医療ニュース 2025.04.14

AIで食肉の安全検査、画像分析で異常を発見…獣医師不足に対応し厚労省が実証研究

 食肉の出荷前に都道府県などが行う安全検査について、厚生労働省は今年度、AI(人工知能)を活用した実証研究に乗り出す。AIによる画像解析で食肉の異常を見つける試みで、検査を担う獣医師の職員が不足する中、現場の負担を軽減する狙いがある。効果を確認できれば、全国的な導入を検討する。

 食肉は、自治体や民間の食肉処理施設などで安全検査を行ってから出荷されている。検査の多くは、獣医師免許を持つ自治体職員による実施が法令で義務付けられ、畜産農家が持ち込んだ生体や枝肉、内臓を目視したり触診したりしている。病気や異常が確認された場合に取り除いている。

 だが、獣医師の職員は全国的に不足している。獣医師免許を取得しても、ペットを扱う動物病院に就職を希望する人が多いためで、読売新聞が2023年度の採用状況を調べたところ、定員割れした都道府県が約9割に上った。

 政府の戦略もあって和牛を中心に食肉輸出が拡大する中、23年度は、獣医師職員計約2200人が少なくとも牛約100万頭、豚約1600万匹を、計約1100人が鳥約8億3000万羽を検査した。OBを再任用してなんとか検査をこなしている自治体も多い。人員不足がさらに進めば、公衆衛生など他の業務に獣医師を割けなくなる恐れもあり、同省はAIの活用を検討することにした。

 研究では、AIの画像解析システムを使って獣医師の目視業務を補助する。北海道や茨城県、宮崎県の3道県で今月下旬から順次始め、27年度まで3年間行う。

 研究班代表の村松康和・酪農学園大教授(獣医公衆衛生学)は「研究成果によっては、現場の獣医師の大幅な負担軽減が期待できる。食の安全に関わるので、獣医師による検査と同じレベルを目指してAIの精度を上げていきたい」と話した。