話題沸騰!数々の人気番組に出演している医師たちが語る
「キャリア」「信念」「未来」そのすべてに迫るインタビュー!
どのようにしてスキルを高め、逆境を乗り越えてきたのか?
日常の葛藤、医師としての信条、そして描く未来のビジョンとは――。

【出演番組一部抜粋】
NHKプロフェッショナル仕事の流儀・世界一受けたい授業・たけしの家庭の医学・主治医がみつかる診療所・NHKあさイチ
今回は【徳島大学病院 病院長】西良浩一先生のインタビューです!
なぜ整形外科医になったのか。スポーツDr.になった理由は?
どのようにして数々の世界初手術をやってきたのかなど語っていただきました――。
第5回「若い医師によく話すのが『VSOP』という生き方です」をお話しいただきます。
プロフィール

名 前 | 西良(さいりょう )浩一(こういち) |
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病院名 | 徳島大学病院運動機能外科学 |
所 属 | 整形外科 |
資 格 |
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経 歴 |
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母校の教授に就任する
ーなぜ母校の教授選に出られたのですか。
帝京大学溝口病院での勤務は本当に楽しかったんですし、とても充実していました。東京に近いことも魅力で、そこも良いなと思っていましたし、多くのトップアスリートや芸能人の方が来院される環境も新鮮でした。
巨人軍の主力選手が私を受診した時、長期入院中の野球少年(巨人ファン)の病室にお見舞いに行ってもらい、子供がとても感激して勇気付けられた事、本当に素敵な思い出です。
でも徳島大学はやはり母校なんですよね。教授選に立候補しないかという話が来たときは嬉しかったです。母校から頼られるのはとても光栄なことですから。それで「では立候補します」と決めて、結果的に選んでいただき、教授として戻ることになりました。
母校に教授として戻るのは本当に特別なことです。自分が育った四国の地で、自分の力で何とか地域を盛り上げたいという気持ちが湧いてきました。宿命とか使命とか、あるいは運命みたいなものを感じた瞬間でした。僕の力で四国をもっと元気にしたい。そう決意しました。
ー教授になられて、組織をどのように強くしてこられたのですか。
私一人ではなく、皆で一つのグループにならないといけませんし、そのグループのメンバーが高い目線を持っていないといけません。「ここらでいいや」という感じの集団であれば、そこで終わります。
でも、私は世界で戦ってきて、常に世界一を目指してきた
人間ですから、全員が同じ目線にならないと強いチームにはなれないと思っています。だから、メンバーにはいつも「高い志を持とう」「夢を大きく見よう」という話をしています。それだけではなく、私自身もしっかりとお金を集める努力
をしてきました。
例えば「ロボット手術をしたいけれど、ロボットがない」という状況では戦いようがありません。ロボットがなければ最先端の医療はできないので、そういう環境を整えるのが教授である私の役目だと考えています。医療機器のみならず、メンバーの心の部分も大切なので、「一緒に世界一の集団を目指そう」という意識を共有するようにしています。
環境作りも含めると大変なこともありましたが、お蔭様で今では十分な成果を出せたと自負しています。今の徳島大学は本当に強い集団、戦う集団になりましたね。良いメンバーが揃っていますし、高い志を持ちながら前進できる素晴らしいチーム
ができてきました。
ー若い先生方とはどのようなコミュニケーションを取っておられますか。
毎週水曜日には若いスタッフを含めて、皆でカンファレンスを開いています。そこで、私が意見を出すこともありますし、逆に若手から「こんなことを始めてみました」「これが面白いと思います」といった提案やアイディアが出てくることもあります。そういった若い世代の発想や視点
は新鮮ですし、チーム全体に良い刺激を与えてくれています。

ーアスリートへの診療方針をお聞かせください。
アスリートの中には治療を受けるならアスリートを見慣れているスポーツドクターに診てもらいたいと思う人が多いんです。それは職業柄、完璧に治すことが求められる
からです
アスリートの意識は本当に高いです。ほかの人の意識が低いというわけではないのですが、アスリートの場合は「100%治らないと引退する」ぐらいの覚悟で来ますね。彼らにとっては100%治らないと競技を続けられず、場合によっては引退に追い込まれてしまうことすらあります。だからこそ、私は「80%」ではなく、「120%」という言葉を掲げ、それぐらいのパッションで治療にあたっています。
アスリートの仕事は全力で走ったり、重い重量を持ち上げたり、私たちの日常では考えられないような負荷を身体にかけるものです。私たちはそんな彼らを支えるために全力を尽くさなければならない
と思っています。それが私の「120%」へのこだわりです。
例えば、腰が悪くなった場合、腰自体はもちろん治しますが、同時にその原因となった部分
も探します。足が硬いせいだったり、肩が硬くて腰でひねる動きが生じていたりなど、そういった腰以外の問題も見つけて治すことで、本当の意味で「120%治す」ことができるんです。
このアプローチはアスリートの心に響くんですよ。これがスポーツドクターの基本です。でも手術だけでは終わりません。そのあとのリハビリがとても大事です。良いリハビリをすれば、手術の効果が大きく上がります。そのため、手術からリハビリまでトータルで診られる
のがスポーツドクターの強みです。
ーほかの患者さんに対してはいかがですか。
一方で、一般の患者さんの場合は、社会生活に復帰できれば、満足してもらえることが多いです。「少し腰痛が残るかもしれません」「少ししびれが残るかも」といった説明で納得していただけることが一般的です。
でも、アスリートへの考え方は高齢者にも当てはまります。私は高齢の患者さんにもアスリートと同じように「体幹を鍛えましょう」「胸椎を柔らかくすることが大事ですよ」「下肢の柔軟性が重要なんですよ」とアドバイスします。そうすると、高齢の患者さんも「こうしたら、良くなるんだ」とやる気になってくれて、しっかり反応してくれるんです。
そしてより良い回復に繋がります。アスリートを診てきた経験があると、どうしても目標が高くなります。ゴールを高く設定して、その目線で患者さん全員に対応
することで、結果的に皆が良くなります。
ー若い先生方にメッセージをお願いします。
若い医師によく話すのが「VSOP」という生き方です。これはとてもシンプルですが、大事な考え方です。
まず「V」はバイタリティです。20代はとにかくがむしゃらに頑張る時期で、多少無理してでも突っ走るくらいのエネルギーが必要
です。次に「S」はスペシャリティです。30代になったら自分の専門性をこれにしようと決める時期で、「自分はこれでいく」という方向性をしっかり定めて
ください。そして「O」はオリジナリティです。40代になるとただ教科書を読んでいるだけではいけません。20代、30代は今ある教科書を読んで、それを完璧にできればいいのですが、40代は違います。教科書を書く側にならないといけません。新しいことを生み出して、古い教科書を塗り替える存在
になることです。最後に「P」はパーソナリティです。気がつけば、私も50代を迎え、今は還暦も超えましたが、この年齢になるとやはりパーソナリティが重要になってきます。ただし、バイタリティ、スペシャリティ、オリジナリティを続けながら、自分自身の人間性や個性を深めていくことが大切
です。
このVSOPそれぞれを20代、30代、40代、50代に意識しながら過ごしていくと、本当に楽しい人生になるはずです。特に教科書を書き換えるような仕事ができる医師を目指してほしいです。それがきっと未来を切り拓く力になると信じています。
