医療ニュース 2025.04.09
未来のバイオコンピューターに可能性、iPSから「脳オルガノイド」作製…万博で東大チーム展示へ
東京大の研究チームは、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った神経細胞の塊「脳オルガノイド」を、大阪・関西万博で6月から展示する。小さな電極の上で18個の脳オルガノイドを連結させたもので、細胞に計算や情報処理をさせる未来のバイオコンピューターの先端研究を見せるのが狙いだ。
準備を進めているのは、池内 与志穂 ・東大教授(分子細胞工学)の研究室に所属するドゥンキー智也特任研究員(31)。ドゥンキーさんはスイス生まれで、脳オルガノイドは万博のスイスパビリオンで6月11日~8月12日に展示される。
展示するのは、縦2ミリ・メートル、横4ミリ・メートルの電極チップ上に並べた脳オルガノイドだ。一つは0・3~0・4ミリ・メートルの塊で、数万個の神経細胞が含まれている。並べて培養すると自然に神経の突起を伸ばし、塊が互いに連結するという。チップには2万6400個の電極があり、細胞の活動を記録できる。
会場では脳オルガノイドを顕微鏡で観察できるほか、互いに電気信号をやり取りした様子などを見ることができる。チップはスイスの新興企業が開発した。
人の脳も多数の領域間で信号のやり取りをして高度な機能を実現しており、研究成果は脳の仕組みに似たバイオコンピューターの実現につながる可能性があるという。ドゥンキーさんは、「特に子どもたちに見てもらい、科学に関心を持ってほしい」と話している。