今乗っているバイクXL883Rを購入した際の事だが、納車されるまで2カ月ほど待たされた。その前に乗っていたDS400を下取りに出したため、バイクに乗れない日々をYouTubeの動画を見ることで気を紛らせていた。一目惚れしたXL883Rのことを知りたいのは、インドの結婚と同じだ。大体のプロフィールは分かっていても、結婚相手のことをもっと知りたい。家族や友人なら本当のところを知っているだろうから、話を聞きたい、プライベートな写真や動画があれば見てみたい。そんなワクワクした気持ちで納車日を待ちわびていた。
Sportster
Netの検索エンジンで、「XL883R」や「sportster」などと入れて文献検索の要領で調べると、Harley-Davidsonの多くの車種が引っかかって来る。Harleyの歴史は古く、第一次世界大戦(1914~1918年)や第二次世界大戦(1939~1945年)には軍用車両として使われた。エンジンのタイプにより、フラットヘッド(1920年代)、ナックルヘッド(1930年代)、パンヘッド(1940年代)、ショベルヘッド(1960年代)、エボリューション(1980年代)、ツインカム88(1990年代)、レボリューション(初の水冷化・2000年代前半)、ツインカム96(2000年代後半)、ツインカム103(2010年代前半)などと呼ばれて親しまれている。
私のバイクは2007年モデルの4カムVツインエンジンで排気量は883cc、Rと付いているのはRacingの頭文字でsports性能が高い車種になる。Sportsterと呼ばれる車種はいくつかあるが、そのうち若者に圧倒的に人気のあるのがXL883N Ironというシートが1人乗りのものだ。またSportsterには1200ccのエンジンを載せた兄弟車があり、XL1200XForty-Eightは、大排気量が奏でる重量感のあるドドドドドドというHarley soundを響かせる。カスタムをして世界に1台だけのお気に入りのバイクを作れるのもHarleyが人気のある理由の一つだ。
楽しくNetの記事を読んだり動画を見たりしていたが、XL883NIronが人気車種なのでNet検索にはそちらが沢山引っかかってくるのだが、XL883Rのサイトが限られていて何年も更新されていないものが多いのに気付いた。同じサイトを見るのに飽きて来た頃、中年男性がXL883Rを買う、というバイクブログを見つけた。私と同じバイクだ。インドの結婚相手の事を理解する良い機会だ。それがOgu Channelだった。しかしこのサイトの持ち主が、XL883Rから他の車種に買い替えて、仲間で旅行に行くという趣旨のツーリング動画になったので、そのうち見なくなった。次にチャンネル登録したのがPorcomotovlog(ポルコモトブログ)だった。
MotoVlog
モトブログ(MotoVlog)とは、バイクで走る様子を動画で撮影したコンテンツのこと。バイクライフに関連する動画であれば何でもモトブログに含まれ、アクションカメラで撮影した走行動画にトークや字幕が入っているのが一般的だ。ポルコという名称は、スタジオジブリが作成したアニメ映画「紅の豚」の主人公である、イタリア空軍のエース・パイロットだった「ポルコ・ロッソ(紅の豚)」から取ったとVlogの製作者が話していた。バイクはXL883Rのタンクが赤い2003年のキャブレター車だ。最初の動画は2021年10月3日にupされている。今日の時点で視聴者数は214回だから、どちらかというとバイク日記のようなものだ。大型免許も2021年8月に取ったとあるので、私のシチュエーションと似ているから、生の声が聞けて共感できるだろうと見始めた。この方は今でも883Rに乗っていて、少しずつ乗りやすいようにカスタムパーツを買い足して楽しんでいるようだ。
バイクに乗って、いろいろな土地を訪れたり、美味しいものを食べて、自分が楽しかったこと、感激したこと、大変な思いをしたこと、夏の酷暑、冬の厳寒にどのような装備で乗り切ったか、長期ツーリング、日本一周など、自分が経験した様々な貴重な体験を伝えたい、バイク乗りとしてその知識を共有したい、仲間として役に立ちたい、自己実現、自己表現の場としてSocial networkとしてのYouTubeで発信したい、そんな思いがMotoVlogには詰まっている。最近では、視聴回数が何十万を数えるような動画を作る人に対しては、その発信力を買って企業が商品を提供する「案件動画」も増えている。いわゆるYouTuberだ。しかし、TVで大袈裟に美味しい、すごい、素敵、買いたいなどと、作り物のレポートをする芸能人と違って、基本は一般人なので「忖度しない」評価が信条だ。MotoVlogを作って発信する人達の多くに共通しているのは、良かったこと・メリット・成功体験だけでなく、悪かったこと・デメリット・失敗体験を正直に表出していることだ。一般人、普通の日本人という人格が、とてもバランスの取れた人格である、ということに気付かされる。
