医療ニュース 2025.03.05

「結晶スポンジ法」改良、大きな分子の構造解析に成功…東大の研究チーム「創薬につなげたい」

 微小な穴が規則正しく並んだ「結晶スポンジ」と呼ばれる物質を使い、従来は難しかった大きな分子の構造解析に成功したと、東京大の藤田誠・卓越教授らのチームが発表した。次世代薬の材料を探す研究に応用が期待されるという。論文が5日、科学誌ネイチャーケミストリーに掲載された。

 医薬品の材料になる物質の分子構造は、効果などに影響するため、X線を使った正確な解析が求められている。解析には分子が規則正しく並んだ「結晶」を作る必要があるが、難易度は高く、時間もかかっていた。

 チームはこれまで、結晶化したスポンジ状の物質に、解析する試料を染みこませる「結晶スポンジ法」と呼ばれる手法を開発。一つ一つの穴に試料の分子を整然と並べることで、結晶化した時と同様の解析ができる。

 チームは今回、この手法を改良した。従来の手法は、サイズの小さい「低分子」しか解析できなかったが、分子をとらえる穴をかご状にすることで、より大きい「中分子」の解析も可能になった。

 さらに従来は難しかった水に溶けやすい試料の解析も可能になり、活用の幅が拡大。1試料あたりの解析時間も1か月から1日に短縮し、100種類超の構造を数か月で解析できたという。

中分子の化合物を使った「中分子薬」は、既存薬で治療が難しい病気にも効果のある次世代薬として研究が進む。藤田氏は「(自然界には)薬の元になる無数の宝がある。通常は検知さえ難しい物質を解析し、創薬につなげたい」と話す。

 藤田氏は、分子がひとりで組み上がる「自己組織化」という現象を利用し、様々な形状の物質を作り出す研究を進めてきた。結晶スポンジ法も、この研究の応用で開発され、藤田氏は一連の成果でノーベル化学賞の有力候補にも名が挙がる。

 河野正規・東京科学大教授(結晶化学)の話「解析例はまだ少ないが、今後様々な中分子に適用できれば、創薬の効率化などに貢献すると期待できる」