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2024.08.27 13:32:02

パラアスリートへの医療支援を拡充へ…けが予防や「クラス分け」のための診察サポート

 スポーツ庁は2025年度から、パラリンピックを目指すトップ選手への医療支援を拡充する方針を決めた。パラアスリートが、国の強化拠点ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC、東京都北区)でも医師の診察などを受けやすい環境作りを目指す。

 HPSCは、最新の練習機材を備えたナショナルトレーニングセンター(NTC)や国立スポーツ科学センター(JISS)などで構成。19年にバリアフリー化された「NTCイースト」が完成し、障害のある選手の練習利用が増えている。同庁は医療面のサポートを手厚くすることで利用促進や競技力向上につなげようと、25年度予算の概算要求に関連経費約1億円を計上する。

 JISSのクリニックの勤務医らが、けがの予防や早期発見のほか、障害の種類や程度に応じて競技クラスを決める「クラス分け」で求められる診察などを日常的に行えるように体制を整える方針。日本パラリンピック委員会(JPC)が今春、クラス分けに関する世界の動向を調べるために設けた組織とも連携する。

 また、同庁は、今後の五輪・パラなどに向けた強化費105億円も概算要求に盛り込む。21年東京大会当時から100億円規模を堅持しており、パリ五輪でも日本勢の活躍を支えた。

2024.08.26 19:12:25

実態ない医療機器の「みなし調査」、医師と医療機関・大学に謝礼名目で1億2千万円を不正提供

 医療機器メーカー「ゼオンメディカル」(東京)が2018~22年度に自社製品を販売した全国42の医療機関・大学と医師37人に対し、実態のない「市販後調査(PMS)」の謝礼名目などで現金計約1億2000万円を提供していたことが業界団体「医療機器業公正取引協議会」の調査でわかった。販売促進のためだったといい、業者から医師への不透明な資金提供の構図が浮き彫りになった。

 ゼオン社を巡っては、昨年9~10月、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の医療機器の選定・使用に絡み、市販後調査の謝礼名目で担当医師に約320万円の賄賂を贈ったとして、元社長の柳田昇被告(68)が警視庁に贈賄容疑で逮捕され、その後、起訴されている。

 公取協は事件を受け、今年3~6月頃にゼオン社への調査を実施。ゼオン社が医療機器を販売後、安全性や品質などを検証する市販後調査に協力した謝礼などの名目で、病院や医師らに資金を提供していたことが判明した。市販後調査に実態はなく、ゼオン社内では製品の売り上げを伸ばす手法として「みなしPMS」と呼ばれていた。

 資金提供は18~22年度に39の医療機関で141件(約3700万円)、国立大を含む3大学で3件(約100万円)確認された。このうち10医療機関は公立や独立行政法人運営の病院で、2大学は国立大学だったという。

 医師への資金提供も37人に計220件(約8100万円)確認された。このうち5人は公的病院に勤務していたが、警視庁は収賄容疑で逮捕・起訴された国立がん研究センター東病院の医師以外の4人については、雇用形態や勤務実態を踏まえ、収賄容疑での立件は難しいと判断したとみられる。

 公取協は医療機器の販売方法について、消費者庁と公正取引委員会の認定を受けた規約を定めている業界団体。医師や医療機関への資金提供は、相手が民間病院の医師であれば贈収賄罪に当たらないが、不当な顧客の誘い込みを規制する景品表示法に抵触する恐れがあり、公取協は26日午前、悪質な規約違反に当たるとして、ゼオン社に厳重警告した。

 ゼオン社は東証プライム上場の化学メーカー「日本ゼオン」の子会社。民間信用調査会社によると、主に消化器系と循環器系の医療機器を製造販売し、昨年3月期の売上高は38億円。

2024.08.26 11:54:44

介護ベッドなど福祉用具の事故情報、年内にもデータベース化…現在は集約する仕組みなし

 厚生労働省は、電動の車いすや介護ベッドなどの福祉用具を使用中に起きた死傷事故の件数や概要、要因などについて、データベース(DB)を構築し、公表する方針を決めた。自治体や消費者庁などに集まる情報を一元化し、高齢者や介護職員の安全な利用につなげ、メーカーの製品開発にも活用してもらう狙いだ。年内の運用開始を目指す。

