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2024.06.07 20:19:05

胎児の心臓の異常をAIで検知…先天性の心臓病発見のための支援システム、月内にも実証実験

 先天性の心臓病をいち早く発見するため、AI(人工知能)を使って胎児の心臓の異常を検知する超音波検査の支援システムを、理化学研究所(理研)や国立がん研究センターなどの研究グループが開発した。グループは、システムの精度を確かめる実証実験を、東京都と広島県の7医療機関で月内にも始める見通しで、早期の実用化を目指す。

 赤ちゃんは100人に1人の割合で、先天的に心臓病を抱えて生まれる。成長によって回復する場合もあるが、心不全を起こすような重症の場合は、出産直後に手術ができないと命に関わる。

 このため、胎児期に超音波検査で異常を見つける必要があるが、胎児の心臓は2センチ程度(妊娠中期)と小さく、動きも速いため、正確に診断できる専門医は限られている。出生前に診断できているのは4~5割にとどまっているという報告もある。

 そこで、研究グループは、胎児の正常な心臓の超音波検査画像、約1万2000枚をAIに学習させ、心臓と血管の18か所について、位置や形が正常であるかを検出する技術を開発した。あるべき位置や形でない場合は異常として扱う。最終的には医師が診断する。

 実証実験は、6月から昭和大江東豊洲病院(東京都)など計七つの病院や医院で、妊娠18~36週の妊婦350人を対象に行う。各施設50人ずつ行うことで、医療機関の規模や医師の熟練度により、支援システムの精度や性能に差が出ないかなどを検証する。

 先天性の心臓病には、心臓の壁に穴が開いたり、血管が狭まったりする「ファロー 四徴症しちょうしょう 」や、重要な血管の位置が逆転して血液中の酸素が不足する「大血管転位症」などがある。

 研究を主導する、理研革新知能統合研究センターの小松正明氏(産婦人科医)は「早期発見で助けられる命がある。新しい技術を使った実験結果を反映させることで精度を一層高め、より良い治療につなげていきたい」と話している。

2024.06.07 20:14:34

iPSから免疫抑える「Tレグ」に近い細胞…京大チーム成功、関節リウマチなど治療期待

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、免疫反応を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」に近い細胞を作り出すことに世界で初めて成功したと、京都大などの研究チームが発表した。自己免疫疾患などの治療に生かせる可能性があり、論文が7日、科学誌「セル・ステムセル」に掲載される。

 ウイルスや細菌から体を守る免疫反応は、過剰になると自身の体を攻撃し、関節リウマチなどの自己免疫疾患や、白血病治療の骨髄移植後に起きる合併症などの原因となる。

 こうした過剰な反応にブレーキをかけるのがTレグで、坂口志文・大阪大栄誉教授が詳細を明らかにし、ノーベル賞級の成果と評価されている。患者の体からTレグを取り出して治療に使う研究も進むが、Tレグは培養してもほとんど増えず、数を確保できないことが課題だった。

 京都大iPS細胞研究所の金子新教授らは、人のiPS細胞から免疫細胞を作製。さらに4種類の薬を加えて1~2週間培養し、Tレグの特徴を持つ細胞を作ることに成功した。

 この細胞を免疫細胞と一緒に培養したり、マウスに投与したりする実験を行った結果、過剰な免疫反応を抑える効果が確認された。

 iPS細胞は増殖しやすく、治療に必要な大量のTレグを作り出せる可能性が開けたという。

  三上 統久(のりひさ) ・大阪大特任准教授(免疫学)の話 「今回の成果で、患者自身のTレグだけでなく、健康な他人のTレグを活用する道が示された。コスト削減などが見込める反面、安全性や有効性を慎重に確認していく必要がある」

2024.06.06 15:31:46

「睡眠科」を診療科名に追加へ、08年以来の見直し…不眠・無呼吸など「国民病」の治療期待

 厚生労働省は、医療機関が掲げることができる診療科名に「睡眠科」を追加する方針を固めた。診療科名を分かりやすく表記することで、患者が医療機関を選択しやすくする。診療科名の見直しは2008年以来となる。日本人は睡眠時間が短く、睡眠障害は現代の「国民病」とも言われる。様々な病気のリスクを高める恐れがあるため、適切な治療につながることが期待される。

