【第15回】ジャロード・ライルの36年の人生が残してくれたもの
2018年09月15日 公開白血病を発症しては闘病し、奇跡的に回復し、プロゴルファーとして戦い、そして再び白血病との闘病を3度も繰り返した壮絶な人生を通して、ジャロード・ライルがゴルフ界と社会に残してくれたものは大きかった。
生涯4度目の腰の手術から戦線復帰したタイガー・ウッズが昨年9月に復活優勝を遂げ、通算80勝目をマークして大いに盛り上がっているアメリカ・プロゴルフ界。2019年はウッズのさらなる優勝、そしてメジャー15勝目に期待が集まっている。
そんなウッズはもちろんのこと、華々しい舞台で戦う欧米ツアー選手たちの大半が、実は社会貢献活動に非常に熱心に取り組んでいることをご存じだろうか。
世界のトッププレーヤーたちは、なぜ社会貢献活動に力を入れるのか。「朝日新聞」「新潮社フォーサイト」「ALBA」「Number」など数々のメディアに連載を持つゴルフジャーナリストの舩越園子氏が、在米26年の見聞に基づき、その理由を解き明かしていく。
講師 舩越 園子
フリーライター
東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。
百貨店、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。93年渡米。
在米ゴルフジャーナリストとして新聞、雑誌、ウエブサイト等への執筆に加え、講演やテレビ、ラジオにも活動の範囲を広げている。
『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。
アトランタ、フロリダ、NY、ロサンゼルスを経て、現在は日本が拠点。
白血病を発症しては闘病し、奇跡的に回復し、プロゴルファーとして戦い、そして再び白血病との闘病を3度も繰り返した壮絶な人生を通して、ジャロード・ライルがゴルフ界と社会に残してくれたものは大きかった。
トニー・フィノウという190センチ、90キロの巨体を誇る28歳のユニークな選手がいる。2015年に米PGAツアーにデビューし、2016年にプエルトリコ・オープンで初優勝。現在、すでに世界ランキング上位30位にランクインしているトッププレーヤーの一人だ。
ジム・フューリックという米国人のベテラン選手をご存じだろうか。8の字を描くような独特のスイングを武器に1994年から米ツアーで戦い始めたフューリックは、1998年から2003年までの間、毎年最低でも1勝以上を挙げ続け、安定感の高いグッドプレーヤーと言われた。
米PGAツアーが誇る「第5のメジャー」、プレーヤーズ選手権を制したのは2012年の全米オープン覇者、ウエブ・シンプソンだった。最終日を2位に7打差の単独首位で迎えたが、72ホール目を終えるまで「ただの一度も安心できなかった」と、シンプソンは振り返った。
世界に名を馳せる一流プロゴルファーは、間違いなくチャリティ活動に積極的である。逆に言えば、チャリティ活動や社会貢献をせずして一流と見なされることはなく、「一流の人間=社会に尽力する人」という認識は、いわば世界の常識と言っても過言ではない。
「チャリティ」と言えば、災害や傷病で苦しむ人々に救いの手を差し伸べるものだと思われがちである。だが、苦しい状況にある当の本人が、同じように苦境にある人々に向けて「一緒にがんばろうね」「諦めずにがんばろうね」とエールを送るチャリティもある。
ゴルフ好きで米国ゴルフ情報に通じている方は、もしかしたら覚えているかもしれない。2012年ごろ、『ゴルフボーイズ』というラップバンドが米ゴルフ界で大きな注目を集めた。
米ツアーにフェニックス・オープンという大会がある。松山英樹が2016年と2017年にプレーオフを制して勝利を挙げた大会。3連覇を目指した今年、開幕前の会見に臨んだ松山は、50年以上も昔にこの大会で3連覇(1961~1963年)を達成した故アーノルド・パーマーに言及し、人々に尽くしたパーマーのように自分も成長したいと言った。
タイガー・ウッズがプロデビューする以前だった1990年代の序盤から中盤にかけて、米ゴルフ界で大人気を博していた国民的スター選手の代表格はデービス・ラブだった。
1か月ほど前、とてもユニークなオークションをウェブ上で発見した。「フィル・ミケルソンとゴルフをする」という権利が“出品”されており、5万ドルから始まったその“商品”には、すでに8万ドル超まで値が吊り上がっていた。
マーク・リーシュマンというオーストラリア出身の33歳の米ツアー選手をご存知だろうか。昨季3月のアーノルド・パーマー招待とシーズンエンドのプレーオフ・シリーズ第3戦、BMW選手権を制し、年間2勝、通算3勝目を挙げて、今季も注目を集めている。
今年9月、米フロリダ州がハリケーン・イルマに襲われ、大きな被害を受けたことは、みなさんもご存じのことと思う。そのイルマがフロリダに接近し、間もなく上陸するというニュースが流れたとき、自身の試合出場予定を変更し、自宅待機の道を選んだプロゴルファーがいた。
プロゴルフの世界では、年に4つのメジャー大会が開催される。マスターズ、全米オープン、全英オープン、全米プロの4大会。メジャーで優勝することはプロゴルファーなら誰もが夢見る偉業だが、勝てそうで勝てずに惜敗ばかりを繰り返すプレーヤーは数多い。
英国の名門、ロイヤル・バークデールで開催された今年の全英オープンを見事に制し、23歳にしてメジャー3勝目を達成したジョーダン・スピースは、優勝の興奮冷めやらぬまま早々にプライベートジェットに飛び乗り、米国テキサス州の実家へと戻っていった。
みなさんは18ホールそれぞれの距離やハザードの配置、グリーンの形状などが記されているヤーデージブックをご存じだと思うのだが、欧米ツアーの現場には、それとは別にもう1冊、グリーンブックなるものが存在することをご存じだろうか。