医療ニュース 2025.01.17

東京都、都内の全民間病院に総額300億円超の財政支援へ…医療提供体制の安定確保へ

 東京都は新年度、都内の全民間病院を対象に総額300億円超の財政支援を行う方針を固めた。事業費を新年度予算案に計上する。コロナ禍後の病院経営は物価高や人件費の上昇、患者数減少により厳しさを増している。財政支援は医療提供体制の安定確保を図る狙いがある。

 都関係者によると、都内に約600ある全ての民間病院に入院患者1人あたり1日580円を給付する。年間総額は約160億円を見込む。さらに、高齢の入院患者を受け入れるための病床確保料として約90億円、少子化で減少している小児科や産科、救急医療の体制確保支援として約60億円を計上する。1病院あたりの給付額は最大で2億円に達するとみられる。いずれの支援も1~3年間の時限措置とする。

 病院経営は年々、悪化の一途をたどっている。物価高で光熱費や食材費がかさみ、人手不足で職員の人件費が上昇。一方、コロナ禍の収束後も院内感染を恐れた高齢者の「受診控え」が続いて患者数の回復が遅れており、収益が減少している。

 都によると、東京は最低賃金が全国で最も高いなど、全国と比較して人件費や物価の上昇の影響を大きく受けている。都病院協会が昨年1~2月に実施したアンケートでは、回答した都内128病院のうち、2023年度上半期(4~9月)に赤字だった病院は49・2%に上り、前年同期より17・2ポイント上昇。老朽化に伴う建て替えを断念し、診療休止を決めた病院もある。

 都内では全病院のうち、民間病院が9割以上を占める。都は、安定的な医療体制を支えるには、民間病院への早急な財政支援が不可欠と判断した。