 医療機関が看板などで広告できる診療科名は「 標榜ひょうぼう 診療科」と呼ばれ、厚労省が医療法に基づき定めている。「内科」「外科」「小児科」など単独で使えるものが20種類あるほか、「糖尿病内科」「脳神経外科」など組み合わせで認められているものもある。それ以外の診療科も開設できるが、路上や駅での広告や看板などで宣伝ができない。

 追加するには、関連学会の賛同を得た上で、厚労省の医道審議会に意見を聞く必要がある。〈1〉国民の求めの高い診療分野であるか〈2〉診療科名がわかりやすいか――などの条件を満たしていることが前提となる。

 専門医らでつくる日本睡眠学会の調査では、睡眠障害を治療する医療機関(約1200施設)の72%が睡眠科の標榜を希望する。同学会は日本呼吸器学会や日本循環器学会など関連学会から賛同を得られるよう調整を進めており、今夏にも追加を求める要望書を厚労省に提出する予定だ。

 これを受け、厚労省は早急に手続きを進める考えだ。「睡眠科」の単独ではなく、「睡眠内科」「睡眠精神科」など組み合わせで標榜できる方式を想定している。

 現在、患者は症状に応じ、精神科や耳鼻咽喉科、小児科などにかかっているとみられるが、受診先を探しにくいことが課題となっている。日本睡眠学会は「一目で分かる診療科を求めるニーズは高い」と説明する。

 経済協力開発機構(OECD)の調査(21年版)では、日本人の1日あたりの平均睡眠時間は7時間22分で、33か国中で最も短い。厚労省の調査では、睡眠で十分な休養が取れていない人の割合は18年に21・7%に上っている。慢性的な睡眠不足は高血圧や糖尿病、うつ病などのリスクを高める恐れがある。

 こうしたなか、睡眠への関心が高まっている。睡眠の質を高める効果をうたう乳酸菌飲料などが人気となっており、調査会社の富士経済によると、睡眠サポート市場は15年の43億円から22年には640億円に急拡大している。

 ◆ 睡眠障害 =睡眠に何らかの問題がある状態で、心身の健康に影響を与える恐れがある。不眠症や睡眠時無呼吸症候群、過眠症「ナルコレプシー」など約70種類と多岐にわたる。睡眠が不足すると、高血圧や糖尿病、心疾患などのリスクを上昇させる恐れがある。厚労省は睡眠時間の目安として、成人では6時間以上を推奨している。

2024.06.05 12:32:10

きょうだいで暴力含むいじめ受け「たすけてください」…学校の「重大事態」報告は3~6か月後

 高松市立小学校で2021~22年に起きたいじめの「重大事態」2件について、学校から市教委や市長への発生報告が、保護者の申し立てを受けてから3~6か月後だったことが、保護者への取材でわかった。文部科学省は指針などで速やかな報告を求めており、専門家は学校や市教委の対応を疑問視する。(黒川絵理)

 文部科学省は、いじめ防止対策推進法に基づく指針などで、市立校は保護者や子どもから重大事態の申し立てを受けた場合、直ちに市教委を通じて市長に報告しなければならないと定めている。特に子どもの欠席が続くケースは、7日以内の報告が望ましいとしている。

 保護者の説明や、市教委が保護者に開示した資料によると、2件の被害児童はきょうだいで、同じ市立小に通っていた。

 上の児童は2021年11月~22年1月、クラスメートから体の上に乗られたり、髪を引っ張られたりしたほか、「死ね」などの暴言を受け、別室登校になった。下の児童は22年5月、クラスメートから顔を殴られたり、膝を蹴られたりされ、登校できない日が続いた。2人ともその後、転校した。

 保護者は学校に被害を訴え、上の児童については22年6月、下の児童も同9月、学校にそれぞれ、「重大事態として取り扱ってほしい」と申し立てた。

 学校はいじめ行為があった直後から市教委と情報共有し、加害児童に謝罪させたり、教員を増やしたりしたが、市教委に2件の重大事態の発生を報告したのは、いずれも同12月だった。市教委はその10日後、大西秀人市長に伝えた。

