記事・コラム 2014.06.01

基礎から知る!骨粗鬆症の病態と治療

FAQ ~痛みについて~

目次

FAQ ~痛みについて~

骨粗鬆症Q&A ~痛みについて~

骨粗鬆症について、患者さんからよくあるご質問と対応の例を一問一答形式でご紹介します。

Q.体を動かすと痛く、脚が悪いので運動もあまりできません

以前はじっとしていても腰と背中が痛みました。今は静かにしていれば痛みはありませんが、30分以上立っていると痛くなるので、昼間はたいてい椅子に座っています。診断では、第3腰椎(ようつい)圧迫骨折と他の骨が2カ所潰れているそうです。運動と日光浴を勧められましたが、脚が悪いので運動ができません。どうしたら良いでしょうか。(広島県:56歳女性)

A.56歳という年齢を考えますと、閉経後、急速に骨粗鬆症が進んだと考えられます。

体を動かし始める時や長時間立っている時、歩いた時に痛むのは、骨粗鬆症の特徴です。以前、じっとしていても痛みがあったというのは、圧迫骨折が生じた直後か、骨折からあまり時間が経過していない頃だったためと思われます。

このような場合は、痛みに有効とされるカルシトニンの注射が勧められます。週1~2回の通院となりますが、軽い運動の代わりと考えて頑張って通いましょう。とりあえず痛みを止めるためには鎮痛剤の坐薬が有効です。コルセットも効果があるので、試してみてはいかがでしょうか。

痛みがあるからといってじっとしてばかりいると、かえって骨が弱くなります。あまり無理をしないで、プールの中など我慢ができる方法で体を動かしてください。

Q.治療を1年以上続けていますが改善されません

骨粗鬆症と診断されてから、1年以上にわたって薬剤による治療を続けています。ところが、先日の測定で1年前よりも骨量が減っていることがわかりました。このまま薬による治療を続けて回復の見込みはあるのでしょうか。(福岡県:76歳女性)

A.76歳の女性の場合、骨量は自然の状態で1年にだいたい1%ずつ減少していきます。

また、骨量の検査では、測定機のエラーで正しい数値に比べて約2~3%の誤差を示すことがあります。薬により経過観察をしている場合は、検査で骨量が減っているようですが、年齢にともなう年間の骨量の減少率と測定値の誤差を踏まえて、同じ薬が継続して処方されていると考えられます。

骨量の減少率が1%以内の場合は、薬が自然の減少をくい止めていることになりますし、減少率が3~4%でも、機械による誤差の範囲として、次回の再測定値で判断することになるでしょう。減少率が3~4%以上の場合は、その薬は無効だったと考え、別の薬が処方されると思います。

誤差を考えたとしても、1年間治療を行って骨量が減っていたのであれば、骨粗鬆症が進んでいるのかもしれません。こういった場合は、腰や背中の痛み具合、動作時の敏しょう性などをみて、薬の効果があるか、逆に骨が弱っているのかを診断し、次の骨量測定値で今後の治療方針を決定する場合が多いでしょう。
骨量を増やす効果がある薬と同程度の効果が、日々の運動により得られると考えられています。薬による治療に併せて、毎日8,000~10,000歩を歩く、あるいはそれに相当する運動を続ければ、回復の見込みはますます大きくなります。

Q.関節リウマチでステロイド剤を服用していますが、大丈夫ですか?

