田さんと小次さんは体育館の玄関に設置されたAED(自動体外式除細動器)を大急ぎで運んだ。看護師の4人は交代で、胸骨圧迫やAEDによる電気ショックを行った。その間、由起子さんの夫・健史さん(49)は妻の名前を呼び続けた。

 看護師でも突然の事態に対応することは簡単でなかったという。小川さんは「そばで協力してくれる人がいるだけでも違う」と振り返る。7人の他にも男性の出席者たちが上着を手に由起子さんを囲み、周りからの視線を遮る「パーティション」の役を担った。これによって手当てに集中できたという。

 原さんの通報から約6分後に救急車が到着。病院に向かう車中で、由起子さんは自発呼吸を回復した。翌日には集中治療室から一般病棟に移り、その後も短期間で回復し、後遺症の心配もなく退院した。

 倒れた原因は不整脈による心室細動だった。病院の医師は由起子さんに「自宅だったら亡くなっていたかもしれない」と告げるほど危険な状態だったという。6月の感謝状贈呈式で由起子さんは、「皆さまがいなければ、こうして生きていることはできなかった。助けていただいた命を大切に、これからも毎日笑顔で子どもたちの成長を見守っていける日々を大切に過ごしていきます」と話した。

導入進む映像通報システム

 今回のような事態に備えて各地の消防本部で、現場の人のスマートフォンとを映像でつなぎ、患者の状態を即座に把握できる映像通報システムの導入が進む。岸和田市消防本部も4月に導入したばかりで、原さんとは別に119番した人と連絡を取りながら現場に向かうことができた。

 同本部が運用する映像通報システム「Live119」では、スマホから通報が入ると、消防側が必要と判断した場合、通報者とビデオ通話を始めるためのURLを送信。患者を撮影してもらうほか、胸骨圧迫など救命措置の方法を説明する動画を消防側から送ることもできる。通信料は通報者が負担する。

 大阪府東大阪市や守口市門真市消防組合消防本部なども4月に映像通報システムの運用を開始。読売新聞が府内の24消防本部(局)に取材したところ、14消防本部が導入済みで、その管轄地域は31市町村に広がっていた。岸和田市消防本部の担当者は「救急車到着までの手当てによっても救命率は変わる。映像を使って助言するので救命措置に協力してほしい」と話した。

2024.07.30 11:39:55

「ドラッグロス」解消へ2026年度までに臨床試験開始…創薬力強化へ政府が工程表

 日本の創薬力強化を目指す政府の戦略目標と工程表が判明した。欧米で承認された医薬品が日本で使えない「ドラッグロス」の解消に向け、2026年度までに必要性の高い薬の臨床試験に着手し、28年までに創薬を担うスタートアップ(新興企業)を10社以上誕生させることなどが柱だ。30日に産学官の関係者を集めた創薬関連サミットを首相官邸で開いて公表する。

 厚生労働省によると、欧米で承認されているが、日本では開発が行われていない薬が23年3月時点で、がんや難病の分野などで86品目に上る。このうち、子ども用が4割近い32品目を占めている。

 24年夏から5年間程度の工程表では、ドラッグロスが生じている86品目のうち必要性が高い薬について、臨床試験を26年度までに始める目標を掲げる。より深刻な子ども用の薬では、28年度までの5年間で開発計画を50件策定する。承認申請に関わる要件の緩和などを進めることで、製薬会社に開発を促し、国民に最新の薬を迅速に届けることを目指す。

 新薬の開発では近年、米国を中心に新興企業が中核的な役割を担うようになっている。日本では、こうした企業の育成が進んでおらず、企業価値100億円以上の新興企業を28年までに10社以上、生み出す目標を打ち出す。国際共同治験に日本が参加できていないことも多いため、届け出件数を現状の1・5倍の年間150件に拡大することも盛り込む。

 25年度には外資系の製薬会社やベンチャーキャピタル(起業投資会社)などが参加する官民協議会を発足させ、海外から日本への積極的な投資や研究拠点の開設につなげる。

2024.07.29 14:18:10

酷暑の避難所生活、自治体職員ら体感…室温30度・湿度70%の体育館で1泊「対策に生かしたい」

 防災分野の専門家らでつくる「避難所・避難生活学会」は27~28日、酷暑での避難所生活を想定した宿泊訓練を大阪府八尾市の小学校で行った。学会によると、同様の訓練は国内初という。参加者はエアコンのない体育館で寝苦しい一夜を過ごし、熱中症や災害関連死を防ぐための課題を共有した。

 厳冬期を想定した避難所訓練はこれまで北海道の大学で実施されてきたが、近年、夏場の水害が頻発しており、同学会が真夏の訓練を初めて企画した。

 訓練には、学会の専門家や、避難所運営などを担う自治体職員ら計約60人が参加。気象庁によると、同市では両日とも最高気温が35度以上の猛暑日となった。

 参加者らは持ち込んだ冷感タオルやハンディータイプの扇風機などのグッズで暑さをしのぎ、体育館の扉を開放して大型扇風機で送風していたが、夜になっても室温は30度を超えたまま。湿度も約70%と高く、ほとんど寝られない人もいた。

 大阪府災害対策課の大井祥之さん(35)は「空気がじめじめして寝苦しく、扇風機の音も気になった。部署に持ち帰り、対策に生かしたい」と疲れた様子だった。

 28日には参加者らで課題を協議。風が全くあたらない場所に熱がたまりやすく、「風の通り道を作るように扇風機の設置場所を考えるべきだ」との意見が出た。

 熱中症に備えてエアコンを利かせた校舎の一室を用意し、校庭には応急処置ができる医療用コンテナも待機させる対応を取った。

 石巻赤十字病院(宮城県)の副院長を務める植田信策・同学会代表理事(60)は「課題を整理し、暑さ対策に関する技術を持つ民間企業とも協力して解決策を探りたい」と話した。

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