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2024.04.22 19:39:29

AI・医療など若手研究者の国際交流・人脈作りを支援…文部科学省が1チームに最大5億円を補助

 文部科学省は、人工知能(AI)や医療など先端技術の国際共同研究に加わる若手研究者チームを対象に、日本からの渡航費や研究集会の開催費などの支援に乗り出す。海外のトップ研究者との交流・人脈作りを後押しすることで有望な共同研究で成果を出し、低迷する日本の研究力の強化につなげる。

 国立大への運営費交付金の削減などで、日本の研究者は自由に使える経費が少なく、国際学会に出席するための資金捻出にも苦慮している。実験器具の購入費や研究員の人件費支出を優先する研究室も多い。

 新制度では、若手が主導し、先進7か国(G7)を中心とした米欧や豪州などと共同研究する活動を支援する。経済安全保障上、中露との研究は含めない。

 具体的には渡航費や滞在費のほか、合宿形式で行う研究集会で使う会場の経費、国内に招く海外研究者への謝金などに使ってもらう。

 支援対象は、AIやエネルギー、半導体、医療など計8分野に関する先端研究のチーム。すでに、国立研究開発法人の科学技術振興機構(JST)と日本医療研究開発機構(AMED)が52のチームを選んだ。

 このうち大阪大のチームは米国と連携した次世代半導体の研究を進め、東京大のチームはフィンランドと共同でAIと通信を融合させた情報技術の研究を行う。

 文科省は、2022年度に設けた基金501億円を財源に24年度から支援を本格化。5年間で1チーム最大5億円、現時点で28年度までに最大166億円を補助する。JST分が補助金の7割以上、AMED分が5割以上を交流や人脈作りに活用する。有望な国際共同研究への参画を促し、優れた成果を生む好循環を作る。

 文科省の科学技術・学術政策研究所が昨年発表した統計によると、引用された回数がトップ10%に入る重要論文の数で、日本は過去最低の13位になるなど国際地位が低下。コロナ禍の渡航制限や経済的理由で若手が留学に消極的になり、国際共同研究が減ったことも要因だ。

 日本と事情は違うが、米英も22年以降、同様の事業を打ち出した。米国は先端技術の中国への流出防止策を厳格化した一方、同盟国との研究交流を促す事業を開始。英国は20年の欧州連合(EU)離脱の影響で国際共同研究が縮小し、交流を強化する事業を始めた。

 JSTの橋本和仁理事長は「今回の支援をきっかけに日本の研究者が国際頭脳循環のネットワークに入り、研究力を向上させるチャンスにすべきだ」と話す。

2024.04.19 18:46:57

受動喫煙による肺がんは、喫煙者と異なる遺伝子変異を誘発か…良性腫瘍のがん化促す可能性

 国立がん研究センターなどの研究チームは、受動喫煙が肺がんを引き起こす仕組みの一端を明らかにしたと発表した。喫煙者の肺がんとは異なる遺伝子変異を誘発し、良性腫瘍のがん化などを促していると考えられるという。

 国内の肺がんの死亡者数は年間約7万6000人で、日本人のがんの中で最も多い。他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙は肺がんの発症リスクになることが分かっていたが、発がんの仕組みは不明だった。

 チームは、同センター中央病院で肺がん手術を受けた女性413人が提供したがん細胞の遺伝情報を解析。喫煙者と、継続的な受動喫煙の経験がある人、ない人の3グループに分けて比較した。

 その結果、受動喫煙の経験がある人では、良性腫瘍をがん化させたり、がんの悪性度を増したりしているとされる「 APOBECアポベック 」というタイプの遺伝子の変異が多くみられた。一方で、喫煙者の肺がんでよくみられるタイプの遺伝子変異は少なかった。

 同センター研究所の河野隆志・ゲノム生物学研究分野長は「受動喫煙の健康リスクを遺伝子レベルで明らかにできた。APOBEC変異を抑える薬の開発が受動喫煙による肺がんの予防や治療につながる可能性も示せた」と話している。

2024.04.19 18:40:13

感染症対策の政府計画、経済活動とバランス図り「柔軟かつ機動的」に切り替え…コロナ教訓に

 次の感染症危機に備え、政府が改定する「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の概要が判明した。新型コロナウイルスの教訓をもとに、新たにワクチンや水際対策など7項目を追加した。経済活動とのバランスを図るため、状況の変化に応じ、感染対策を「柔軟かつ機動的」に切り替えることも盛り込んだ。

