記事・コラム 2024.05.13

【税理士連載コラム】当直手当には税金がかからないの?

講師 藤本 勇輝

Progress会計事務所

医療専門税理士事務所で6年、相続専門税理士事務所で4年で勤務し、医療業界と相続業界に強みを持っている税理士。院長先生のお悩み事を解決し、院長先生の夢を目標に変える夢実現化パートナーとしても活動をしている。

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一般的に、「当直」とは所定労働時間外に通常労働とは異なる軽微な労働(基本的には待機労働)に従事することをいい、日中に行う当直は「日直」、夜間に宿泊を伴って行う当直は「宿直」と呼ばれています。

では、当直手当の中に、所得税が非課税となる部分があることはご存知でしょうか。本来、会社から従業員に対して支給される基本給・各種手当などは、そのほとんどに所得税が課せられます。にもかかわらず、なぜ当直手当は一部が非課税となる「税務上の特別な配慮」がなされているのでしょうか。

宿日直料の取扱いとは

当直手当の支給額には、

① 当直業務そのものに対する「労働の対価」として支給されたもの
② 当直に伴い追加的に発生する「当直者の生活費用」を補填するために支給されたもの

の二つが含まれていると考えられます。

まず①の部分は、通常の給与と同様に「労働の対価」であることから課税されます。一方、②の部分は、当直業務を行うことにより、通常の日常生活では発生しないような追加的な「生活費用」に対して支給されたものです。

具体的には当直中の食事代、宿泊を伴う場合には洗面具代など、実費弁償的な性格のものを指します。この部分に所得税を課すと、所得税が課せられた分だけ、当直によって追加的に生じた生活費用を補填するという目的が損なわれてしまうことになります。

そこで税務上は、②に相当すると想定される金額を一律に4,000円と規定した上で、当直者に対する「税務上の特別な配慮」として当直手当の内4,000円部分に対しては所得税を課さないこと、つまり非課税としているのです。

課税されるケースとは

ただし、次の(1)~(3)場合における当直に対して支給される金額はすべて給与等として課税されます。​

⑴ 当直業務を「その主たる業務」とするために雇用されている者に対して支給する場合

例を挙げますと、休日又は夜間の留守番だけを行うために雇用されている者や、その場所に居住し、休日又は夜間の留守番も含めた勤務を行うものとして雇用された者に対する当直手当などです。
非課税対象となるためには、当直手当が『「当直業務を通常業務としている者」以外の者』に対して支給されていることが必要です。上記のように、もともと留守番などの軽微な労働をするために雇用された者は、当直業務を日常の通常業務として行っているので当該当直業務は非課税の対象にはなりません。

⑵ 従業員が当直中に「通常業務と同じ内容の業務を行っている」場合や、「当直を行ったことにより代日休暇が与えられる」場合

この代表的な例が、病院での夜間勤務やホテルでのフロント業務などです。冒頭でも述べましたが、当直とは所定労働時間外に行う「通常労働とは異なる軽微な労働」を指します。ですから、業務量は異なるものの通常業務と同じ内容の業務を行うことを前提としていると判断される場合には当直には該当しません。また、代日休暇が与えられている場合にも、当直者に追加的な生活費用の負担が発生しているとは言えないため、税務上の特別な配慮を要する当直手当には該当しません。これらの場合、名目上「当直手当(宿直手当・日直手当)」として給与が支給されていたとしても、その実態は「時間外労働(深夜労働・休日労働)」になります。よって、非課税対象となる当直手当には該当しないこととなります。

⑶ 当直者の「通常の給与等の額」に比例した金額、又は当直者の「給与等の額に比例した金額」に近似するように「当該給与等の額の階級区分等」に応じて定められた金額により支給される場合

非課税対象となる当直手当とされるためには、当直手当が当直者の地位・職能等の属人的な要素を考慮して支給されるのではなく、当直者に対して「一律的」に支給されていることが必要となります。ですから、通常の給与水準での超過勤務手当相当となる当直料を支給しているときなどは、時間外労働に近い性格であると考えられるため、税務上の特別な配慮を要する本来の宿直手当とは乖離しているので非課税の対象にはなりません。

最後に

以上のように、宿日直料は一律に1回4,000円まで非課税だと認識しがちですが、その勤務状況や雇用条件等によっては非課税に該当しないこともありますので慎重な判断が必要となります。

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