昨年、関節リウマチと診断され、プレドニソロンというステロイド剤を毎日5mg服用していますが、骨粗鬆症の原因になると聞きました。カルシウムをたくさん摂ろうとしているのですが、仕事柄、外食が多く、なかなか改善できません。将来、骨粗鬆症になるのでしょうか。(埼玉県:39歳女性)

A.以前は、その程度のステロイドホルモン内服であれば骨粗鬆症になることは少なく、関節痛が抑えられて活動的な毎日を送ることができれば、骨密度はむしろ高くなると考えられていました。

しかし、その後の多くの研究で、ブレドニゾロンを服用している人は骨密度が高くても骨折しやすく、1日5mgの内服でも骨粗鬆症の予防や治療が必要であることがわかり、2004年にステロイドホルモン内服による骨粗鬆症の管理と治療のガイドラインが作成されました。

39歳と若く、骨折の経験がないことなどから、骨はまだ弱くなっていないかもしれません。しかし、3カ月以上にわたって、経口ステロイドホルモン(プレドニゾロン)を毎日5mg内服していますので、骨が弱くなっていないかどうか、検査を受けた方が良いでしょう。

自分では気がつかない腰や背中の骨の変形があったり、平均的な骨密度より20%以上減少している場合はもちろん、そのような症状がなくても、日常生活の改善は不可欠ですし、場合によっては骨を強くする薬などによる治療が必要です。

通勤時間や休日を利用して体を動かしたり、外食が多ければ、牛乳・乳製品を追加したりサプリメントでカルシウムを摂るなど、生活習慣を工夫して骨が弱くなるのを防ぎましょう。

Q.精密検査というのは、どのようなことをするのですか

先日、町の保健センターで骨密度検査を受けたところ、精密検査が必要と言われ、大学病院を紹介されたのですが、数年前に受けた内視鏡検査の苦しみを思い出し、なかなか足を運ぶことができません。精密検査はどんなことをするのでしょうか。痛みや苦しみがありますか。(千葉県:65歳女性)

A.市町村が行う骨密度検診では、腕や手、踵(かかと)の骨などの骨密度を測ります。

判定は「正常」、「要指導」、「要精検」の3区分に分かれ、必要に応じて日常生活の指導や医療機関への紹介を行います。

東京都内の約27,000人について骨密度検診をしたところ、65歳女性で精密検査が必要だったのは約30%で、そのうち約30%が骨粗鬆症でした。骨密度検診では骨量の判定のみで、骨粗鬆症かどうかの最終診断は医療機関の医師によって行われます。将来のために、ぜひ精密検査を受けることをお勧めします。

精密検査は、(1)腰や背中の骨のX線(レントゲン撮影)で行う場合、(2)X線で腰椎や太ももの付け根の骨密度を測るDXA法(デキサ法)で行う場合、(3)両方を併せて行う場合、の3つの方法があります。いずれも5~15分間台の上で休んでいるだけで、胃カメラのような痛みも苦しみもありません。

X線により脊椎が潰れていたり、骨密度の精密測定で骨のカルシウム量が若い人に比べて30%以上減っている場合は、骨粗鬆症と診断されます。骨粗鬆症と診断されても、骨を強くする注射や内服薬によって骨のカルシウム量を増やせば、骨折しにくくなります。ぜひ精密検査を受けてください。

Q.骨量の値は、どのように理解したらよいのですか

区の保健所から、節目年齢にあたるということで骨検診の通知が届きました。検査では手のレントゲン写真を撮り、骨量測定の結果は後日届くことになっています。骨粗鬆症は腰に症状が現れやすいと聞きましたが、手の骨量については検診結果をどのように理解すれば良いのですか。(東京都:50歳女性)

A.「骨量」とは、骨のカルシウム量のことです。厳密には「骨密度」と言いますが、一般的に説明する時は「骨量」と言います。

厚生労働省は、老人保健事業の一環として2000年から40歳と50歳の節目年齢の女性に骨密度検診をするよう各自治体に勧めているため、若い方でも骨検診を受ける人が増えてくると思われます。

骨量の測定方法にはさまざまな種類があり、それぞれに一長一短がありますが、X線を用いて腰椎や腕の骨密度を測定する「DXA(デキサ)法」、手の骨のX線像の濃さから骨量を計測する「MD(エムディー)法」、踵(かかと)や脛に超音波を当てて骨量を計測する「超音波法」の3つが広く用いられています。

