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医師が税法違反を犯した場合、どのような処分が下されるかご存じでしょうか?
意外と知られていませんが、医師の税法違反の行政処分はかなり重く、悪質なケースと判断された場合には免許取消になる可能性があります。
今回は、税金関連で医師が気をつけたいペナルティについてお伝えします。間違っても“うっかり違反”を犯すことがないよう、しっかりチェックしていただきたいです。
覚えておきたい「附帯税」とは
税金のペナルティについてお伝えするにあたり、まず覚えていただきたいのが「附帯税」というキーワードです。
附帯税とは、納税者が申告期限までに申告書を提出しなかったり、支払うべき期限までに税金を納付しなかったりしたときに科される税金のこと。それ以外にも、税務調査を受けた結果、間違いが指摘されて自主的に修正申告を行なったり更正処分を受けたりした場合にも、本来納める税金とともに「附帯税」を納める必要があります。
附帯税は、本来の税金にプラスして、ペナルティという形で支払うものです。そして所得税や法人税などの計算をする上で経費とは認められません。
本来納めるべき税金のことを「本税」、本税の納付を怠った場合に科されるペナルティの総称を「附帯税」と呼びます。附帯税には、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税、延滞税、利子税の6種類があります。
次項からは、それぞれの附帯税について簡単に解説します。
附帯税①過少申告加算税
附帯税の1つ目、過少申告加算税とは、期限内に確定申告をしたけれど、間違いがあり、修正申告(申告のし直し)によって追加の税金が発生した場合のペナルティのこと。
税額は、追加で納付する本税×10%となります。
※追加税額のうち、期限内に申告した額か50万円のどちらか多い方の金額を超える部分については10%ではなく15%
附帯税②無申告加算税
附帯税の2つ目、無申告加算税は、期限内に申告書を提出しなかった場合で、納めなくてはいけない税金があった場合のペナルティのこと。
たとえば確定申告であれば、期限は3月15日です。3月15日までに申告ができなかった場合、無申告加算税が科されることとなります。
税額は、納めるべき本税×15%となります。
※ただし、税務調査が予想される前に自ら申告した場合は5%に減額
附帯税③不納付加算税
附帯税の3つ目、不納付加算税は、源泉所得税の納付期限を過ぎてしまった場合のペナルティのこと。医師の場合、雇用しているスタッフの負担する税金を期限までに納められなかった場合などに発生するペナルティです。
税額は、納付税額×10%です。
※ただし、税務調査が予想される前に納付した場合は5%に減額
附帯税④重加算税
附帯税の4つ目、重加算税は、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税が生じる場合で、事実を隠ぺいしたり仮装(偽造や捏造)したりした場合に過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税の代わりに科されるペナルティのこと。
税額はそれぞれ、次のとおりです。
・過少申告加算税の代わりに科される場合:追加本税×35%
・無申告加算税の代わりに科される場合:納付税額×40%
・不納付加算税の代わりに科される場合:納付税額:35%
附帯税⑤延滞税
附帯税の5つ目、延滞税は、期限内に税金を納められなかった場合のペナルティのこと。
税額は、未納となっている本税×「年14.6%と特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合」となっています。ただし、納付期限の翌日から2カ月間は「7.3%と特例基準割合+1%のいずれか低い割合」となります。
附帯税⑥利子税
附帯税の6つ目、利子税は、公認会計士や監査法人の監査を受けなければならない等の理由で申告期限を延長した場合の利息にあたる税金です。
税額は、7.3%と特例基準割合+1%のいずれか低い割合となります。
故意に納税から逃れようとするとどうなる?
特に大きなペナルティが科されるのは、悪意のもと、納めるべき税金を納めなかった場合です。その場合には、先ほど附帯税の4つ目として紹介した「重加算税」が科されることとなります。
重加算税とは、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税が生じる場合で、事実を隠ぺいしようとしたり、仮装したりしたときにペナルティとして科される税金です。具体的には、二重帳簿を作成したり、帳簿書類を故意に破棄したり、隠匿したり、改ざんしたり……と、意図的に本来の収入を計上しない場合や書類を改ざんした場合など、脱税意識が強いとみなされるときに科されます。
過少申告加算税の代わりに科される場合は、追加本税×35%。無申告加算税の代わりなら、納付税額×40%。そして、不納付加算税の代わりであれば、納付税額×35%と、附帯税の中でも最も大きな負担となっています。
なお、これ以外にも、医師が脱税すると重い行政処分が下されることとなります。医師法第7条第1項および歯科医師法第7条第1項では、医師の行政処分の内容について、以下の3つとしています。
①戒告(厳重注意を言い渡す懲戒処分のこと)
②3年以内の医業の停止
③免許の取消し
重い行政処分の場合は「医師免許の取消し」もありえるのです。通常、脱税になることはないものの、納税額が大きい場合や、ご自身で書類を改ざんしてしまったり、意図的に隠ぺいしてしまったりした場合には、重い行政処分が科されるケースもあると覚えておきましょう。
注意!医師はペナルティが高額になりがち
勤務医は高収入である分、納税額も高額なものとなります。ペナルティである附帯税は、基本的に納税額が大きければ大きいほど高額になる仕組みですから、勤務医のペナルティはかなり高額にのぼります。くれぐれもご注意ください。
特に“うっかりミス”が起こらないように注意していただきたいのは、過少申告加算税と無申告加算税、そして延滞税です。期限内に確定申告をしたけれど間違いがあった場合には「過少申告加算税」が、期限内に申告書を提出しなかった場合には「無申告加算税」が、期限内に税金を納められなかった場合には「延滞税」が科されることとなります。
医師の先生方は常にご多忙ですから、税理士に依頼する時間すらないまま、誤った形で納税してしまったり、期限を過ぎてしまったりすることがあるもの。
後になって「悪気はなかった」「時間ができたら対応するつもりだった」などと言っても通りません。悪意の有無にかかわらず、どんな人にもペナルティが科されることとなります。
特に気をつけたいのは確定申告です。とにかく申告期限内に、まずは確定申告を提出して税金を納めることを推奨します。そのあと、数字が間違っていたり、追加で源泉徴収票が出てきたりした場合には、正しい数値を修正申告しましょう。こうすれば無申告加算税は回避できますし、過少申告加算税や延滞税というペナルティが発生したとしても、支払う金額は比較的少額で済みます。
多忙でいらっしゃるのは重々承知ですが、多額のペナルティを科されたり、医業停止や免許取消しになってしまっては悲劇です。
何があっても、まずは期限内に申告をする。これが大切ですので是非とも忘れないでいただきたいと思います。
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