記事・コラム 2018.11.10

医者が知らない医療の話

【2018年11月】自然免疫の主役『マクロファージ』

講師 中川 泰一

中川クリニック

1988年関西医科大学卒業。
1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。

 前回、免疫系の概要に触れた。自然免疫の主役であるマクロファージだが、近年それ以外にも様々な働きをしていることがわかってきた。

 私自身はマクロファージは免疫系全体のコントロールにも深く関与していると思っている。

 そもそもマクロファージに対するイメージは細菌やウイルスなどを貪食し、分解、消化することにより自然免疫を担う細胞だが、単にそれだけではなく、サイトカインなどの炎症性メディエーターを産生し炎症反応を誘起し、更に分解・消化された細菌やウイルス由来のペプチド抗原をMHC 分子上に提示させ、T細胞を活性化させることにより免疫応答を誘導することがわかったてきた。

 現在のところ定説としては、マクロファージにはM1とM2の2種類があり、M1マクロファージは貪食、炎症などにも関与し、M2マクロファージは炎症を抑える。 M1が起こした炎症を抑えるために変化したものがM2であるという説もあるがもともと別のものとの説が有力だ。更に言えばマクロファージは多くの働きをしていることが明らかになって来たのだからもっと多くの種類があっても然るべきだと思う。

 実際、身体中ほぼすべての臓器にはマクロファージが分布し、これらは組織マクロファージと呼ばれ生体に最も多く存在する抗原提示細胞でもある。そして身体全体にマクロファージのネットワークを形成している。

 ちなみにマクロファージとは組織の中にあるものを指し、組織内に入る前の血液中にある段階では単球(monocyte)と呼ばれている。

 これらの組織マクロファージは貪食能を有するという共通点はもっているが個々には異質な細胞集団であり、存在する臓器や局在によって機能、細胞の形態、細胞表面分子などが異なる。また、これら組織マクロファージは免疫応答に関与しているだけではなく、古くなった細胞の除去、組織の再構築あるいは炎症応答後の組織の修復などの役割も担っており、組織の恒常性の維持にかかわっていると考えられている。

 有名な組織マクロファージだけでも以下の通り多彩で多くの働きをしている。

  • 中枢神経系の ミクログリア細胞(Microglia): 脳細胞分化、シナプス再構成および死神経細胞の除去の促進
  • 腸管(Intestinal macrophages):腸管のホメオスタシスの維持、腸内細菌の制御
  • 脂肪組織(Adipose tissue-associated macrophage):脂肪生成、インシュリン感受性の制御
  • 肺胞(Alveolar macrophage):吸入に伴い肺胞上皮に沈着した物質の除去
  • 表皮中のランゲルハンス細胞(Langerhans):外界より侵入してきた抗原物質を取り込み、T細胞に抗原提示
  • 骨の破骨細胞(Osteoclast):骨破壊と骨吸収
  • 脾臓内の赤脾髄マクロファー ジ(Red pulp macrophage)、マージナルゾーンマクロファージ(Marginal zone macrophage)、可染体マクロファージ(Tingible body macrophage):感染赤血球や古くなった赤血球の除去 、血中由来抗原の取り込み、免疫寛容の誘導、微生物業減退の取り込み、アポトーシスB細胞の除去
  • 血液(Ly-6clo monocytes):赤血球形成および造血幹細胞の維持、血液中の微生物およびcell debrisの除去

 どうです? マクロファージ面白そうでしょ?

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