医療ニュース 2025.04.16

音に反応し遺伝子の働きが変化、人やマウスの細胞で確認…京大チーム「肥満予防や治療の可能性」

 外部からの音にマウスや人の細胞が反応し、遺伝子の働きが変化することを確認したと、京都大などのチームが発表した。音で細胞の働きを変え、治療などに生かせる可能性があるという。論文が16日、国際専門誌に掲載された。

 音は振動として空中や水中を伝わる。耳で聴覚として認識される以外にも、音楽を聞かせると野菜がよく育つなどの報告が知られているが、詳しい仕組みはわかっていなかった。

 京大の 粂田くめた 昌宏助教(細胞生物学)らは、培養液の中のマウスや人の細胞に対し、低い音や高い音、ノイズ音などの5タイプの音波をそれぞれ2時間以上あてた。その後の遺伝子の働きについて解析した。

 結果、細胞の成長などに関わる延べ約190種類の遺伝子の働きが変化し、音のタイプに合わせて反応する遺伝子も異なることがわかった。細胞の形が変わったり、脂肪をたくわえる細胞の増殖が20~30%抑えられたりする効果もみられた。

 人の耳には聞こえない超音波を使って、骨の再生を促す医療機器はすでに実用化されている。粂田助教は「特定の音で肥満などの予防や治療ができる可能性がある。私たちは聴覚をコミュニケーションに使っているが、音にはさらに根源的な役割があるのかもしれない」と話す。

 同志社大の小山大介教授(超音波工学)の話「可聴域の音は超音波と比べて遠く広範囲に届きやすいが、音によっては負担になる可能性もある。利点や欠点を踏まえて活用できるか検討する必要がある」