医療ニュース 2025.02.14

鉛製給水管なお203万件…20年前に全廃目標、水道管から溶け出し腹痛や神経のまひの恐れ

 家庭などに水を供給する給水管のうち、健康被害を及ぼす恐れのある「鉛管」(鉛製給水管)について、国が2004年に早期全廃の目標を掲げたにもかかわらず、23年3月時点で約203万件(上水道の契約数ベース)残っていることが日本水道協会(東京)の調査でわかった。専門家は、国や、自治体など水道事業者が住民に交換の必要性などを強く周知すべきだと指摘している。

 鉛を過剰摂取すると腹痛や神経のまひなどの症状が出る。鉛管はさびにくく、国内では1980年代まで広く使用されていたが、鉛が溶け出す恐れがあり、国は2004年に策定した「水道ビジョン」で「早期ゼロ」を打ち出した。

 同協会は05年度から全国に残っている鉛管を集計しており、06年3月時点は約508万件だった。直近の23年3月時点は約203万件で、全契約数(約5933万件)の3・43%。都道府県別で最も割合が高かったのは香川県で、約12万件と県全体の27・75%を占めた。

 浄水場からつながる給水管のうち、幹線部分の鉛管は各自治体が計画的に取り換えているが、家庭などに枝分かれする部分は大半が住宅敷地に埋設され、住民らが自己負担で交換する必要がある。枝分かれ部分は設置記録が残っていないケースも多く、水道事業者の2割弱は残った鉛管の有無も把握できていないという。

 水道事業に詳しい北海道大の松井佳彦・名誉教授(環境リスク工学)は「国が改めて交換の必要性を強く周知し、手引を更新して事業者に配布して機運の醸成を図るべきだ」と話す。

 水道管から溶け出した鉛による健康被害も出ている。山口県の30歳代男性は、山口市のアパートに住んでいた17年末、吐き気や下血が続いて入院。同市上下水道局が調べると、台所などの水から基準値の40倍を超える鉛が出た。

 男性は両手のしびれや 倦怠けんたい 感などに悩まされ、アパートの大家を相手取り、損害賠償を求めて提訴。山口地裁は22年10月の判決で「症状は水道管から溶出した鉛に起因するものと合理的に推認される」と認定し、大家側に約700万円の支払いを命じた。男性は車いす生活を余儀なくされており、取材に「日本の水道水は安全だと信じていた。『まさか』と思った」と明かした。