医療ニュース 2024.02.02

保育士のモデル賃金公開、待遇改善へ「見える化」…給与低く人手不足が深刻化

 政府は都道府県に対し、保育園ごとに保育士のモデル賃金を公開するよう求める方針を固めた。「見える化」により、保育士の待遇を改善するための予算が適正に使われているか検証しやすくし、低い賃金の向上につなげるのが狙い。新たな制度を盛り込んだ改正子ども・子育て支援法案を通常国会に提出し、2025年4月の開始を目指す。

 対象は保育園のほか、認定こども園、幼稚園などで全国で4万超となる。新制度が導入されると、施設側は毎年度、職員ごとの給与額や収支などを都道府県に報告する義務が生じる。

 こうした情報には営業秘密が含まれるため、都道府県は施設ごとに、職員のモデル賃金や運営費に占める人件費の割合などについて、子育て支援情報サイト「ここdeサーチ」で公開する。

 モデル賃金などが公開されれば、保育士希望者が就職先を検討する際に参考にでき、保護者が園を選ぶ判断材料の一つになる。政府は施設側が都道府県に報告した情報をもとに、保育士の賃金向上につながっているかを検証し、今後の政策を考える際に役立てる。

 保育士は人手不足が深刻化している。重い責任に見合わない低賃金が要因で、21年の全産業の平均給与が約426万円なのに対し、保育士は約370万円だった。政府は24年度予算案で、保育士らの待遇改善の関連費用として1兆6617億円を計上した。

 ただ、待遇改善費用を巡ってはこれまで、施設の改修といった別の用途に充てられたり、一部職員に偏って使われたりするケースが相次いできた。使途に関する施設側の裁量が大きいためで、有識者などからは保育士らの賃金向上につながっていないとの指摘が相次ぎ、給与水準などの公開を求める声が高まっていた。