記事・コラム 2024.08.30

OUI Inc.清水映輔CEO インタビュー 世界の失明を半分にする

第5回  医工連携の意義

講師 清水映輔

OUI Inc.

1987年に神奈川県横浜市で生まれる。2013年に慶應義塾大学を卒業後、東京医療センターで初期研修を行う。2015年に慶應義塾大学眼科学教室に入局し、慶應義塾大学病院で後期研修を行う。2016年に東京歯科大学市川総合病院眼科で後期研修を行う。2016年に株式会社OUIを創業し、代表取締役に就任する。2019年に慶應義塾大学眼科学教室特任助教に就任する。2019年に横浜けいあい眼科和田町院を開業する。2020年に慶應義塾大学眼科学教室特任講師に就任する。

 

日本眼科学会専門医、難病指定医、身体障害者指定医など。

日本角膜学会、日本眼科アレルギー学会、Fight for vision、日本抗加齢医学会、ARVO (The Association for Research in Vision and Ophthalmology)、日本アレルギー学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本眼科AI学会、ドライアイ研究会、日本シェーグレン症候群学会、Kyoto Cornea Clubにも所属する。

 

2018 年にARVO/Alcon Early Career Clinician-Scientist Research Award、2020年に日本眼科アレルギー学会優秀賞、第14回日本シェーグレン症候群学会奨励賞、国際失明予防協会The Eye Health Heroes award、2022年に第76回日本臨床眼科学会学術展示優秀賞、第5回ジャパンSDGsアワードSDGs推進副本部長(外務大臣)賞、2023年に日本弱視斜視学会国内学会若手支援プログラム賞、令和5年度全国発明表彰未来創造発明賞などを受賞する。

医工連携の意義

― 先生にとって、医工連携の意義はどのようなところにあるとお考えですか。

清水:医工連携の是非を問うというような思いがあるわけではありませんが、医師が主体となって行うことで物事を早く進められると思い、スタートアップしました。

私自身大学院で学んだ際に、研究して良い薬を作ったとしても、製薬企業の意図などで患者さんの口に薬が入ったり、投与されるまでには時間がかかると感じました。情熱を持って作った者がスタートアップすれば、早く進められるという点で、医師が主体となって医工連携を進めていくことに意味があると考えております。

― 素晴らしいですね。

清水:私の母校である慶應義塾大学は総合大学ですので、多くの先生方がいらっしゃいます。

今の塾長の伊藤公平先生は理工学部の教授でいらっしゃったのですが、「理工学部や医学部の力を結集して、慶應一丸となって頑張りましょう」というメッセージを打ち出しておられます。そのため、伊藤先生が塾長に就任されてからは医学部と他学部の境目が小さくなってきたように思いますし、横の力をフルに使えるという意味では慶應の力はとても大きいです。

例えば、慶應のどなたかが医療機器を作りたいので誰かに相談しようと考えられた場合、相談先は医療機器メーカーではなく、慶應の中で可能です。慶應の中で誰かに相談でき、実現できてしまいます。私どもでも特許を取りたいというときには慶應の中で知財について相談できる環境が整ったところです。

― 特許はどのぐらいお持ちなのですか。

清水:国内で4個、海外で13個の合計17個あります。申請自体は自分たちでするのではなく、自分たちのプロダクトの魅力や強さを弁理士の方に伝えています。

― 医師主導の医工連携はこれから活発になるのでしょうか。

清水:今は医師が主導しているビジネスがとても増えているので、これからはますます増えるでしょう。今はちょっとしたブームになっていますね。

― 今後はビジネスをどのように展開したいですか。

清水:もともと途上国で見つけたアイディアをグローバルに展開したいです。色々なパートナーの先生方とお話ししていますと、先進国でも眼科の診療が行き届いていないところがあると気づかされますので、先進国にも同様なニーズがあります。要は診断が足りていないんですね。

先進国では予防を目的とした診断、途上国では治療を目的とした診断に繋げて、世界の失明を減らしていきます。そのためにはハードウェアだけでなく、ソフトウェアも考えなくてはいけません。AIや遠隔診療のプラットフォームに関してもグローバルに展開し、途上国はもちろん、日本をはじめとする先進国に合わせた使い方ができるように進めていきたいです。

アイスキャン

― 具体的に既に始めていらっしゃるものはありますか。

清水:2024年4月にローンチしたのがモバイルアイスキャンです。これは眼科検査に特化した企業向けメディカル眼科検診訪問サービスです。眼科の医師や視能訓練士が企業へ直接訪問し、忙しく働くビジネスパーソンPCを使うVDT作業者が陥りやすい眼科疾患をスキャンします。そして疾患別に適切な処置をしたり、作業環境の提案をします。

例えば、ドライアイに対しては点眼処方や冷暖房などの注意点など、包括的に提案します。さらに検診結果をもとに、企業の生産性定値率を可視化したレポートも作成します。「年に1回の健康診断で何も言われていないから大丈夫だ」とおっしゃる方が多いのですが、企業での健康診断や眼科ドックでは、多くの病気の早期発見が可能な「眼底検査」などの検査を行なっていないため、実は不十分です。

この事業を通して、そういった啓発を行いたいです。重要なのは診断、治療、啓発であり、この3つをバランスよく行わないと世界の失明は減らせませんから、私どもとしてはこの3つを軸として、デバイスやサービスを展開していきます。一方で、眼科の遠隔診療のプラットフォームである「プラスアイドクター」も広げていきます。

― AIはどういった状況ですか。

清水:慶應義塾大学で臨床試験を行っており、2024年のうちに承認申請をする見込みです。申請が通れば、日本の医療機器として認められ、日本の医療機器として使えます。「日本の医療機器であればいいよ」と言っている海外の国は多いので、そういった国で広めていけるのではないかと考えています。

― 若い先生方にメッセージをお願いします。

清水:日本の若い先生方は本当に優秀な方が多く、私よりも優秀な先生方ばかりです。ただ、「これはできないんじゃないか」「この環境では無理なんじゃないか」など、ご自身に限界値を見つけてしまう方が多いという印象もあり、それは残念です。私自身は「何でもできる」と思っていますし、先生方も何でもできるはずですので、限界値を作らずに限界までチャレンジしていただけたらと願っています。

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