
坂口先生の発見された「制御系T細胞(Treg細胞)」がノーベル医学賞に選ばれた。以前から、少し触れていたが、私のiRF(Immune Regulating Factor)はマクロファージを活性化し、このTreg細胞を活性化、さらに再教育(reprogulaminig)して、免疫系の調整を行なっている。中国の知り合いの研究者や台湾のバイオ企業なんかは、この原理を理解してくれていたので祝電?が来た。主にWe Chatでだが。「Congratulations, doctor!Treg Got the Nobel prize!Your Macrophage regulator Plays a significant role on the activation of treg!Great job!」で、喜んでウチのスタッフに見せびらかしたのだが、「何浮かれてんの?別に先生がノーベル賞もらったわけじゃ無いでしょ。」だと!
「そりゃそうだけど、海外からわざわざ褒めてくれてるのに、お前ら、冷たすぎるやろ!」
まあ気を落ち着かせて、改めて、iRF(Immune Regulating Factor)の説明をしておきたい。
一般的には「マクロファージ活性化療法」としている。もちろんTreg細胞の活性化の他にも色々と作用があって効果を発揮しているのだが、自己免疫性の疾患に対しては、このTreg細胞の活性化が大きな役割を果たしている。
まず、マクロファージは単なる異物処理細胞にとどまらず、制御性T細胞(Treg)の誘導・成熟・機能維持に深く関与する調節性免疫細胞である。
ここで重要なのはマクロファージスペクトラムとTreg制御の関係についてである。
マクロファージについて、従来のM1/M2という二分類は、マクロファージの極端な両端を定義するにすぎず、実際には、その中間に多様な機能的状態を持つマクロファージのスペクトラム(連続体)が存在する。これらは病態・組織環境・代謝状態などに応じて再プログラムされる柔軟性を持ち、その一部はTreg誘導促進型、一部はTreg抑制型の性質を有する。
たとえば、M1/M2の中間型であるM2b型は、IL-10とTNF-αを同時に分泌することで、部分的な免疫抑制と炎症誘導のハイブリッド的性質を持つ。このようなマクロファージは、癌環境下ではTregの誘導に関与する一方で、適切な刺激下では逆にTregの制御を解除する方向にも働く可能性がある。
このようなマクロファージスペクトラムの多様性こそが、がん免疫療法における精密な免疫制御のターゲットとなり得る。すなわち、特定の段階にあるマクロファージを操作することで、Treg制御を最適化し、免疫抑制的な腫瘍環境を可逆的にリプログラムできると考えられる。

まず、自己免疫性疾患のように、免疫細胞が自己の臓器を攻撃している場合について、マクロファージがTreg細胞を活性化させることにより、免疫細胞の攻撃を制御する。
つまりマクロファージが分泌するIL-10、TGF-βなどのサイトカインは、ナイーブT細胞のTregへの分化を促進すると同時に、既存のTregの安定性と抑制機能の維持に寄与する。また、マクロファージは抗原提示能を通じてTregの活性化や局所的な機能の発揮を促進する。
また、炎症環境下では、マクロファージの活性化様式がTregの性質に可逆的な影響を与えることが知られている。M2様マクロファージは免疫寛容に寄与し、Tregの誘導に有利な環境を提供する。一方、M1様マクロファージはIL-6やIL-12などの炎症性サイトカインを通じてTregの抑制機能を再プログラムし、状況に応じて抑制的T細胞を炎症促進型へと転換させることもある。
このように、マクロファージとTregは静的な役割分担にとどまらず、病態や組織環境に応じて互いに可塑的に変化しながら、免疫恒常性と炎症応答の間のバランスを動的に調節している。マクロファージによるTregの“再教育”は、免疫のアクセルとブレーキを同時に制御する高度なフィードバック機構の一端を担っていると考えられる。

次に、マクロファージによるTreg再教育と癌抑制の関係について。
マクロファージは癌免疫において二面的な役割を果たすが、そのうちの一つにTreg細胞の機能再教育を介した抗腫瘍作用がある。炎症環境において、M1様マクロファージが分泌するIL-6やIL-12は、Tregの免疫抑制機能を低下させたり、炎症誘導型T細胞への再分化を誘導したりすることが知られている。このプロセスは「Tregの再教育」として捉えられ、がん微小環境(TME)において抑制的なTregの影響力を弱め、CD8+ T細胞などのエフェクター細胞の活性を回復させる方向に働く。
この働きによって、マクロファージは単独で腫瘍細胞を排除するのではなく、Treg細胞の免疫制御機能に対して介入し、免疫抑制環境から免疫活性化環境への転換を引き起こす。これは特に初期の腫瘍形成段階や、免疫チェックポイント阻害薬と併用する戦略において重要な役割を果たすと考えられている。
この様に、マクロファージはTreg細胞の性質を動的に調節することで、がんに対する免疫応答のバランスを左右する中心的な存在である。また、マクロファージは単一の性質を持つのではなく、多段階に分化したスペクトラム上に存在し、その各段階がTregに対して異なる影響を与える。この関係性の理解は、腫瘍随伴マクロファージ(Tumor-associated macrophage: TAM)最適化において不可欠である。
この他、今回、マクロファージ活性化のその他の作用も多々あるののだが、Treg細胞に対してを簡単にまとめた。
自己免疫性疾患に挺しての効果原理は異論がないと思うが、癌治療に対しては腫瘍随伴マクロファージ(Tumor-associated macrophage: TAM)とマクロファージのスペクトラムに対しての誤解(見解の相違?)が多いと思う。大体の先生方が、マクロファージはM1/M2の二型しかないと思われてて、意見が噛み合わない。「マクロファージの活性化はTAMを活性化して、結果的に癌を惹起するのではないか。」と思われるが、そこの点が異なることをわかってもらいたい。