例えば腰椎(ようつい)の骨密度が0.6g/㎝2と0.8g/㎝2では、太ももの付け根の骨折の発生率がそれぞれ60%と20%といったように大きく違うことがわかっています。MD法もそれと大差がないほど骨粗鬆症かどうかを区別できることがわかっています。

骨検診は医療機関での最終診断とは異なりますが、自分の骨の状態を知ることができます。ぜひ受けるようにしましょう。

Q.腰に激痛があり、脊椎骨粗鬆症、腰椎圧迫骨折と診断されました

自宅で花の手入れをしている時、腰に激痛を感じて入院し、脊椎(せきつい)骨粗鬆症、第1腰椎(ようつい)圧迫骨折と診断されました。退院後、ある大雪の朝にコルセットを着用し忘れて雪おろしをし、腰に激痛があり再び入院しました。コルセット、腰痛体操、軽い散歩は続けているのですが、このまま進行を止められないのでしょうか。薬などの治療は受けた方が良いのでしょうか。(新潟県:79歳男性)

A.腰椎圧迫骨折との診断の内容から、骨量が減っている骨粗鬆症であるのは間違いないと思われます。

骨粗鬆症は、高齢者や閉経以後の女性に多くみられますが、男性の場合は糖尿病など何らかの病気に伴って起こることが多いため、骨粗鬆症を引き起こしている病気がないかよく調べていただく必要があります。

原因となる病気がある場合は、それを治療すれば骨量も改善されることがありますので、そちらの病気の治療が優先です。特に病気がない場合でも、80歳近くになりますと男性でも骨粗鬆症に罹る人が増えてきますので、医師と相談のうえ、骨粗鬆症の治療薬の注射や服用をすると良いでしょう。

骨量は、女性は閉経期(50歳代)で急激に減少しますが、一定の年齢に達すると、男性・女性ともにそれほど急激に減少しません。従って、今後はあまり心配せず、骨粗鬆症治療薬の注射・内服に加えて、今まで続けてきた腰痛体操や軽い散歩を持続すると良いでしょう。ただし、コルセットを長期間装着しますと、腰の筋肉を弱めて腰骨を折れ易くしますので、腰痛が軽くなっているようでしたら、少しずつコルセットを外すようにしてみましょう。

また、高齢者が太ももの付け根を骨折しますと、寝たきりになる恐れがあります。転ばないよう十分気をつけ、日頃から適度な運動(散歩、軽い体操など)を行い、足腰を鍛えておくよう心がけましょう。

Q.腰や膝、最近では背中も痛むのですが

2、3年前から腰や膝に痛みがあり、骨が変形していると診断されました。友人にも猫背と言われます。半年前から背中も痛くて眠れません。処方された薬は胃が痛むので、今は胃薬しか飲んでいません。十二指腸潰瘍、急性膵臓(すいぞう)炎および骨粗鬆症と診断されています。どうすれば痛みが減るでしょうか。(群馬県:36歳女性)

A.骨粗鬆症による骨折は、腰や背中に激痛を感じますが、骨がつながる2~3週間後には痛みが軽くなってきます。

また、背骨が潰れて徐々に変形したり、円背(えんぱい、いわゆる猫背のこと)により骨や筋肉に痛みを感じる場合でも、夜眠れないほどの強い痛みはないのが普通です。

 骨粗鬆症以外に十二指腸潰瘍、急性膵臓炎と診断されているようですが、これらの病気でも腰や背中に強い痛みを生じます。痛みの原因が内臓の病気によるものかどうか、背骨や腰骨の骨折が癒合しないで偽関節となっているのか、などを、よく診てもらった方が良いでしょう。

 いずれにしても、36歳と若い年齢で骨粗鬆症と診断されて背中が丸くなってきているようですから、骨粗鬆症の治療は必要です。飲み薬以外にも、骨を強くし、背中や腰の痛みを和らげる注射薬や、痛み止めの軟膏・湿布薬により痛みを減らすことができます。また、コルセットやマッサージも効果があります。