 校長らで構成される調査委員会は23年9月、2人ともいじめがあったとする調査結果をまとめ、市教委に報告した。

 保護者は学校の対応について、「申し立てはどうなっているのかただしても、学校側からは『円満解決を目指す』と繰り返され、放置されたと感じた。調査が遅れ、ほかの児童の記憶も薄れて全容解明が難しくなった」などと主張。調査委も、発生報告の遅れについて調べていないなどとして再調査を求めている。

 市教委は学校から重大事態の報告を受けた直後の22年12月、各校に対して、重大事態への対応の流れや提出書類の様式を説明する文書を出していた。

 市教委学校教育課は取材に「個別事案は明らかにしない」としている。文科省のガイドラインは、重大事態の調査結果は「特段の支障がない限り、公表が望ましい」としているが、市教委はこれまで「児童生徒への影響を総合的に勘案している」として公表していない。

  千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)の話 「学校も市教委も教室に入れなくなったり、欠席が続くようになったりした時点か、遅くとも転校をした時点で自ら重大事態として対応すべきだった。被害者に放置されたと感じさせたことは二次被害だ。法の趣旨を無視した対応といえる」

 ◆ 重大事態 =2013年施行のいじめ防止対策推進法で定義された。いじめで児童の生命や心身などに重大な被害が生じたり、年間30日以上欠席を余儀なくされたりしている疑いがある事案を指す。

2024.06.04 16:47:49

川崎市医師会がLINEで医療人材マッチングサービス…紹介会社手数料に苦しむ医療機関の声受け

 全国で医療人材不足が問題となるなか、川崎市医師会は、LINE(ライン)を使って医療機関と求職者をつなぐ独自のマッチングサービスを始めた。人材紹介会社を介さず直接、医療機関と求職者を結ぶことで、高額な採用経費を削減し、採用しやすくするのが狙いだ。(松岡妙佳)

 「昨年1年間で約4500万円が人材紹介手数料に消え、赤字になった」。市内で病院を経営する医療法人の男性理事長(49)はため息をつく。新型コロナウイルスによる業務負荷の増大などにより、2022年1月~23年12月の2年間で看護師が計30人離職し、23年3月から約4か月間、病棟1棟を閉鎖せざるを得なかった。

 病院は看護師確保のため、大手就職情報会社や人材紹介会社など、過去最多の11社と契約。23年中に40人を採用したが、紹介手数料は採用する人材の年収の約2割ほどが「相場」といい、1人平均約110万円を費やした。「採用をためらえば病院の機能が維持できず、背に腹は代えられない」――。

 採用経費に悩む会員の声を受け、川崎市医師会は昨年10月、公式ウェブサイト内に医療機関の求人情報を無料掲載するページを作った。現在、市内の医療機関93件が看護師や医師などを募集している。

 さらに、4月からは市内の人材育成会社と協力してSNSで情報発信し、求人情報のページに誘導する仕組みも導入。同医師会の求人情報を発信するライン公式アカウントを作り、アカウントのリンクを開くと医療機関の連絡先や待遇がわかる求人票が表示される。

 インスタグラムのアカウントも作り、市内の医療機関で働く看護師のインタビューなどを紹介し、結婚や出産で一度離職した「潜在看護師」も発掘する。ラインの登録者を増やすため、市のイベントでPRしたり、ポスターを作ったりして周知する。

 厚生労働省が昨年公表した看護職員の1人あたりの人材紹介手数料は、全国平均で約57万円(2021年度)。ハローワークなど、無料の求人方法もあるが、求職者にとっては、人材紹介会社に登録して転職先を探すのが一般的だという。

 医療機関側にも「急いで採用したい」などの事情があり、有料の紹介会社の利用が広がっている。同省には「手数料に上限を設けるべきだ」などの声も寄せられているという。

 全国の都道府県医師会によると、SNSで会員の求人を拡散している医師会はほかになく、川崎市医師会独自の取り組みとみられる。市医師会の岡野敏明会長は「どこも人材不足と採用時の高額な費用に苦しんでいる。将来的には医師会だけでなく、看護協会や薬剤師会とも協力して仕組みづくりをしていきたい」と意気込んでいる。

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