医療ニュース 2024.01.22

介護報酬の改定案、24年度ベースアップ2・5%…賃上げで人手確保狙う

 厚生労働省は22日、2024年度に行う介護報酬の改定の具体案を社会保障審議会分科会に示し、了承された。介護職員の賃上げに取り組みやすくしたり、介護保険の大半のサービスの基本報酬を引き上げたりする。「団塊の世代」が75歳以上になる25年に介護ニーズが急速に膨らむのに備え、着実な賃上げで人材確保につなげたい考えだ。

 介護報酬は原則3年に1度見直される。政府は昨年12月、全体で1・59%のプラス改定とし、0・98%分を介護職員の賃上げに回すことを決めた。これを踏まえ、各サービスの価格をまとめた。

 介護職員の22年の平均給与月額は約29万円で、全産業平均を約7万円下回っている。同年に介護などの仕事を離れた人は約61万人で、新たに職に就いた人を約6万2000人上回った。25年には約32万人の不足が見込まれている。

 職員の賃上げに向けた処遇改善加算について、改定では、事務手続きを簡略化する。24年度は2・5%、25年度は2・0%のベースアップ(基本給の底上げ)を見込む。

 基本報酬については、特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設を大幅に引き上げる。厚労省が22年度決算を基に行った経営実態調査で、両施設は全体で初めて赤字に陥ったため、経営改善につなげる狙いだ。

 これに伴い、入居者が支払うサービス利用料も増える。自己負担が1割の人は、例えば要介護3で、特養の個室を利用する場合、月額約6800円増の2万5300円程度になる。

 また、職員が働きやすい職場づくりのため、ICT(情報通信技術)の活用を推進する。利用者の見守りセンサーや介護記録の自動作成機器などを導入し、職員の負担軽減につなげれば報酬を加算する。100人が入居する特養の場合、月10万円程度だ。

 医療との連携では、特養などで入居者の体調が急変した際、医師の往診や入院を受け入れてくれる協力病院の確保を義務付ける。新型コロナ対応を教訓に新たな感染症に備えるため、医療機関と連携し、職員が研修に参加すれば加算する。

 ◆ 介護報酬 =介護保険サービスの公定価格で、事業者に支払われる。サービスごとの「基本報酬」と、一定の要件を満たす場合に上乗せされる「加算」などがある。税金と40歳以上が納める保険料、利用者の自己負担(原則1割)で賄う。報酬が上がったり、加算がついたりすれば自己負担が増える。