 何よりも重要なことは、日々の生活習慣です。乳製品、海産物、緑黄色野菜などカルシウムを多く含む食物を摂る、戸外に出て日に当たる、転倒しないように気をつける、毎日適度に体を動かす、などに気をつけましょう。運動は、散歩や買い物など軽いものから始め、徐々に運動量を増やすようにしましょう。骨を強くするには時間がかかりますが、根気よく続けることが大切です。

Q.痛みがなくなっても治療を続ける必要があるのでしょうか?

半年ほど前、孫を抱き上げたとたん、腰から背中、胸がひどく痛みました。病院で診てもらったところ、骨粗鬆症により背骨が潰れていると診断されました。痛みのひどかった2週間ほどは家で休んでいて、その後は注射と飲み薬による治療を続けています。最近では痛みはすっかりなくなりましたが、今後も治療を続ける必要があるのでしょうか。(鳥取県:68歳女性)

A.骨粗鬆症では、振り向いたり、物を持ち上げたりした時など、ささいな動作で腰骨や背骨が潰れてしまうことがあります。

骨が潰れると腰や背中に激しい痛みが生じ、横向きに休む以外に身動きができなくなることも珍しくありません。

しかし、臥床状態での治療に何週間もかけると筋力が落ち、再び歩くのが困難になることもありますので、早く治す必要があります。そのため、強い作用をもつ痛み止めの薬とカルシトニン製剤の注射で痛みを抑え、コルセットなどを使って、3~4週間以内に、立つ、歩くなどの訓練をして治します。

腰や背中の痛みがなくなっても、骨粗鬆症自体は治っていません。再度、ささいな動作で背中や腰の骨を骨折することがないよう、治療を続けて骨を根本的に強くする必要があります。日常生活では「カルシウムの多い食事」、「適度な日光浴」、「毎日の運動」の3つを守り、それに薬による治療を加えると有効です。

骨粗鬆症治療薬には、注射薬としてはテリパラチド製剤、カルシトニン製剤、デノスマブ、内服薬としては活性型ビタミンD3、ビタミンK2、SERM(選択的エストロゲン受容体修飾薬)、ビスフォスフォネートなどがあり、年齢や症状に合った薬を処方します。根気よく治療を続けて骨を強くし、再び骨を潰さないようにすることが肝心です。

Q.腰の痛みが続くため受診したところ、骨粗鬆症による腰椎の骨折と診断されました。

この痛みはずっと続くのでしょうか?

A.骨粗鬆症の骨折で最も多いのが背骨や腰骨の骨折です。

骨折には、少しずつ骨が潰れていき、気がついた時には骨が半分ぐらいの大きさになっている「脊椎椎体変形」や、骨が割れるように潰れる「脊椎椎体圧迫骨折」があります。

脊椎椎体圧迫骨折は、尻もちをつくなど、腰骨に大きな力が一度に加わった時に起こりますが、脊椎椎体の骨は血液の流れが多く、スポンジのように入り組んでいるので、数週間で骨折は治癒します。

ところが、最近の高齢化で増加している脊椎椎体圧迫骨折の中には、いつまで経っても骨折が治らない脊椎椎体圧迫骨折もあることがわかってきました。

骨折が癒合しないのは骨折線が何重にも入り、脊椎椎体の中央部につながる血管が遮断され、中央部の骨を作る細胞が増えてこないのが原因です。

また、骨折後、骨折部を早く動かし過ぎて骨がつく状況にならないことも原因となります。 骨折してから骨がつかないままの状態を「偽関節」といい、脊椎のレントゲン検査やMRl検査で見つかります。偽関節により強い痛みがある場合は、骨折部を癒合しやすくする手術がありますので、主治医の先生にもう一度、診察してもらいましょう。