東京女子医科大(東京都新宿区)と同窓会組織「至誠会」が医学部の子女枠推薦入試を受けた受験生側から寄付金を受け取っていた問題で、2019年9月に受験生を審査した同会の理事らが、寄付額などを点数化した「貢献度」を判定に用いていたことがわかった。同大は同11月、文部科学省から入試選考に関する照会を受けた際、「適正に行っている」と回答しており、同省は詳しい経緯の報告を求めている。
問題の推薦入試は、〈1〉3親等以内に至誠会の会員(卒業生)か準会員(在校生)がいる〈2〉同会の推薦を受ける――ことを条件としており、19年は14人が同会に推薦審査を依頼。9月末に筆記と面接が行われた。
読売新聞が入手した19年の審査に関する内部資料によると、大学と至誠会への寄付額と、会員の親族が同会の会合に参加した回数が「貢献度」として点数化され、筆記や面接、高校の内申点の合計点に加算されていた。
この年の推薦入試の募集人員は「約7人」だった。審査を担当した至誠会の業務執行理事ら3人は、7位と8位の生徒の総合点が僅差で、2人とも「貢献度」が14人の中で2番目の7点だとして、8位の生徒も推薦することを決めた。この2人の7点はいずれも寄付で得たものだった。
審査の結果については、面接などに関与していない至誠会理事にも報告されたが、寄付額を点数化したことについての言及はなかった。
審査の結果は、当時至誠会の代表理事だった同大の岩本絹子理事長(77)にも報告されており、岩本氏は翌10月、同大の学長に8人を推薦することを通知。大学の試験ではこのうち7人が合格した。
文科省には翌11月頃、至誠会の審査について「寄付金額の多さで判断している」との情報が寄せられ、同省入試不正対応窓口は同月下旬、大学側に報告を求めた。これに対し、同会は大学を通じて「寄付金額の多さで推薦の授与・不授与を判断したという事実は一切ない」と回答していた。
だが、至誠会では21年の入試まで、受験生が同会に提出する「推薦審査依頼書」に寄付の実績を記載させる運用を続けていた。
同大の子女枠の推薦入試を巡っては、至誠会の理事が受験生に対する面接の場で、同席した保護者らに寄付を打診したケースがあったこともわかっている。文科省は、私大の入学に関して寄付金を収受したり、募集や約束をしたりすることを禁止している。
面接官は同窓会組織の理事ら
東京女子医大への推薦を得るための至誠会の審査はどのように行われたのか。
至誠会の資料によると、初年度の2018年を除き、22年までの審査は筆記試験と面接で行われた。筆記は、大学の沿革や創立者・吉岡弥生の歩みなどについて記述する設問が並んだ。
面接には保護者ら親族も同席し、建学の精神への理解や、同大への貢献の実績などについて確認が行われていた。面接官は、同大理事を兼ねる至誠会理事らが担当しており、18、19年は面接官3人全員が同大理事の兼務者だった。18年の面接では保護者らに寄付を打診したケースがあったこともわかっている。
こうした審査を経て至誠会から推薦を得た生徒は、大学での選考に進み、改めて筆記試験や面接を受験する仕組みだった。同大は今年度の試験から、子女枠の推薦入試に至誠会が関与しない仕組みに変更した。