政府は、救急治療や手術で入院した患者に早期からリハビリを実施し、身体機能を回復させて退院につなげる取り組みの強化に乗り出した。6月から適用された診療報酬で、入院後48時間以内に患者全員の状態を評価し、必要に応じてリハビリ計画を作成するよう後押しした。入院の長期化を防ぎ、医療費の抑制を図るとともに、患者には日常生活を早く取り戻せる利点がある。
入院患者は寝たきりの状態が続くと筋力が低下し、入院が長期化したり、退院後に介護が必要になったりする恐れがある。
今回、リハビリの強化を促したのは「急性期病床」と呼ばれる病床だ。医師や看護師が手厚く配置されているが、重症者などに対応するのが本来の役割で、リハビリが遅れたり十分に実施できていなかったりするケースがある。一方で入院基本料が高く設定されており、入院が長引けば、医療費が膨らむ可能性がある。
早期リハビリでは、入院から48時間以内に理学療法士や看護師らが、患者が車椅子からベッドに移動できるかなどの身体機能や、食事ができるかなどの栄養状態をチェックする。その判定結果に基づき、患者ごとにリハビリ計画を作成し、ベッドで手を動かしたり起き上がったりする訓練や、筋力トレーニングなどを実施する。
リハビリは平日だけでなく、土日祝日も取り組めるよう求めた。厚生労働省が入院患者約15万人分のデータを分析した結果、休日にもリハビリをした人は平日のみの人と比べ、退院時に身体機能が1・3倍回復していた。
栄養状態が悪化すると身体機能の低下につながるため、管理栄養士による栄養管理も強化する。
新たな診療報酬では、急性期病床でこうした取り組みを実施した場合、患者1人につき1日あたり1200円を上乗せする。最長で14日間算定できるため、最大1万6800円になる。
病棟に理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職を2人以上、管理栄養士を1人以上、常勤で置くことが条件だ。 誤嚥性 肺炎などを防ぐため、かむ力やのみ込む力などの 口腔 機能が低下しないよう必要な管理体制の整備も求める。
日本理学療法士協会の斉藤秀之会長は「入院から2週間は簡単なものでも構わないので、早い段階からリハビリを実施すれば、早期退院につながる。急性期病床でも多くの病院が積極的に取り組むことが重要だ」と話している。