記事・コラム 2024.07.25

OUI Inc.清水映輔CEO インタビュー 世界の失明を半分にする

第4回  クリニックを開業する

講師 清水映輔

OUI Inc.

1987年に神奈川県横浜市で生まれる。2013年に慶應義塾大学を卒業後、東京医療センターで初期研修を行う。2015年に慶應義塾大学眼科学教室に入局し、慶應義塾大学病院で後期研修を行う。2016年に東京歯科大学市川総合病院眼科で後期研修を行う。2016年に株式会社OUIを創業し、代表取締役に就任する。2019年に慶應義塾大学眼科学教室特任助教に就任する。2019年に横浜けいあい眼科和田町院を開業する。2020年に慶應義塾大学眼科学教室特任講師に就任する。

 

日本眼科学会専門医、難病指定医、身体障害者指定医など。

日本角膜学会、日本眼科アレルギー学会、Fight for vision、日本抗加齢医学会、ARVO (The Association for Research in Vision and Ophthalmology)、日本アレルギー学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本眼科AI学会、ドライアイ研究会、日本シェーグレン症候群学会、Kyoto Cornea Clubにも所属する。

 

2018 年にARVO/Alcon Early Career Clinician-Scientist Research Award、2020年に日本眼科アレルギー学会優秀賞、第14回日本シェーグレン症候群学会奨励賞、国際失明予防協会The Eye Health Heroes award、2022年に第76回日本臨床眼科学会学術展示優秀賞、第5回ジャパンSDGsアワードSDGs推進副本部長(外務大臣)賞、2023年に日本弱視斜視学会国内学会若手支援プログラム賞、令和5年度全国発明表彰未来創造発明賞などを受賞する。

クリニックを開業する

― 横浜けいあい眼科和田町院を開業されたのはいつですか。

清水:2019年ですので、もう5年目になります。

けいあい眼科受付
けいあい眼科受付

― 開業のきっかけをお聞かせください。

清水:色々な理由がありますが、地域でクリニックを開業することによって、地域の患者さんを診たかったことが挙げられます。私は診療にレイヤーがあるとおもっており、大学病院に来られる患者さんは重症度が高いですが、クリニックに来院される患者さんは大学病院の患者さんとは対照的です。末端という表現は適切ではないかもしれませんが、大学病院とは異なるレイヤーの患者さんを診ていきたいと考え、開業しました。

― 開業にあたって、苦労したことはありますか。

清水:あまりないですね(笑)。クリニックを開業することは非常に公益性の高いビジネスをするということですので、様々なルールがあり、それも新鮮でした。また大学病院であれば、経済的な負担を気になさらず、とにかく治したいという患者さんが多いのですが、クリニックの患者さんの中には経済的な面を気にされる方もいらっしゃいます。そうした患者さんの層の違いに関しては面白いと思っています。

― 開業地に関しては決まっていたのですか。

清水:ここは祖父が内科のクリニックを開業していた場所で、そのクリニックが入っていた場所は別の先生が内科を開業しています。私は同じビルの別のフロアで眼科を開業することにしたので、開業地に関しては選ぶことができませんでした。強いて言えば、それが大変なことだったのかもしれません。

― 開業にあたって、診療圏調査はされましたか。

清水:比較などの詳細な調査はしていません。というよりも、できなかったという方が正しいですね。「大丈夫だよ」という程度のことでした(笑)。しかしながら、私どもの開業後に別の眼科が同じ最寄り駅の近くに開業するという状況になり、新しい競合に関しては診療圏調査にも引っかからなかったことでしたので、それも大変なことでした。

― では、どのような増患対策をなさったのですか。

清水:増患対策に関しては色々な方法を考えているところです。このクリニックの理念は「患者さんの顧客体験を最大化する眼科診療に挑戦し続ける」ことなのですが、何か分からなくなったときや何か新しいことを始めるときにはその理念を考えながら進めていくことを大切にしています。そしてDX化が重要だと思っています。

― どのようなDX化を進めていらっしゃいますか。

清水:広告に関しては、医療法の広告規制がありますので、それに則り進めています。色々な媒体を使うことが必ずしも良いわけではないですし、ニッチなところを攻めるためにはマーケティングが必要です。そういったことをしっかり考えるようにしています。診療圏調査によりますと、この地域の人口は約5000人です。それに対して、眼科クリニックは4軒もあるので、なかなか厳しい状況ではあります。しかし逆に言うと、これ以上の競合は入ってこないということでもあるんですね。その状況の中で、私どもには月に1000人以上の患者さんが来院されています。もちろん5000人全員が眼科に通院しているわけではないので、5000人中の1000人とは言い切れないのですが、様々な対策をしつつ、何とかやり繰りをしているところです。

― 診療の特徴について、お聞かせください。

清水:私のみならず、複数の医師が在籍しており、皆が慶應義塾大学医学部眼科学教室で研鑽を積んだ眼科専門医です。それぞれの医師が専門性を活かした眼科医療を行い、複数の眼科専門医の眼で患者さんをリアルタイムに診察できる体制がありますので、幅広い疾患に対応可能です。また、症例カンファレンスを定期的に実施し、お互いの専門分野の知識を共有して、勉強しています。診療時間も平日はもちろん、土曜日、日曜日、祝日も10時から18時まで診療しています。

慶應義塾大学医学部外観
慶應義塾大学医学部外観

― 訪問診療もされているのですね。

清水:地域の方々のご要望に応じて、ご自宅や施設への訪問診療を行っています。保険診療内での診察や検査を行い、点眼薬の処方も可能です。

― 日帰り手術も特徴ですね。

清水:精度の高い医療機器のデータをもとに手術を行っています。白内障手術以外にも、眼表面やまぶたの手術、レーザー手術など、全て日帰りで手術を行います。自由診療にはなりますが、白内障手術では単焦点眼内レンズだけでなく、多焦点眼内レンズにも対応しています。

― 病診連携についてはいかがですか。

清水:慶應義塾大学病院、南青山アイクリニック、横浜市立市民病院、東京歯科大学市川総合病院、けいゆう病院、川崎市立川崎病院などと連携しています。診診連携ではスカイビル眼科にお世話になっています。

― 患者さんはご高齢の方が多いですか。

清水:ご高齢の方が多いわけでは全くありません。子どもさんも多いです。また、私どもの最寄り駅である相模鉄道本線の和田町駅は横浜国立大学の最寄り駅でもありますので、大学生もよくいらっしゃいます。女性も男性も、子どもから大人まで、あらゆる年齢層の方が来院されるのが非常に特徴的なことではないかと思っています。

― 医師の仕事と経営者の仕事のバランスをどのように取っていらっしゃるのですか。

清水:バランスは取れていないと思います(笑)。バランスを意識することもないですね。それぞれを全力でやっているという感じです。

― クリニックと研究所は横浜で、会社は東京というのは大変ですか。

清水:今はリモートの時代ですので、会社に毎日、出勤する必要はありません。社員も結果を出してくれればいいので、出勤することを求めてはいません。フルリモートの社員はいませんが、リモート勤務が多めの社員はいます。