実は私もMotoVlogを最近始めた。医学系のものでは2017年にBabinski反射の動画をupしている。Net上になかなかNeurology関係の動画がなかったので、臨床の合間に作ったものだ。その後DS400に乗るようになってアクションカメラを買い、ショートツーリングの動画を何本かupした。しかし今の機材と違って、2019年に買ったカメラは使い勝手が悪かった。そのうち使わなくなってしまったが、最近になって、日常の足として毎日バイクに乗っている「Ray」さんという、美的感覚に優れた長身の神奈川県出身の青年が、素晴らしいMotoVlog、ショート動画、ポドキャスト、Instagramを作って載せていて、それに触発されてまた作ってみようかと思い起こしたのだ。

右腕が痛い
バイクに乗りたての時は、第三京浜を往復40km走るのも冒険だったが、最近は1日150kmを走ることも苦にならなくなった。XL883Rの力強いトルクのおかげで走りが楽だ。だが260kgという車重は筋肉に負担がかかる。2時間、3時間と右手でアクセル(Throttle)を開けて高速道路を走り、ときには狭い道路でUターン、砂利道で倒れれば起こすのに苦労するし、転倒して肩をぶつけることもある。もちろん防具を着ているのだが、その防具の硬さで筋肉はダメージを受ける。寒くなった昨年の11月頃から、右上腕から肩にかけて痛くなった。4月に入って暖かくなって来たのでだいぶその痛みも和らいできたが、右前腕の回外筋、上腕三頭筋、僧帽筋などが冷えると痛んだ。
バイクに乗る、skill upして操縦(運転)技術を上達させる、乗ったバイクで競技を行う、それは「馬に乗る、skill upして乗馬技術を上達させる、乗った馬で競技を行う」、あるいは「テニスをする、skill upしてテニスの技術を上達させる、お互いの力を試合で競いあう」、「水泳をする、skill upして水泳の技術を上達させる、お互いの力を試合で競いあう」、「ヨットに乗る、skill upして操船技術を上達させる、乗ったヨットで競技を行う」と等しい。何を言いたいのかというと、バイクに乗ることは他の競技スポーツと同じく、練習の成果を積み重ね、心身を鍛錬することによってアスリートとして高みを目指すスポーツなのだということだ。日本では、1961年(昭和36年)に日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ=Motorcycle federation of Japan)が設立され、1962年(昭和37年)には鈴鹿で第1回全日本ロードレースが開催されている。競技種目として、ロードレース、モトクロス、トライアル、スノーモービル、スーパーモト、エンデューロなどがあり、それぞれの競技が行われるためのレース場やレースエリアが作られており、選手として参加する者もそれを観戦して楽しむ人々もいて、それぞれに対して安全な配慮がなされている。もちろん公道を走る車両は、自転車にしてもスケートボードにしても四輪車にしても二輪車にしても、交通ルールを守って人に優しく安全な運転に努めなければならないのは当然のことだ。
バイクはスポーツであるから、他の競技と同じくスポーツ外傷やスポーツ障害が生じる。私が大型自動二輪の免許を取るときに、体重を増やして筋力(握力や上腕〜肩の筋肉)増強を行った話はこのエッセーの2023年12月号で書いた。その後はblippingやノークラッチギアチェンジ操作、2速からのニュートラルシフトなど、スムーズな操縦のためのskill upを繰り返し練習している。そうした努力にもかかわらず、あるいはそのための反復動作のストレスで筋肉、靭帯、関節、軟骨、末梢神経、あるいは首、肩、腰などの傷害が生じることは想像に難くない。
スポーツに関係して発生する運動器のトラブルは、大きく「スポーツ外傷」と「スポーツ障害」に分けられる。「スポーツ外傷」は明らかな受傷起点のある「けが」であり、外から加わる1回の大きな力(衝撃)によって起こる捻挫や脱臼、骨折などをいう。これに対して「スポーツ障害」は、繰り返して小さな力(ストレス)が筋肉や骨、靭帯、関節軟骨などに加わることで起こる。それは一定の部位で慢性的な疼痛や動かしにくさが持続している状態で、原因としては使いすぎ(overuse)によるものが多い。私の右腕の痛みは、バイクの操作による慢性のストレスが反復して及んでいるためのようだ。長時間アクセルを開けているための「Throttle arm」と名付けて研究対象にしても良いかもしれない。
1) ポルコモトブログ: https://www.youtube.com/@ポルコモトブログ/videos.
2) Babinski reflex: https://youtu.be/QbXAmUj_KTU?si=HWaxjVbeSstyb62Q.
3) @馬生人: https://youtu.be/7MivJGnk1B8?si=WElUvb0S4dcY9JOo.
4) 神津仁の名論卓説「Never, ever give up!」: https://www.e-doctor.ne.jp/c/kozu/2312/.
5) スボーツ整形外科(八木整形外科): https://yagi-seikei.com/sports/スポーツ整形外科/#link03.