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2024.04.09 15:28:05

災害時に「スマホ位置情報」を自治体が取得…救助や安否確認の迅速化へ、総務省調整

 総務省は地震や台風などの大規模災害時、被災自治体が安否不明者のスマートフォンの位置情報を取得できるようにする方向で調整に入った。現在、位置情報を取得可能なのは警察などの一部機関に限られており、救助や安否確認の迅速化に向け、今夏までに制度を見直す。

 通信事業者は個人情報を保護する義務を負っているが、国のガイドラインでは、救助が必要な人の「生命または身体に対する重大な危険が切迫している」場合に限り、「警察、海上保安庁、消防、その他これに準ずる機関」から要請があれば、位置情報を提供できると定められている。

 今年1月の能登半島地震では、石川県が作成した安否不明者リストを基に、総務省消防庁がNTTドコモにそれぞれの位置情報の提供を求めた。その結果、68件の位置情報が寄せられ、金沢市内の病院にいることなどが分かり、不明者の絞り込みに役立った。

 位置情報の取得が一部機関に限定されているのは、位置情報のプライバシー性が極めて高く、電気通信事業法が「通信の秘密の保護」を定めているためだ。ただ、通信の秘密も「公共の福祉」の観点から、一定の制約を受けるとされる。

 総務省は国などを経由せず、自治体が安否不明者の位置情報を直接取得できるようになれば、不明者がいる場所を速やかに特定し、より効率的な災害対応を実現できると期待している。

 制度の見直しでは、ガイドラインが規定した「その他これに準ずる機関」について、自治体が災害時に首長をトップとして設置する災害対策本部が該当するとみて、通信事業者への位置情報の提供要請を容認する案が浮上している。

 自治体の危機管理担当部署を「準ずる機関」と解釈したり、ガイドライン自体を見直したりする可能性もある。

 総務省は通信事業者各社と制度設計に関する協議をすでに始めている。スマホが水没などで圏外の場合、過去の位置情報を提供することの是非を含め、早ければ6月頃までに結論を出す方向だ。

2024.04.09 12:45:31

新型コロナ特例貸付、昨年の返済は37%…今後も同率推移なら6000億円以上が回収不能の可能性

 新型コロナウイルスの感染拡大期に生活困窮者らの暮らしを支えるため、計1兆4431億円の貸し付けが行われた国の特例貸付制度で、2023年の返済額は、予定された1047億円の37%にとどまったことが、厚生労働省のまとめでわかった。現状のまま推移すると、回収できない貸付金は将来的に数千億円に上る可能性がある。

 20年3月~22年9月に実施された特例貸付は国費で賄われた。対象はコロナ禍による休業などで収入が減少した人で、都道府県社会福祉協議会から、1世帯あたり計200万円まで、無利子で借りられた。

 返済は23年1月から全国で始まり、同12月末までに約1047億3300万円が返済期限を迎えた。返済されたのは37%にあたる約387億6800万円で、未回収は約659億6500万円に上る。

 返済は34年頃まで続く見込み。厚労省によると、返済率が4割ほどで推移した場合、未回収は将来的に数千億円に上り、6000億円以上になる恐れもある。

 全国社会福祉協議会は、困窮者がほかに借金を抱えていたり、収入がコロナ禍前まで回復していなかったりする事情があるとみている。各地の社協は、返済を促すため、督促の書類送付や自宅訪問をしている。

 一方、返済が低調なのは、国が当時、迅速な貸し付けを打ち出したことが背景にあるとの指摘がある。各地の社協からは「申込者の返済能力や返済の意思を十分に見極められないまま、貸し付けざるを得なかった」との声が上がる。

 厚労省は今年度、返済率の向上に取り組む。困窮者の生活再建に向けた相談体制の強化や、家計の改善などを進める自治体や社協に人件費を補助する。

 日本福祉大の角崎洋平准教授(社会福祉学)は「借りた人が少しずつでも返せるよう、返済の期間や金額について国は柔軟に対応してほしい。特例貸付が支援に役立ったかどうか詳しい検証も必要だ」と指摘する。

 ◆ 特例貸付制度 =一時金の「緊急小口資金」と、生活再建のための「総合支援資金」があり、およそ160万世帯が利用したとみられている。住民税の非課税世帯などは、返済が免除される。

2024.04.08 18:17:13

気管支ぜんそくの診断、血中の分泌物質検査で高精度に…阪大などのチームが実用化目指す

 血液に含まれる分泌物質内の「ガレクチン10」と呼ばれるたんぱく質が気管支ぜんそくの診断や進行の予測に活用できることを確認したと、大阪大などのチームが発表した。従来の診断方法より精度が高まるといい、数年後の実用化を目指すとしている。論文が国際医学誌に掲載された。

 気管支ぜんそくは空気の通り道である気管支が慢性的に炎症を繰り返すことで狭くなり、呼吸困難などの発作が生じる病気。世界保健機関(WHO)などによると、世界の患者数は2億6200万人、国内では推定で1000万人とされる。血中の白血球の一部「好酸球」の量などで診断しているが、肺の機能が低下する「慢性 閉塞へいそく 性肺疾患(COPD)」との区別が難しいなどの課題があった。

 阪大の武田吉人准教授らは、採血で得る血液中の分泌物質「エクソソーム(細胞外小胞)」が体内の情報を伝達している役割に着目。エクソソームを解析し、含まれる約3000種類のたんぱく質とぜんそくとの関連を調べた。

 その結果、炎症などに関わるたんぱく質のガレクチン10の量が増えると、ぜんそくの傾向が強いことを確認。診断の精度を調べると好酸球の73%に対して80%に高まったという。

 気管支ぜんそくに詳しい佐野博幸・近畿大教授の話「重要な研究だ。ガレクチン10の量に応じて適切な薬が選べるようになれば、治療の効率化につながる」

2024.04.04 18:06:15

男性育休取得率が都内で過去最高38・9%、期間も長期化…「産後パパ育休」制度が後押しか

 東京都内の事業所を対象に都が昨年行った従業員の育児休業に関する調査で、男性の育休取得率が38・9%に上り、2002年度の調査開始以来、最高を更新した。育休期間も前年度より長期化した。

 調査は昨年9月、都内2500事業所(従業員30人以上)とそこに勤務する男女5000人を対象に行い、622事業所と1133人から回答を得た。

 昨年3月までの1年間で配偶者が出産した男性は3116人で、このうち1212人が育休を取得した。取得率は前年(26・2%)から12・7ポイント上昇した。22年10月、子どもの出生後、8週間以内に父親が休みを最長4週間取得できる「産後パパ育休」制度が始まったことも取得率を押し上げたとみられる。

 取得期間は、「1か月以上3か月未満」(32・4%)が最多。次いで「3か月以上6か月未満」(14・4%)、「6か月以上1年未満」(11・7%)の順で多かった。前年も首位は「1か月以上3か月未満」だったが、2番目が「5日以上2週間未満」、3番目が「2週間以上1か月未満」で、取得期間が前年より延びる傾向がみられた。

 男性の育休取得の課題について、事業所と従業員それぞれに尋ねた質問(複数回答)では、労使ともに、「代替要員の確保が困難」が首位、「休業中の賃金補償」が2番目に多かった。ただ、3番目は、事業所の回答が「男性自身に育休を取る意識がない」だったのに対し、従業員は「職場がそのような雰囲気ではない」を挙げ、認識のずれがあることがわかった。

 都の担当者は「更なる育休取得率向上に向けて、引き続き育休を取りやすい職場環境作りを後押ししていきたい」としている。

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