 同計画は2013年に策定され、抜本的な改定は初めて。政府は来週にも開く有識者会議に改定案を示し、6月中の閣議決定を目指す。

 新たな行動計画では、科学的知見が不十分でも、医療の 逼迫ひっぱく 時には必要な場合、「まん延防止等重点措置」や「緊急事態宣言」など強度の高い措置を講じると明記した。措置は「必要最小限の地域、期間、業態」を対象とし、「国民生活や社会経済活動への影響の軽減を図る」と掲げた。コロナ禍で飲食店の営業時間の短縮など行動制限が長期化し、国民の不満が高まったことを考慮した。

 ワクチンを巡っては、平時から開発・製造に必要な体制や資材を確保し、発生初期には国内で開発や生産を要請するとともに、海外のワクチン確保を進めるとした。コロナ禍でマスクなど必要な物資が不足したことから、国や自治体による備蓄の推進も打ち出した。事業者には生産や輸入促進の要請を行い、医療機関などに十分に行き渡る仕組みを作る。

 感染症の大流行は、1968年の香港風邪や2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、20年のコロナなど、一定の周期で発生している。政府は実施状況を年度ごとに点検し、今後はおおむね6年ごとに計画を見直す方針だ。

不断の点検と見直し欠かせず

 新型コロナウイルス禍では、政府は感染拡大の防止に軸足を置き、国民の行動や経済活動を長期にわたって制限した。国産ワクチンの開発が諸外国に後れを取ったほか、マスクなど必要な物資も不足し、多くの課題が浮かび上がった。

 行動計画の改定案では、社会経済活動と感染対策の両立を重視し、平時からワクチン開発や物資の備蓄など体制を整えるとした。

 感染症対策の司令塔となる内閣感染症危機管理統括庁の幹部は「また必ずパンデミック(世界的大流行)は来る」と警戒を緩めないよう訴える。行動計画は実行されているかどうか。不十分な点はないか。コロナ禍の教訓を生かすためにも、官民による不断の点検と見直しが欠かせない。(政治部 松本健太朗)

2024.04.18 15:52:49

「グーグルが悪評を放置」医師ら60人が提訴へ…地図上の口コミ、「営業権の侵害」

 米グーグルが提供するインターネットの地図サービス「グーグルマップ」の口コミ欄で、一方的に投稿された悪評を放置されて営業権を侵害されたとして、全国の医師ら約60人が18日、グーグルに損害賠償を求める集団訴訟を東京地裁に起こす。悪質な投稿を書かれた側が、投稿者自身ではなく、サービスを提供するプラットフォーマーの賠償責任を問う訴訟は異例だ。

 グーグルマップはネット上で店舗や施設の名前、連絡先、住所などが表示され、グーグルのアカウントがあれば、利用者が匿名で5段階の評点をつけたり、口コミを投稿したりできる。

 口コミ欄は利用者の平均的な評価や施設の詳細が分かるとして支持され、地図サービス利用者の99%がグーグルマップを利用しているとの民間の調査結果がある。一方、「悪意に満ちた投稿が書き込まれる」などと、その「弊害」を指摘する声も出ていた。

 訴訟を起こすのは、経営する医療機関がグーグルマップに掲載された東京や神奈川、愛知、大阪、福岡など全国各地の医師や医療法人。口コミ欄に「頭がいかれている」「人間扱いされなかった」などと悪評を投稿され、5段階の評点が1のケースもあった。診察内容には守秘義務があり、口コミ欄に反論を投稿することも難しく、グーグルに削除を求めても応じてもらえなかった医師もいるという。

 口コミを巡り、書き込まれた側が投稿者を特定して損害賠償を求める訴訟はあるが、特定までに費用や時間がかかるとされてきた。

 今回は、サービスの提供で広告収入などの利益を得ているグーグルを被告とする点に特徴がある。グーグルが悪質な口コミが掲載される状況を放置していることで、原告らが悪評への対応を強いられるなどの不利益を被り、営業権を侵害されたと主張する。原告1人あたり2万3000円、計約150万円の賠償を求める。

 グーグルマップに関する苦情は、総務省の「違法・有害情報相談センター」にも寄せられている。相談件数は2020年度の103件から、22年度は180件に増加している。

 原告代理人の中沢佑一弁護士は「グーグルマップは誰もが利用する社会インフラにもかかわらず、十分な対応がされず、書かれた側が不利益を受け続けている。被害をなくすには、投稿の場を設けたプラットフォーマーの責任を問う必要がある」としている。

 グーグルは取材に「不正確な内容や誤解を招く内容を減らすよう努めており、不正なレビューは削除している」と回答した上で、今回の訴訟については「コメントを控える」とした。

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