 独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」によると、介護施設や自宅などで使われる電動車いすやシニアカー(ハンドル付き電動車いす)、介護ベッドでの死傷事故は、2022年までの10年間に計86件確認されている。「踏切で脱輪し、立ち往生した」「ベッドと柵の間に首が挟まれた」といったケースで、メーカーなどから報告を受けたものだ。

 消費者庁は、メーカーなどが把握した死傷事故について報告を受け、ウェブサイトで公表している。

 一方、市区町村は、介護保険法の運営基準に基づき、福祉用具を扱う事業者や特別養護老人ホームなどから、現場で起きた事故の報告を受けるが、国に報告する仕組みはない。集約先がバラバラのため、どんな福祉用具で事故が何件起きているのか実態は分かっていない。

 新たに構築するDBでは、厚労省が作成した事故報告書を使って、自治体から任意に提出してもらう情報や、消費者庁が収集した事故情報などを集約し、活用する。公表するデータは、自宅と施設のそれぞれの事故件数、福祉用具の種類や使用場面ごとの事故要因の分析――などを想定する。

 福祉用具を利用する高齢者は22年度に約367万人と、12年度の1・7倍となり、高齢化で今後も増える見通しだ。厚労省は「事故情報を収集し、注意を呼びかける必要がある」(高齢者支援課)と判断した。メーカーが製品の安全性向上に役立てることも期待している。

 DBの詳細な設計や公表する内容は、厚労省の委託を受けた公益財団法人「テクノエイド協会」(東京都)の有識者会議で検討を進める。

 国際医療福祉大の東畠弘子教授(福祉支援工学)は「体の動きや判断力が衰えた高齢者が利用する福祉用具の安全性を高めるため、事故情報の一元化は重要だ。利用者や事業者に情報が確実に届くように、発信の仕組みも整えてほしい」と話している。

  ◆福祉用具= 介護保険制度で、つえや歩行器、移動用リフト、手すりなど13種類を原則1割の自己負担でレンタルできる。専門相談員が定期点検を行う。ポータブルトイレなど再利用がためらわれるものは、原則1割の自己負担で購入できる。

2024.08.23 16:04:58

創薬力強化へ新薬の研究開発拠点…海外新興企業を呼び込み、「ドラッグロス」解消図る

 日本の創薬力強化を目指し、厚生労働省は2027年度にも、新薬開発の基礎研究から試験薬の製造、臨床試験までを一体的に実施できる拠点を整備する方針を固めた。創薬を担うスタートアップ(新興企業)を海外から呼び込み、革新的な新薬の開発を活発化させる狙いだ。海外の新薬が日本で使えない「ドラッグロス」の解消にもつなげる。

 政府は7月、医薬品産業を日本の成長を担う基幹産業と位置づけ、創薬力を強化する方針を打ち出した。

 拠点は、その中核的な役割を担うもので、国内に1か所整備し、医療機関が運営する形を想定する。新薬の効果や安全性を確かめるための臨床試験を行う病院のほか、研究施設、試験薬の製造施設を設ける。25年度予算の概算要求に関連経費を盛り込む。

 近年、新薬開発は、米国を中心に新興企業が主に担うようになっている。しかし、こうした企業は日本に支社などを持たないケースが多いため、手厚く支援することで、海外発のシーズ(創薬のタネ)を国内に導入することを目指す。資金力に限界がある新興企業が基礎研究として細胞実験などをしようとしても、自前で施設を用意するのは難しい。拠点には実験室や事務室を設け、間借りして研究できるようにする。

 さらに日本での臨床試験実施を重点支援する。初期段階の臨床試験は、新薬の候補物質を初めて人に投与するため、予期せぬ副作用の発生などに対処できる体制を整える。製造施設では先端技術を使った多様な試験薬の提供を可能にする。

 拠点周辺には、国内外の新興企業を集積させ、製薬会社や大学、資金面で支援するベンチャーキャピタル(起業投資会社)などと連携できるようにする。政府は28年度に、初期段階の臨床試験を10件実施することを目指している。

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